”進化し続ける組織”をつくるカギは、多様性にアリ|ゆーじの本棚Vol.4

”進化し続ける組織”をつくるカギは、多様性にアリ|ゆーじの本棚Vol.4

「働かないアリに意義がある」から読み解く、真のダイバーシティを考える

前回までの記事はこちら。

Vol.1:『働かないアリに意義がある』から読み解く、真のダイバーシティとは?

Vol.2:”働かない働きアリ”こそ、ダイバーシティの本質である

Vol.3:”2:6:2の法則”は変化の時代の秀逸な生存戦略だった!

 

 

前回は”2:6:2の法則”が、実は生物として持続性の高い生存戦略になっているという話をしましたね。

 

 

 

そして、もりりんが働かないおじさん問題に物申す、という展開だったね。

 

 

 

いやいやいや! むしろ働かないおじさんにも意味がある、というポジティブなメッセージのつもりですよ?

 

 

 

ほほう。ところで、生物としての生存戦略の話をしてきたけど、これと関係する重要なキーワードが「進化」というやつだね。生き残った種だけが進化の結果として後世に続いていくわけだからね。

 

 

「ほほう」って。いきなり本題始まりましたね。

 

 

 

もりりんは進化の過程で生き残るための条件って、何だと思う?

 

 

 

そうですね、やっぱり素早く動けるとか、筋力が強いとか、知能が発達しているとか、そういう種が生き残るんじゃないですか?

 

 

 

なるほどね。ありがちな間違いだね。

 

 

 

一瞬でばっさり斬られましたね・・では、どんな条件なんですか?

 

 

 

進化と言えばダーウィンを外せないけど、彼はこう言ってるんだ。「最も強い者が生き残るのではない。最も賢い者が残るのでもない。唯一生き残るのは変化できる者である」とね。

 

 

おお、なんかいきなり深いですね・・。「最も強い」と言っても、その時の環境によって強さの基準が変わっていくし、強さが何の役にも立たないこともあるってことですかね? だから、とにかく変化して環境に適応したものだけが生き残ると。

 

 

 

その通り。ちなみに、ダーウィンは”進化(evolution)”という言葉を意識的に使わなかったんだって。

 

 

本当ですか? むしろ進化という言葉を世に広めた人ぐらいにと思ってました。

 

 

 

普通はそういうイメージだよね。ダーウィンは『種の起源』の中では” Descent with modification”という表現をしているね。これは「変化を伴う系統」という意味で、彼の描いた樹形図にとても端的にその考えが表れているんだ。

(出所:チャールズ・ダーウィン『種の起源』)

(出所:チャールズ・ダーウィン『種の起源』)

 

 

「変化を伴う系統」ですか。確かに、だいぶ進化のイメージが変わりますね。これを見ると、本当に樹のようにどんどん枝分かれしていって、その中で適応できたものだけが生き残るってことですね。

 

 

 

日本語の「進む」という語感もその一因だと思うけど、僕たちは進化と言うと一直線に前進していくようなイメージを持つよね。でも、本質は「変化」であって、様々な変化を試した中から結果的に適応できたものが系統として残るだけということだね。そう考えると「進化している」とか「退化している」とかっていうのは、後の時代から見た結果論でしかない、とも言えるよね。

 

 

確かにそうですね。でも逆に言うと、系統として僕らに見えているのは現在まで生き残った種だけで、その裏で無数に枝分かれした種が自然淘汰されているってことですね。

 

 

 

そうそう。だから、進化のためにはいろいろな枝分かれしたパターンがあること、つまり多様性が大事ということになるんだ。

 

 

 

なるほど! そこで多様性の話に戻ってくるんですね。やっとつながりました。そうそう、多様性と言えば思い出すのが、『ダイアログ・イン・ザ・ダーク』に参加した時ですね。真っ暗闇の会場の中を視覚障害者の方のガイドで歩くんですけど、文字通り手探りでめちゃくちゃ心細かったんです。でも、ガイドの方がさっと来て助け舟を出してくれて、心の底から安心したのをよく覚えています。

 

*『ダイアログ・イン・ザ・ダーク』:ドイツで生まれた体験型のソーシャル・エンターテインメント。真っ暗闇の会場の中を声や音を頼りに歩き、匂いや手触りなどを味わう体験をする。会場内では視覚障害者の方がアテンドしてくれる。

