前回の記事では、Purposeについてのトレンドを紹介した。今回の記事では、その中で論じた「Purpose×インベストメント」を詳しく紹介する。
1.ESG投資とは?
近年投資家の間ではESG評価を元にした投資が重要視されはじめている。従来の財務指標だけからではわからない、企業の持続性や長期的な収益性を測る上でESG評価が欠かせない。
ESG投資は2006年に当時の国際連合事務総長だったコフィー・アナン氏が金融業界に対して提唱したイニシアティブ「PRI(責任投資原則)」の中で使われた言葉であり、企業の長期的な成長を測るための指標で、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字を組み合わせた言葉である。企業の長期的な成長のためには、この3つの観点から長期的な事業機会や事業リスクを把握する必要があるという考え方が、現在、世界的に広まりつつある。反対に、ESGの対応が遅れている企業は大きなリスクを抱えており、長期的な成長が期待できないと考えられている。
ESGとは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の3つの観点のことで、具体的には環境問題への取り組み、地域社会への貢献、法令遵守や従業員への待遇改善などが挙げられる。2030年にはアメリカの労働人口の75%を占めるとされるミレニアル世代はESGやSDGsに対して敏感であり、普段の消費や今後の投資においても、社会的存在意義を示せる企業を選ぶ傾向が強いとされ、これらの世代を看過することはできない。
2.ESG投資への注目が高まる中、Purpose Drivenな企業は投資家から注目を集めている
このような背景の中、Purpose Drivenな企業はESGへの取り組みや意識が高い企業が多く、投資家からも注目を集めている。データを参照すると、投資家は2019年、前年比で2倍の投資をヨーロッパのPurpose Drivenな企業へ行っていることがわかる。特にSDGsの17のターゲットのうち、気候変動とクリーンエネルギー対策に取り組んでいる企業では、最高レベルの設備投資がされていることから、投資をすることで地球環境への貢献となっていると言えるだろう。
また、真にPurpose Drivenな企業は、SDGsに沿った活動に取り組んでいることを裏づけられなかった企業よりも、多くの投資家会議を行ってきたとされている。
そして、国際公認会計士協会、ブラック・サン、IIRCの共同出版した「Purpose beyond profit」の調査(2018)によると、投資家に対して「過去1年で非財務情報を投資の決定において活用したか?」という質問に対し、2016年時点で65%以上の回答者が「参考にした」、または、「たまに参考にした」と回答している。ESG評価は主に投資リスクを理解するために見られることはもちろん、ESGパフォーマンスが経営の品質を表すものであるとも考えられている。
3.具体例
具体例をあげよう。
「1つ眼鏡を購入すると眼鏡を必要としている人々に眼鏡を1つ寄付する」ことを行っているWarby Parker社は、2020年8月時点で30億ドルの時価総額となり合計で5億ドル以上の資金調達に成功している。彼らは「すべての人に見る権利がある」という信条を社会貢献をしながら体現しているとも言える。このようにESG評価をされる組織には明確なPurpose意識があり、その実践がなされている。
また、2016年に設立されたリチウムイオン電池を作るスウェーデンのノースボルト社は10億ドルの資金調達に成功している。この成功の背景には、ノースボルト社は電気自動車を生産する上で欠かせない環境に優しいバッテリーを作り、再生可能エネルギーへの移行を可能にするという、社会にとっての存在意義を示せたことにあると言える。
なお、従業員満足度(エンゲージメント)が高い企業ではESGパフォーマンスが高いというデータも存在する。Purpose Drivenな組織づくりにおいては従業員が組織と同じ価値観を持つことが重要であり、各自が責任を持って行動することによって生産性が高まるとともに、短期での離職も防ぐことにつながる。Purpose Drivenな企業が投資先として期待できる理由の一つにこのような企業としての持続可能な性質が考えられるだろう。
4.最後に
「ESG投資は21世紀型の経済モデル。ハードローからソフトローの時代へ移行し、プラネタリー・バウンダリー(地球の限界)を前提とした循環型経済になってきている。これまで規制の中で活動してきた企業が能動的にどう対応し活動できるか、長期戦略になる」とりそなアセットマネジメントの執行役員で責任投資部長の松原稔氏は、企業にとってパラダイムシフトが起きていると認識している。
近頃はCOVID-19の影響もあり、初期段階の企業への投資が減少していることやリスクを徹底的に避ける傾向が見られる。この結果、ESG評価の高いPurpose Drivenな企業への投資は投資家にとって、安全かつリターンを得るだけでなく社会貢献につながることからも好まれている。企業のPurposeを見るのは長期投資家(ESG投資家)であり、長期の投資家になるほど見える資産から見えない価値を見ようとする傾向がある。
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