人、組織、そして社会を大事にする「ウェルビーイング経営」とは?

人、組織、そして社会を大事にする「ウェルビーイング経営」とは?

1 ウェルビーイング経営とは

オックスフォード英語辞典では「ウェルビーイング」の定義を「the state of being comfortable, healthy, or happy. =快適であること、健康であること、幸せであることの状態」としている。日本ではウェルビーイングは「幸福感」、「快適」など様々な言葉に訳される場合があり、人が健全な状態であることがすなわち「幸福」であるとされている。

では、「ウェルビーイング経営」とは何だろうか。
「ウェルビーイング経営」とは、全てのステークホルダーがウェルビーイングな状態を作ることである。すなわち、社員、組織、そして社会を大事にする経営ということであると、我々アイディール・リーダーズは考える。

例えば、丸井グループの青井浩代表取締役社長・代表執行役員CEOはウェルネス経営(≒ウェルビーイング経営)の定義を、「自分(筆者注:社員のこと)、社会、将来世代にとって意義のある仕事にチャレンジし、成長し続けることで、すべてのステークホルダーの『しあわせ』を実現する。そのような働き方をビジネスを通じて実現すること」と述べている。

では、なぜ今「ウェルビーイング経営」が求められているのだろうか?

2 ウェルビーイング経営が求められる背景

経済成長は世界の生活水準を向上させてきた。しかし、経済成長の指標である国内総生産(GDP)は国の経済規模を測るだけで、GDPが高くても、環境への悪影響や、所得不平等、過労死など、GDPや経済的利益だけでは国の成功を測ることができないことがわかる。

また、現在人類が地球のエコシステムに与えている圧力は飽和状態に達していて、気候や水環境、生態系などが本来持つ回復力の限界を超えているとも言われている。2050年には世界の人口は90億人に達し、都市化は70%に進展、世界経済の規模は4倍に拡大すると言われている。

こうした資源と地球環境の限界を背景に、国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」(2015年)や気候変動問題に関する「パリ協定」(2016年)が採択され、企業にも社会課題の解決や持続可能性を重視すべきだという考えが世界的に広がりつつある

日本では、2017年11月に経団連も企業⾏動憲章を改訂し、経済成長と社会課題の解決を両立を目指すとしている。

また、株主第一主義を推進してきた米国のビジネス・ラウンドテーブルが、2019年8月、株主至上主義からの脱却を宣言し、顧客や従業員、サプライヤー、地域社会、株主のステークホルダーを重視する方針を打ち出したことも象徴的な出来事といえる。

こういった世界のトレンドをみると、「人、組織、そして社会を大事にする企業」、すなわち「ウェルビーイング経営を大事にする企業」がこれからの時代に求められている。

実際、「ウェルビーイング」、「ウェルビーイング経営」という言葉は注目されている。例えば、今年に入り、日経Well-beingカンファレンスが開催されたり、米国の著名な経済誌であるハーバード・ビジネス・レビューでもウェルビーイングに関する記事が取り上げられている。

 

3  ウェルビーイング経営とPurposeの関係性

社会が「ウェルビーイングである」ために、近年ますます関心が高まっている「Purpose」の明確化に企業は取り組む必要がある。

Purposeのを設定して社会における自社の存在意義を明確にし、社会にどんな価値を提供すれば良いのかという問いを探求することが、「社員、組織、そして社会を大事にする企業」になることにつながる。

企業のPurposeを策定することは、以下のように、社員一人ひとり、組織全体、社会全体のウェルビーイングを実現するきっかけになる。

①:社員一人ひとりのウェルビーイングが実現するきっかけになる

社員一人ひとりが、企業のPurposeと自分自身のPurposeとの重なりを見つけることで、仕事や会社に対して、自分なりの意義・意味を見出すことができる。

そして、仕事へのモチベーションが高まり、メンバーとの関係性も良くなり、それが働く上での幸福につながる。ワークエンゲージメントとパフォーマンスも高まると期待される。

②:組織全体のウェルビーイングが実現するきっかけになる

組織全体のウェルビーイングとは、Purposeに沿った一貫性のある組織戦略が描かれ、組織の一体感が生まれることを指す。Purposeに共感した社員が高いモチベーションでその能力と創造性を発揮することで、大きな価値が生まれ、組織の持続的な繁栄をもたらす。こうした良い循環がうまく回ることは組織全体のウェルビーイングに繋がる。

③:社会全体のウェルビーイングを実現するきっかけになる

①や②で述べたとおり、個人や組織(企業)がPurposeを大事にし続けることにより、Purposeに沿った価値をステークホルダーに提供できる。Purposeから生まれた商品・サービスは、ステークホルダーの共感や支持を生み、社会全体のウェルビーイングの実現に寄与する。

以上のように、Purposeがあると、全てのステークホルダーのウェルビーイングを追求することができる。Purposeはウェルビーイング経営に必要不可欠と言える。

4 アイディール・リーダーズが考える「ウェルビーイング経営」とは

アイディール・リーダーズの共同創業者・CHOである丹羽真理は2018年に「パーパス・マネジメント – 社員の幸せを大切にする経営」を出版し、「社員のウェルビーイングを高める」手段の一例として、「社員幸福度」について以下のように論じている

「会社や株主の利益よりもまず社員の幸せを追求すべきである」

「社員の幸福度が上がれば、会社の業績も上がり、株主も幸せになれる」

「仕事は苦しいものという固定概念を捨て、一方で、幸福=楽である、という誤解も一旦置いておこう。」

社員の幸福度が向上すれば、業績や生産性の向上、離職率の低下に繋がることが、その他各研究でも実証されている。

 