 

おおー。あれはなかなか貴重な体験だよね。僕たちは普段目が見えないと不便だろうなと思っているけど、暗闇の中だとそれが完全に逆転するからね。ダイバーシティ=弱者を守ること、とだけ考えるのは安易かもしれないね。そもそも人を弱者と決めつけるのは、とても傲慢なことじゃないかって思うよね。

 

 

 

そうなんですよ。今ウチの子が8ヶ月ですけど、完全に生活が子ども中心ですもん。子どもがちょっと泣けば大人が駆けつけるし、ちょっと笑ったら大人は大喜びだし。そうなると、赤ちゃんが最強とも言えるわけですよね。

 

 

本当だよね! 強者/弱者というのは全く固定的なものなんかではなく、時代や状況によって変わり得るものなんだよね。現在の価値基準でいわゆる「弱者」と断じて切り捨ててしまうことの危うさというのは、肝に命じないといけないよね。

 

 

確かに、その通りですね。

 

 

 

今すぐ成果を上げる組織をつくりたかったら、現在の価値基準で「強い」人だけを集めればいいけど、きっとそれは長持ちしない。10年、20年と長く栄え続ける企業や国をつくろうとしたら、多様性に富んだ人を集めることが何より重要ということだね。このことは、企業におけるイノベーションにもつながることだね。

 

 

おお、ここでイノベーションが出てくるんですか?

 

 

 

うん。イノベーションは全く新しいものを創造するのではなく、一見無関係な既存のものの「新結合」から生まれるというのは、シュンペーターが提唱した有名な理論だよね。ということは、「多様性の枝をなるべく広げておく」ことで、新結合が増え、イノベーションが起きやすくなると言えるよね。これこそが生物から学ぶ組織の進化の形なのかもしれない。

 

 

うーん、なるほど。一段深いレベルでダイバーシティという言葉の意味が腹落ちした気がします! ただ・・

 

 

 

ただ?

 

 

 

いや、進化の過程で環境に適応しきれず散っていく人もいるんだなぁと思って。可哀想っちゃかわいそうかなと。

 

 

 

いま、頭に浮かんでるの、完全に働かないおじさんたちでしょ(笑)

 

 

 

いやいやいや! ・・まぁ否定はしませんけどね。

 

 

 

やっぱり(笑) 確かに自然淘汰の世界って、厳しい側面もあるよね。弱肉強食の争いという見方もできるからね。実際、ダーウィンが『種の起源』を著した19世紀中頃は、当時の帝国主義を正当化する意味合いもあって、そう都合よく解釈されてしまったんだよね。

 

 

ということは、ダーウィンの真意はそこではないってことですか?

 

 

 

もちろん。『種の起源』にこんな一文があるんだ。「<生命の大樹>も世代を重ね、枯れ落ちた枝で地殻をみたし、分岐をつづけるうつくしい枝々で地表をおおっているのであると、私は信じるのである。」 つまり、生き残り栄えるものも、散って土として次の命を育むものも、それら全体が美しいという見方をしていたんだね。

 

 

おお、何だか壮大な話ですね。でもダーウィンの伝えたかったことも、少し分かるような気がします。おじさんたちも、これで浮かばれると思います。というか、最終回気づいたらダーウィン一色になってましたね・・

 

 

うん、そういうこともあるよね(笑)

 

 

 

全4回にわたってお送りした「『働かないアリに意義がある』から読み解く、真のダイバーシティを考える」楽しんでいただけましたか? まだまだ話し足りないテーマがいっぱいですが、他の書籍の紹介もしたいので、これぐらいで。

 

次回は、デキるビジネスリーダーなら押さえておきたい、古今東西の古典や行動経済学などの最新の領域から、一冊取り上げる予定です。それでは、また次回「ゆーじの本棚」でお会いしましょう!

 

*興味をお持ちになった方は、ぜひ参考書籍の方もお読みになってください。

・長谷川英祐『働かないアリに意義がある』『働くアリに幸せを 存続と滅びの組織論』

・チャールズ・ダーウィン『種の起源』

・中村桂子『生命誌とは何か』