本日は2020年6月25日に行われた『経営者勉強会 落語に学ぶレジリエンス』の様子をお伝え致します。
過去数回実施して参りました経営者勉強会ですが、今回新型コロナウイルス感染拡大防止のため、初のオンラインでの開催となりました。
多くの企業経営者の方が、先が見えない不確実性が高い状況で日々リーダーシップを発揮されています。このような環境下において、何か楽しみながら教訓を得られるものはないかという視点で、落語家の桂やまと師匠をゲストにお呼びし、今回の勉強会を実施致しました。
今回やまと師匠にお話いただいた二席の簡単な解説と、江戸時代から伝わる落語、そして師匠から学んだことをご紹介したいと思います。
桂やまと師匠は江戸っ子らしい闊達な語り口と生き生きした人物描写が特徴的な若手の真打です。
全国の落語会、寄席出演の他、文部科学省にてダイバーシティに関するご講演をされたり、小学生向けの落語教室にも積極的に取り組まれたりと幅広く活動されています。
※桂やまと師匠についての詳細はこちらのWebサイトをご覧ください。
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一席目『時そば』
一席目は、落語界で広く親しまれている『時そば』を演じて頂きました。
屋台に蕎麦を食べにきてお勘定をごまかした人に感心した男が、その様子を真似しようと蕎麦を食べにいき、そのお蕎麦屋さんで起きたストーリーを楽しむ滑稽話です。
通りすがりの二八蕎麦屋で起きた出来事をきっかけに、非常にテンポよくお話は進んでいきます。
筆者の私も小学生の時に『時そば』を聴いたことがありましたが、噺家さんによって語り口が変わるのが落語の面白いところです。明瞭な情景描写に、たくさん笑わせて頂きました。
一席目のあとは落語界の人材育成についてお話がありました。
大変興味深いもので、まさに「守・破・離」を体現しているそうです。
階級社会である落語界では、「見習い」を経て「前座」になると、4~5年の間は365日休みなく、師匠の身の回りのお世話と寄席の下働きに従事します。
その次に「二ツ目」に昇進すると羽織の着用が許され、段々と自分のお客様を増やしていき、「真打」になると師匠と呼ばれ、弟子をとることが許されるのです。
一通りの稽古が終わった噺は、習った師匠から許されると自分自身でアレンジしてよく、だからこそ同じお話でも噺家さんによって印象が大きく異なるそうです。
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二席目『井戸の茶碗』
二席目は、参加者の皆さまにより落語に集中して頂くために、画面に参加者の方が映らない設定を行いました。一席目と違った形で「オンライン落語」を楽しんで頂けたのではないでしょうか。
『井戸の茶碗』は「正直清兵衛」と呼ばれる屑屋の「清兵衛」が、ある仏像を引き取り、その中から出てきた小判の受け取り先を巡って話が展開されます。
こちらも「正直さ」や「実直さ」を滑稽に面白おかしく表現している一方で、「正直の頭(こうべ)に神宿る」というお言葉が表現するように「正しく生きていれば必ず誰かが手を差し伸べて、変化のきっかけを一緒に作ってくれる」という落語のメッセージにつながって参ります。
落語には、最初から最後までうまくいくだけの噺はありません。
話の途中で必ず、登場人物が何かしらのトラブルや苦難に遭遇します。
「トラブルやハプニングが起きると、第三者が登場して状況を好転させてくれる」というのが落語の世界観です。
また、その過程では「与太郎」など、特徴的な登場人物(今でいう障がいがある人など)が除け者にされることはありません。すべての人が一つの社会に溶け込む中で、ハプニングを楽観的に扱うことで話が進行していきます。
これは江戸時代における「こういう世界だったら良いよね」という社会の理想像と「失敗することが当たり前」という当時の江戸の文化があったのではないかと、やまと師匠は仰っています。
失敗するからこそ、そこからどうするかが「人間力」であるんだという言葉は大変印象的でした。
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質疑応答
質疑応答では、皆様から示唆にとんだ質問を多数お寄せ頂きました。いただいた回答は非常に実践的なもので、参加者の皆さんも、スタッフも画面越しにうんうんとうなずき、メモを取っているのがとても印象的でした。
Q. 生命保険の会社におりまして、お客様にご自身の人生やその裏にあるリスクを想像してもらって、価値を見出して保証を提供させていただいています。なかなかお客様に想像していただけるようなお話をすることは難しいのですが、師匠のように相手にリアルに想像させるようなスキルはどのように磨かれてきたのですか?
