ウェルビーイング経営 ー 第2回:ウェルビーイング経営を促進するCHOとは?

ウェルビーイング経営 ー 第3回
ウェルビーイング経営を促進するCHOとは?

CHOとは?

CHOとはChief Happiness Officerの略であり、従業員の幸福感醸成といった視点で組織を成功に導く役職を指す。要するに、CHOの役割は従業員の幸福度に着目しながらエンゲージメントを高め、モチベーションを高め、パフォーマンスを向上させ、企業成長に貢献することである。採用、オンボーディング、キャリアプランニング、評価、育成など、一連の従業員の体験をより善いものにしようというアプローチは、会社にとってもメリットがある。

CHOという肩書きが初めて使われたのは、1999年フランスのファッションブランド、Kiabiとされている。その後グーグルのチャディー・メン・タン氏が同じ役割となってから、シリコンバレー企業にも広がっていき、認知度が上がることとなった。CHOは日々、従業員の心身の健康状態を診断し、幸せに働いてもらうための条件を整えるために、様々な取り組みを行っている。例えば、満足度を測るアンケートを配布したり、コミュニケーションスキルやマインドフルネス瞑想などのワークショップを開催したり、オフィスの雰囲気づくりに意識を向けたりしている。

アメリカ以外でも、フランスでは150人のCHOがいるとされるなど、近年、欧米を中心に世界レベルでCHOという存在の重要性とその数は加速度的に増してきている。また、弊社のCHO丹羽真理は、日本でCHO Clubの事務局を担っており、各社CHOや趣旨に賛同したメンバーが40名以上集まっている。

ポジティブ心理学を研究するショーン・エイカーの著書『The Happiness Advantage』において、「結果が良いから幸福になるのではなく、幸福になれば結果が良くなる」という因果関係が示されたことからも、幸福度がビジネスにおいて重要であることがわかる。また、ハーバード・ビジネス・レビュー2012年5月号「幸福の戦略」では、アメリカ・イリノイ大学名誉教授のエド・ディーナー博士により、「幸せな社員はそうでない人に対して創造性が3倍高い。それだけでなく生産性も3割高く、3割高い売上げをあげる。更には欠勤率や離職率も低い」という研究結果が報告されている。

今回はそんなCHOを実際に社内に設け、従業員と会社を幸福にしている事例を紹介する。

1.グーグル

冒頭でも挙げた通り、グーグルの取り組みによってCHOという存在は世間に認知されるようになった。チャディー・メン・タン氏(以下、タン氏)はグーグルのCHOであり、グーグルでは「ジョリー・グッド・フェロー」と呼ばれている。彼の職務経歴書によると、彼の目標は「心を啓発し、心を開き、世界平和を創造する」ことだという。グーグルが誕生して間もなく入社したタン氏は、エンジニアリング部門で8年間を過ごした後、2000年代半ばに同社の「人材開発チーム」に異動した。タン氏は、マチュー・リカールという仏教僧の65歳の脳に関する研究に出会ったことがきっかけで、グーグルに幸福度向上の考えを取り入れようと考えた。リカールは、分子遺伝学の博士号を取得した後、科学に背を向けて1972年に仏教の僧侶となり、瞑想によって幸福を探求することを目的としていた。2010年のTEDトークでタン氏は、左前頭前野の脳活動データをもとに、リカールのことを「世界で最も幸せな男である」と説明している。タン氏は脳活動と幸福度の研究を気に入り、社内へも取り入れようとした。

彼の著書『Search Inside Yourself』は彼のマインドフルネストレーニングのコース「サーチ・インサイド・ユアセルフ(SIY)」を紹介したものだが、彼は科学の力も用いて瞑想をメソッド化し、会社にマインドフルネスプログラムとして導入したのだ。このプログラムはマインドフルネス、ストレス、レジリエンス、共感力、同情心、リーダーシップにポジティブなインパクトを与えているとされている。2020年のレポートによると、このプログラムは今世界中に展開され、20カ国、6142人の参加者に提供され、日本の参加者も増えている。

