Purpose Drivenな組織を作るためには、「組織から個人」というベクトルと、「個人から組織」というベクトルがある。
世界有数の一般消費財メーカーであるユニリーバはPurpose Drivenな企業としてよく知られている。2014年に、ユニリーバは自社のPurpose:「サステナビリティを暮らしの”あたりまえ”に」に触発され、そのPurposeを自社のすべてのブランドに伝達することを目的としたプログラムを開始した。同年、同社は「Personal Purpose(パーソナル・パーパス)」という別のプログラムを開始し、世界中の社員が自分の仕事に意味を見出すことをサポートした。
ユニリーバの例をみると、Purposeへの共鳴を起こすにはただ自社のPurposeを理解するだけではなく、自分自身の個人のPurposeも理解しなければならないことがわかる。今回のブログは、「組織から個人」、「個人から組織」の2つのベクトルを観点から見て、組織と個人のそれぞれのPurposeをどのように繋げていくのかを紹介する。
1.「組織から個人へ」
まずは「組織から個人へ」について見ていく。組織がPurposeを定義し、それを社員に伝えてPurposeを意識してもらうことが一般的である。このアプローチでは、社員は、自分の仕事に高い意味を与えるために、組織のPurposeを自分の視点に統合する必要がある。したがって、個人は自分の仕事を単純な作業以上のものとして捉え、より高い意義に大きく貢献するものとして理解することになる。社員のPurposeと組織のPurposeが繋がると、タスクそのものを超えて、より意義のある仕事に貢献する。このアプローチにおいては、組織のPurposeが果たす効果は、社員にPurpose意識を「提供」することである。
例えば、有名なNASAの清掃スタッフの逸話を見てみる。NASAのPurposeは、「宇宙探査、科学的発見、航空研究の未来を切り拓くために」である。NASAはこのPurposeを社内に浸透するために、社員たちに「現在の仕事はなぜ重要なのか?」と尋ねることを4回繰り返した結果、スタッフは「私は床掃除をしているのではなく、月に人を運ぶために働いています」と言うようになった。 ここ数十年のPurposeに関する伝統的な研究の多くは、Purposeが組織から個人へ流れていくという視点が多い。
2.「個人から組織へ」
もう一方で、Purposeは「個人から組織へ」流れていくという考え方がある。 この考え方では、企業はPurposeを持っていてもいなくても、社員一人ひとりは個人的なPurposeを明確にすれば、そのPurposeからどんな仕事でも意味を導き出すことができ、モチベーションが高め、個人の成長に重要な役割を果たす。個人的なPurposeは、変化の中にあっても時代に左右されない力を個人に与える。社員は、ただタスクをこなしたり、仕事をしたりするのではなく、「仕事で自分らしさが発揮できている」と感じることができる。
たとえば、ハーバード・ビジネス・レビューで発表された記事「パーパス・ドリブンの組織をつくる8つのステップ」の中で、企業が初めてPurposeを設定する時に、第1のステップは「触発された従業員の姿を想像する」ことで、「卓越した社員たちの原動力となっているPurposeを調べ、そして、それが社員全体に浸透した状態を想像しよう」と紹介されている。そして、企業が個人のPurposeを見つけるのにサポートし、個人のPurposeを実現するためのキャリアパスをデザインすれば、Purpose Drivenな組織をつくることができる。個人的なPurposeを仕事に結びつけることで、自分自身の努力をより深く理解し、さらに重要なことに、時間をかけて個人的なPurposeをより深く理解することで、「仕事での自分らしさ」を実現することができる。
3.結論
本ブログは組織のPurposeと個人のPurposeをつなぐ流れについて論じた。組織のPurposeと個人のPurposeをつなぐためには、組織と個人の両方がPurposeを繋げていく努力をする必要がある。社員は、職場で何を通じて価値提供をしているのか、何がモチベーションになるのかを常に探すべきである。一方で、企業は社員を単なる人的資本や報酬を支払う対象としてではなく、さまざまなアイデアや個性を持ち、無尽蔵の創造性を提供していく貴重な個人として捉えなければならない。
参考文献
1.https://www.unilever.co.jp/about/who-we-are/introduction-to-unilever/
2.Carton, A. M. (2018). “I’m not mopping the floors, I’m putting a man on the moon”: How NASA leaders enhanced the meaningfulness of work by changing the meaning of work. Administrative Science Quarterly, 63(2), 323–369.
3.ハーバード・ビジネス・レビュー(2019). 2019年3月号.パーパス・ドリブンの組織をつくる8つのステップ.https://www.dhbr.net/articles/-/5730