A. お客様に想像していただくための絶対的なポイントをお伝えします。スピーチされることが多い皆さまには活用いただけるのではないかと思います。
「自分が想像できていないことは、絶対に人に伝わらない」。
目の前にその人がいることを意識し、伝えたいことを想像してから話すのが大きなポイントです。
PTA会長になって4年目ですが、スピーチする時に原稿を作ったことは一度もありません。毎回、子供達や保護者の顔を見て、思ったことをお話ししています。
それでなぜ伝わるかと言うと、借りてきた言葉や想像できないことを言わないからです。
言葉がつたなくても、少なくても、その人が心の底から思っていることは伝わります。
本当の思いをそのまま目の前の人に届ける、それが噺家として、人として気を付けていることです。
Q. 誰かを助ける第三者について、助ける立場になると自分が一番助かっていると思うのですが、落語の世界では第三者の立ち位置はどうなのでしょうか?
A. おっしゃる通りだと思います。実際に落語家として後輩を教えることが多い中、教えるという作業がその人のためにもなるし、自分のためにもなっています。(やまと師匠)
落語のお話しの中でも、二席目の「井戸の茶碗」で両者の間にたって助けている清兵衛さんも、結果助けられているというストーリーになっていますね。(永井)
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最後に
今回の経営者勉強会は『落語に学ぶレジリエンス』と題して、桂やまと師匠にお越しいただきました。
落語の実演とお話から、落語に描かれた庶民の柔軟さ、笑いを交えつつたくましく生きていく「レジリエンス」、環境の大きな変化にも負けないために大切なことを学ぶことができました。
また、やまと師匠からは終演後「この企画でお話させていただくことで、ライブ実演の場しかなかった落語にオンライン配信という新たな形を見いだせた。コロナ渦中でも落語を届けていける希望を得た」というご感想をいただきました。
これも今回のテーマ「レジリエンス」の体現ではないかと思います。
(本企画から生まれた師匠の新しい取り組み、オンライン独演会についてはこちらをご覧ください)
また、下記イベントもぜひご覧ください。
やまと師匠の生の落語をお楽しみ頂ける機会です。
【定員変更、完全予約制】
10/27(火) 開場18:30 開演19:00
令和2年度(第75回)文化庁芸術祭参加公演
『第68回 桂やまと独演会~やまとの十八番にしたい二席~』
会場:日暮里サニーホール コンサートサロン
東京都荒川区東日暮里5-50-5 ホテルラングウッド4階
電話:03-3807-3211
定員:会場都合(新型コロナ感染対策)により25名
※9/
木戸:前売のみ2300円
※完全予約制。当日券はございません。
番組:桂やまと「阿武松」「宮戸川」ほか、ゲストあり
ご予約・お問い合わせは こちら(予約フォーム)
または
桂やまと落語事務所
電話/Fax:03-6755-8815
Eメール:info@yamato3rd.com
改めましてこの度は、
オンライン配信という落語界にとっても新たな試みにご協力いただきました、桂やまと師匠、
そしてご参加頂いた皆さま、誠にありがとうございました。
弊社では引き続き、経営者の方々の学びにつながるイベントを実施して参ります。
最新のイベント情報は、弊社Facebookページをご覧ください。
https://www.facebook.com/ideal.leaders.2015/