アイディール・リーダーズでは、毎月1回「ナレッジ共有会」と題して、全社員で集まり、仕事につながる学びの時間を設けています。
2023年11月22日には、ゲストとして番匠武蔵さんに来ていただき、エグゼクティブコーチングの勉強会をしました。その内容をレポートします。
※エグゼクティブコーチングとは?
ゲスト:番匠武蔵さん
2004年、京都大学大学院 情報学研究科 修士課程を修了。新卒で株式会社野村総合研究所へ入社した後、2007年にエグゼクティブ・コーチング・ファームである、株主会社コーチ・エィへ入社。経営者向けのエグゼクティブ・コーチングを行う。2020年1月に「もっと多くの人がコミュニケーション能力を向上できる世界をつくりたい」との思いから株式会社エクサウィーザーズに参画し1on1の動画解析プロダクトを企画開発。2023年に株式会社ラテイルを設立。
学術領域では2014年より神戸大学大学院にてMBA非常勤講師、2017年から慶應義塾大学SFC研究所にて上席所員を務めた。現在は立教大学経営学博士後期課程に在籍し管理職に関する研究に従事している。
エグゼクティブ・コーチングの成果 11項目
番匠さん)
2018年に出された有名な論文(Athanasopoulouand and Dopson, 2018)によると、エグゼクティブ・コーチングによる成果は11項目に分けられています。
カテゴリごとに分類すると、
①「コーチングを受ける人 個人の改善」
②「コーチングを受ける人と他者との関わり」
③「コーチングを受ける人と仕事」 例えば、仕事の成果や職場環境の改善などですね。
④「組織」 コーチングを受けた人のみではなく、所属する組織レベルの成果も入ってきています。
⑤「コーチ」 これは見落としがちですが、コーチする人自身のスキルも上がっていきます。
コーチングの歴史としてコーチングは1対1で行い、コーチングを受けた個人を支援するという意味合いが最初強かったのですが、企業で用いられるようになり、組織への波及効果についてもスコープに入るようになりました。2013年ごろコロンビア大学でのコーチングカンファレンスに参加した際に、発表内容からコーチングは組織への波及効果を生むということも着目され始めていると感じました。その時は、「確かにそんな効果もあるよね」程度で扱われていましたがさらに時間が経つとコーチングは組織を改善するために用いることができると明確に認識され研究結果からもそのような効果があると考えられています。
エグゼクティブ・コーチングの成果に影響を与える5要素
番匠さん)
先ほどと同じ論文には、成果に影響を与える5要素も掲載されていますので、紹介しますね。「コーチングの介入方法」「組織」「コーチングを受ける人」「コーチ」「ステークホルダーの関係」 の5つです。
アイディール)
この5つの要因が成果11項目に影響を与えているということですよね?
番匠さん)
はい。例えば一番簡単なのは、5要素の「コーチのスキル」ですね。
アイディール)
他にはマネジメント経験も影響があるのではないでしょうか?あとはコーチを受ける人のやる気ですか?
番匠さん)
はい、まさにその通りです。受ける人のやる気は5要素の「コーチングを受ける人」 に入りますね。
アイディール)
例えば回数とか期間とかはどうですか?
番匠さん)
それは5要素の「コーチングの介入方法」 に入りますね。
あとは、5要素のうち、「組織」 と「ステークホルダーの関係」 が少し似ているんですけど、「組織」 はコーチングを受ける組織がどんな組織かということですね。コーチングの重要性を経営者が認識して、サポートしてくれるような、共鳴するような組織なのかも大事ですね。
5要素の「ステークホルダーの関係」 コーチとコーチを受ける人以外にも、人事や上司など近くのステークホルダーにきちんと役割が与えられているかということや、成果が明確に共有されているかなど、コーチングのプロジェクトに対する環境も大きく関係しています。
このように5つの要素をカバーできていれば、11項目の成果が発揮される、ということですね。
アイディール)
そうなんですね!
成果に影響を与える5要素、全て高くないといけないんですか?
番匠さん)
もちろん全て高い方が良いですね。実務的な使い方としては、自分たちがコーチングする際に、成果に影響を与える5要素をチェックリスト的に活用することがいいと思います。
アイディール)
成果に影響を与える5要素の「ステークホルダー」 にはどういう人が含まれますか?
番匠さん)
コーチングプロジェクトに参加する人という意味で、人事・人事担当役員・経営役員、コーチを受ける人の周囲で働いている人ですね。
アイディール)
5要素の「コーチのスキル」 のポジティブさとは、ポジティブの方がネガティブよりも良いということですよね?
番匠さん)
そうですねポジティブである方が良いということになりますね。
ここでの「コーチのスキル」とは「ポジティブさ」のほかに、「積極的な傾聴と共感」「考えさせる質問」などが項目として挙げられています。
アイディール)
今教わったことを知らなかった訳ではなかったけれど、こんなふうに定義されているのを知れてとても良かったです。
僕もそう思います。番匠さんもおっしゃっていた様に、チェックリスト的に使おうかな。
この根拠をもとに、人事のサポートが大事なことも明確になったわけですね。
最後に
今回のブログでは、番匠武蔵さんからの勉強会で得たエグゼクティブ・コーチングによる11項目の成果と、これらに影響を与える5つの要素をご紹介させていただきました。私たちもこれらの学びを心に留め、コーチングを通じてより良い成果を追求してまいります。エグゼクティブ・コーチングは、リーダーや経営者に新たな視点をもたらすだけでなく、企業に波及しより多くのステークホルダーにも必ず良い影響を与えるでしょう。このブログが貴社の将来のために、エグゼクティブ・コーチングの恩恵を受ける第一歩となれば幸いです。
参考文献)
・Andromachi Athanasopoulou, Sue Dopson, A systematic review of executive coaching outcomes: Is it the journey or the destination that matters the most, The Leadership Quarterly,Volume 29, Issue 1,2018,Pages 70-88