前回のブログでは、CHO(Chief Happiness Officer)の役割や、国内外での普及状況などをご紹介しました。
社員の幸せを一番に考え、社員の幸福度向上に努めるのが「幸せ担当役員」CHOの仕事となります。
では、そもそもなぜこのような役割が企業において必要なのでしょうか?
「会社は仕事をするために来るところ。社員が幸せかどうかまで会社が面倒見る必要あるんだっけ?」
そう思われる方もいらっしゃると思います。
しかし実は、会社が社員の幸せに注目する合理的な理由があるのです。
それは、社員が幸せだとビジネスの成果が上がる、簡単に言えば会社が儲かる、という点にあります。
これは私の単なる希望的観測ではありません。
「ポジティブ心理学」という学問分野における研究の結果からわかってきたことなのです。
具体的には、次のようなことがわかっています。
幸せな社員はそうでない社員に比べて、生産性で31%、売上で37%、創造性は3倍以上も高い。
この結果、なかなか簡単に出せるものではないですよね。他にも、幸せな社員は顧客からの満足度が高い、協力的に仕事に取り組む傾向が高い、離職率が低いなど、様々なことがわかっています。
このようなデータからもわかるように、社員が幸せなだけで、ビジネスに好影響がもたらされるのです。
ここであらためて、「ポジティブ心理学」についてご紹介します。
ポジティブ心理学は、1998年、当時米国心理学会会長だったマーティン・セリグマン教授らによって提唱された心理学の新しい分野です。従来の心理学では、精神疾患などに着目し、それを治す(マイナスをゼロにする)ことを目指しているのに対し、ポジティブ心理学では、人間のポジティブな側面に着目し、「より幸せで充実した人生を送るためにはどうすれば良いか?」(ゼロをプラスにする)を研究しています。
そこで研究されてきたことによると、幸福な人はそうでない人と比べて、先ほどご紹介した仕事でのパフォーマンスだけでなく、健康、寿命、人間関係、ストレス耐性など様々な分野において、良い結果となるということがわかっているのです。
実は、人間の幸福度は何で決まるかというと、驚くことに、50%は「先天的要因」(遺伝)で決まってしまっているとのことです。幸福になる遺伝子を持っていれば幸せ、ということなので、こればかりはどうしようもないですよね。
残り50%に目を向けると、収入、学歴、生活環境などの「環境要因」はたったの10%とのことです。実は、40%がものの見方や考え方、意図的な行動などの「自発的要因」による、ということがわかっています。
ポジティブ心理学では、この「自発的要因」にどのように働きかけていくと幸福度を高めることができるか、について研究がされています。そこでわかってきた結果も、幸せな職場をつくるCHOにとって参考になることでしょう。
「幸せな社員は仕事のパフォーマンスが高い」ーこれは直感的にも同意できそうですが、それだけでなく、ポジティブ心理学で研究されてきた客観的なデータに基づいても言えることなのです。したがって、企業にとって幸せな社員を増やしていくことは、マジメなビジネス上のテーマなのです。
それでは、働く私たちは仕事で幸せなのでしょうか・・・?
実は、日本にはたった6%しか「熱意あふれる社員」がいない、ということがわかっています。(厳密には「仕事で幸せかどうか」という調査ではないですが、近しい概念として「Engaged:熱意があるかどうか」の調査結果をご紹介しています。)
こちらは2017年の調査ですが、2013年の調査から1ポイント低下しています。
熱意ある社員の割合は、139カ国中132位。「Actively Disengaged」=周囲に不満を撒き散らしているような人は全体の23%と、4名に1名弱もいる、というように、悲しい結果となっているのです。
社員の幸福度はビジネスの成果に結びつくものなので、これはちょっと由々しき事態と言えるのではないでしょうか。
CHOを中心に、日本においても幸せな職場を少しでも増やしていきたいところです。
次回は、CHOがいる幸せな会社を特集します。
社員が幸せに働く会社では、どんな取り組みを行なっているのか?
CHOはどんな役割を担っているのか?
具体的な事例とともにご紹介する予定です。
どうぞお楽しみに!