2.ザッポス

ザッポスの元CEOであるトニー・シェイは、2010年に『Delivering Happiness』という本を発表した。企業文化の中で幸福度を高めるための戦略が書かれたこの本は、ニューヨーク・タイムズ紙のベストセラーとなり、この本の出版も、CHOの概念が広がることにつながった。また、世界中の企業に幸福を届けることを目的とした同名のコンサルティング会社が誕生した。ザッポスは自社のミッションに「社員と顧客に幸せを届ける」を掲げ、幸福経営で有名な企業である。現在Delivering Happinessというコンサルティング会社のCEO兼CHOであるジェン・リム氏は、元ザッポスのコンサルタントであった。オンライン小売業として靴を販売していたザッポスを、Fotune100の6位にまで上げた企業文化づくりに大きく貢献した人である。彼女は現在「幸福度」という見えないものを測る指標をつくり、不幸せと感じることの要因を特定、改善していくというコンサルティングを行い、多くの企業の幸福経営に携わっている。

3.アーティキュレートマーケティング

アーティキュレートマーケティングは従業員が完全リモートワークで働くコンサルティング企業で、CHOを中心に、幸福経営のための様々な施策をとっている。リモートだからこそできる、就業開始前の時間を利用したオンライン朝食の時間や、CHOによる全ての社員との1on1ミーティングの実施など、積極的な取り組みを行う。この会社は立ち上げからまもない頃に、CEOであるマシュー氏が「従業員の幸福が会社の成長に欠かせないものだ」と気づき、リズ・フィールダー氏をCHOに任命し、基礎となる企業文化づくりを始めた。結果、16人という少人数のスタートアップながら離職率を大幅に低下させ、求人広告に550を超える多くの応募を得るようになった。

最後に

先述したとおり、従業員の幸福度をあげることは、従業員の離職率の低下、生産性の向上、企業文化を強くするといったメリットがあり、組織の繁栄に非常に重要な要素となっている。

別のある研究では、コメディーの映像を見た労働者の生産性を測定したところ、映像を見た後に生産性が向上したという結果が出ている。また、死別や家族の病気などの重要なイベントが従業員の生産性を低下させるという研究結果も存在する。

企業がCHOを導入する真の目的は、単に地球上で最も幸せな会社になろうということではなく、組織の生産性を高めて成長につなげていくことなのである。

CHOは新しい概念であり、個々の会社にフィットする具体的な施策が簡単に見つかるとは限らないかもしれないが、個人と組織の成長のために導入を検討するに値する役職といえる。

この記事が、CHOの意義についての認知を広げ、理解を促進することにつながれば幸いである。

 

今回はウェルビーイング経営を促進するCHO(Chief Happiness Officer)とその取組事例についてまとめた。次回はPurposeとイノベーションについてを紹介する。

参考文献:

参考文献:

1.Shawn Achor. (2010). The Happiness Advantage: How a Positive Brain Fuels Success in Work and Life (English Edition)

https://www.amazon.co.jp/dp/B003F3PMYI/ref=dp-kindle-redirect?_encoding=UTF8&btkr=1

2.ハーバード・ビジネス・レビュー. (2012年5月号). 『特集:幸福の戦略』https://www.dhbr.net/ud/backnumber/50c5546b1e2ffa7eef000003

3.ALL-IN. (2017).  「Googleには毎日思いやりがある」社員を幸せにして業績を上げる、チーフ・ハピネス・オフィサー(CHO)とは? https://web.all-in.xyz/upgrade/cho/(accessed on 2021−5−11)

4.Chade-Meng Tan. (2012). Search Inside Yourself: Increase Productivity, Creativity and Happiness [ePub edition] (English Edition)

https://www.amazon.co.jp/dp/B006FLVXEA/ref=dp-kindle-redirect?_encoding=UTF8&btkr=1

5.https://siyli.org/approach/results (accessed on 2021−5−11)

6.Tony Hsieh. (2010). Delivering Happiness: A Path to Profits, Passion, and Purpose (English Edition). https://www.amazon.co.jp/-/en/Tony-Hsieh-ebook/dp/B00FOT936Y/ref=sr_1_1?dchild=1&keywords=delivering+happiness&qid=1620717944&s=digital-text&sr=1-1

7.Articulate. (2018). How we work: get to know our sugar-free Chief Happiness Officer. https://www.articulatemarketing.com/blog/how-we-work/chief-happiness-officer(accessed on 2021−5−11)

8.Keiko Iwasaki. (2020). Happiness Makes Workers More Productive: Evidence from Large-Scaled Experiments.                                             https://confit-sfs.atlas.jp/customer/jea2020f/web/outline/O3-5-1.pdf

9.M.s. Stroebe. H.A.W. Schut. Wolfgang Stroebe. (2008). Health outcomes of bereavement. https://www.researchgate.net/publication/5778878_Health_outcomes_of_bereavement

 

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