前回までの記事はこちら。
Vol.1:『働かないアリに意義がある』から読み解く、真のダイバーシティとは?
Vol.2:”働かない働きアリ”こそ、ダイバーシティの本質である
前回は、アリのコロニーには「エサに反応する」「外敵に反応する」など反応特性の異なるアリがいて、そんな多様性があることで生き残りに有利になる、というところまで話しましたね。しかも、遺伝子レベルでこの分布がデザインされているという神秘にも驚きました!
そうだね。「ダイバーシティが大事」ということを一段深いところで理解できるよね。ちなみにその分布の仕方だけど、いわゆる2:6:2の分布におおよそなることが分かっている。
ほほう、そうなんですね。ということはよく働くアリが2割、平均的なアリが6割、働かないアリが2割に分かれるってことですね。
そう、組織のあるあるとしてよく出てくる話でもあるね。ではここで質問! トップ2割のアリだけを選んで新しくコロニーを作ったら、どうなると思う?
え? やっぱり働かないアリがいなくなって、めちゃくちゃ仕事がはかどるんじゃないですか? 生産性の高いアリしかいないチームが出来上がると思いま・・
はいブブー!
えええ!? 食い気味に不正解でしたね。
正解はそのトップ集団の中で、また2:6:2の分布に分かれる、でした。
そんな・・てことは、トップだったはずのアリのうち2割は落ちこぼれに変わるってことですか? にわかには信じがたい話です。
そう、意外な結果だよね。人間の世界でも同じようなことは観察できるよね。例えばプロ野球で言うと、巨人には各高校や実業団のトップの選手ばかりが集まってくる。だから本来は全員が高いパフォーマンスを維持するはずなんだけど、そうはならない。
確かにー! 最初注目されてたのに、だんだんフェードアウトしていく選手っていますよね。
アリについて言うと、みんな一斉に100%で働いた場合、最大瞬間風速としての仕事量は高くなるんだけど、その代わり一斉にエネルギー切れを迎えることになるよね。そんなタイミングで外敵が来たら、一発でコロニーが壊滅という事態になりかねないでしょ?
そう言われてみると、そうかもしれませんね。
これが2:6:2の分布になっていると、最初100%で働いていたアリが疲れると、他のアリがそれを補うように働き始めるということが確認されているんだよね。その結果として、持続的にパフォーマンスを保つことができるんだね。
なるほど! 2:6:2の分布になっている方が、一見するとパフォーマンス低そうだけど、実は持続可能性が高くて長く生き残れるってことですね。
その通り。どんな括り出し方をしても2:6:2の分布に戻ってしまう、つまりダイバーシティが維持されるということは、何かしら生物の生存戦略として意義があるはずと考えるのが自然だよね。
そうか・・例の「働かないおじさん」の話、何となく分かってきました!
お! いいね、聞かせて聞かせて。
働かないおじさんたちが全員辞めても、組織は良くならないという話でしたよね。それは結局、残った人たちの中で2割の働かないおじさんが生まれてくるからですね。そういう自然の摂理だと思った方がいいのかもしれませんね。
自然の摂理ね、なるほど(笑)
じゃあそういうおじさんは、生物学的には何のためにいると思う?
生物学的に、ですか。おそらく平常時には出番がないと思います。ということは、「謝って場を収めるのが得意」みたいな非常事態にはじめて発揮される特性があるかもしれないってことですよね。
おお、なかなかの毒舌! だけど、確かにそういう考え方もできるね。
はっ! ついつい毒が出てしまいました・・
まぁいずれにしても「働かないおじさん」の謎は解けたかな。ダイバーシティのない組織は一時的には栄えるけど、急な環境変化や競合の出現で一気に吹っ飛ぶリスクをはらんでるってことだね。
今回はここまで! 次回はいよいよ最終回。気になる続きは、次回「ゆーじの本棚」でお会いしましょう。