一方で、仕事における幸福度のメリットはそれぞれあるものの、どうやって幸福度を向上させるのかは難しいテーマである。

我々アイディール・リーダーズが考える「仕事における幸せ」は以下の4つの要素で構成される

  • Purpose(パーパス=存在意義)
  • Authenticity(オーセンティシティ=自分らしさ)
  • Relationship(リレーションシップ=関係性) 
  • Wellness(ウェルネス=心身の健康)

これらの要素を文書で表すと「自分が意義を感じられる仕事を、自分らしく、周囲とよい関係を築きながら、実現できること。そのための土台として心身の健康が備わっていること」となる。

 

以下はに、4つの要素をそれぞれ詳しく紹介する。

Purpose(パーパス=存在意義)

幸福度向上の起点は個人が明確な「Purpose」を持つことだと我々が考えている。

また、我々が考えるPurposeとは、単純な目的ではなく、「存在意義」を表している。

Purposeには、個人のものと、組織のものがあるが、個人のPurposeには以下の2つの要素が含まれている必要がある:

  • 自身が大切にする価値観に沿っている
  • 社会的意義が含まれている

 

出典:ATD国際会議「Motivating Millennials: New Research into Unlocking Their Passions」

の資料をもとにアイディール・リーダーズが作成

 

全世界85万人を対象に行った「Motivating Millennials: New Research into Unlocking Their Passions」の調査の中に、ミレニアル世代(1980年代前半〜90年代半ばに生まれた世代)の仕事に対する動機付け要因の1位は「社会やコミュニティに対してよい影響が与えられるか」という結果がある。

Facebookの創業者マーク・ザッカーバーグ氏は、ハーバード大学の卒業式スピーチの中で、以下のように述べています。

“Today I want to talk about purpose. But I’m not here to give you the standard commencement about finding your purpose. We’re millennials. We’ll try to do that instinctively. Instead, I’m here to tell you finding your purpose isn’t enough. The challenge for our generation is creating a world where everyone has a sense of purpose.”

今日、僕は皆さんに「パーパス」について話したいと思います。でも、人生のパーパスを見つけようというありふれたスピーチをするつもりはありません。僕たちはミレニアル世代です。言われなくても当然のようにパーパスを見つけようとします。

そうではなく、自分の目標を見つけるだけでは充分じゃないということを伝えたいのです。僕たちの世代の挑戦は、世界のすべての人がパーパスを持って生きられる、そんな世界をつくることです。

(中略)

“Purpose is that sense that we are part of something bigger than ourselves, that we are needed, that we have something better ahead to work for. Purpose is what creates true happiness.”

「パーパス」を持つというのは、自分より偉大な何かに貢献していると感じられることです。自分は必要な存在だと感じること。何かをより良くするために頑張れること。パーパスこそが、真の幸せにつながるのです。

 

以上はあくまで二つの例に過ぎないが、Purposeに対する意識はどんどんと高まっていると言える。

「自分の人生のパーパス(存在意義)とは何か?」

そこから全ては始まる。仕事や会社が自分自身のPurposeと紐付くことで、自分なりの意義や解釈を持つことができる。仕事に対するモチベーションが上がることが、最終的な成果につながる。そして成果がモチベーションを高め、幸福度を高めるのである。

 

Authenticity(オーセンティシティ=自分らしさ)

自分の強みを活かし、自分らしく仕事を行えることを指す。また仕事の進め方に自由度があって、ある程度のコントロール権があることは「仕事における幸せ」に欠かせないことである。明確になった会社のPurposeを理解し、個人のPurposeと重なり部分を実現していく際、自分の強みを活かせる方がパフォーマンスは上がり、幸福度も向上する。

出典:米ギャラップ社の調査結果をもとにアイディール・リーダーズが

 Relationship(リレーションシップ=関係性)

メンバーの関係性が良好であることも「仕事における幸せ」には欠かせない要素である。メンバー同士が一緒に働く人々と良い人間関係を築き、協力して働けること。また、従業員一人ひとりが組織に対して心理的安全性を感じられること。周囲の人から気にかけられている、大事な存在とされていると感じられることは、幸福度の向上に大きく繋がる。

そして、職場において関係性を築くためには、相互理解と良いフィードバックが行われていることが重要となる。上司が部下にフィードバックをする際に、「部下の強み」を活かすフィードバックを心がけているかどうかは、チームやメンバーの生産性・収益性を大きく向上し、離職率も大幅に下がることが明らかになっている。

良い関係性が保たれていることは、「心理的安全性を感じていること」にも繋がる。この心理的安全性は、企業風土にも大きく影響を及ぼす。また、「心理的安全性」をチームが担保できているかが、生産性向上にも大きく影響していると明らかになっている。

出典:米ギャラップ社の調査結果をもとにアイディール・リーダーズが作成

Wellness(ウェルネス=心身の健康)

Purpose・Authenticity・Relationshipを満たす上でも、Wellness=心身の健康は欠かせない。いくらやる気が高く、周りの人と良好な関係を築いていたとしても、燃え尽きしてしまっては意味がない。「健康経営」を推進するために会社が従業員の健康に対して「投資」を行うことは、従業員の心身の健康を探訪することに繋がる。

これら4つの要素を満たすことで、「仕事における幸せ」が実現される。社員個々人のウェルビーイングを大切にすることが、ウェルビーイング経営の一つの大きな柱となっていく。

5 最後に

今回の記事では、ウェルビーイング経営とは全てのステークホルダーが「健全で幸福な状態」を目指す経営を指し、そのためにPurposeが非常に重要な役割を果たしていることをお伝えしてきました。

Purposeに関する詳細は、下記のワークショップや、公開資料の中で詳しく触れているので、お気軽にご覧ください。

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