3年後とも5年後とも言われるアフターコロナの世界。そして、さらにその先の2030年。私たちの社会やビジネス環境はどのような姿になっているでしょうか。
アイディール・リーダーズではこの度、「シナリオプランニング」という手法を用いて、コロナ関連の情報に加え、現在起こっていること/未来に起こりうることの情報を幅広く収集しながら、「2030年の社会・経営の姿」に関する未来洞察を行いました。本記事内では、アウトプットとして生まれた2030年の4つのシナリオ(=起こりうる未来のストーリー)についてご紹介します。
【シナリオプランニングとは?】
未来洞察手法であるシナリオプランニングでは、幅広い外部環境情報に触れながら変化の構造を理解し、不確実性の高低や自社へのインパクトについて多角的に議論を行いながら、起こりうる未来について複数のストーリーを構築、適応策を検討していきます。
シナリオプランニングの成功例
シナリオプランニングの成功例としてはシェルの事例が有名です。
「もし、石油メジャーではなく産油国が石油産出量の決定権を握り、世界的な石油供給がかつてなく逼迫したら…」
これはオイルショックに先立つ1970年代初頭にシェルが起こりうる未来として想定していたシナリオです。シェル経営陣は起こりうる未来シナリオを十分に理解し、それに備えていたことで、中東諸国の動きから石油危機シナリオが現実化しつつあることに気づき、それに基づく戦略的意思決定を行うことで、危機に適応し、石油メジャーの上位企業に躍進したと言われています。
2030年における不確実性の低い事柄
シナリオプラニングを進める中では、未来における不確実性が低いこと(=高い確率で起こると考えられること)と、不確実性が高いこと(=実際に起こるかが不明なこと)を区別していきます。
私たちが独自にシナリオプランニングを進める中で、不確実性が低いと見込んだことは、下記の通りです。
- 日本国内における総人口の減少、高齢化と生産年齢人口の減少
- グローバルでの日本経済の相対的プレゼンスの低下
- ミレニアル世代やZ世代など新たな価値観を持つ世代が総人口に占める割合の増加
- AI・ビッグデータ、自動運転、ロボット等テクノロジーの進展と浸透
- 世界人口のさらなる増加と世界人口の高齢化
- 中国・インドなどアジアの経済成長による世界経済の重心シフト
- 気候変動による自然災害リスクの高まり
- 新興国の成長やテクノロジーの進歩を背景とした世界の複雑化・結合の高まり
2030年における不確実性の高い事柄
私たちが不確実性が高いとみなした事柄は数多くありましたが、その中でもそれが起こったとしたら2030年の社会・経営に相対的により大きな影響を与えうると考えるものを二つ選定しました。
一つは、グローバルレベルで、株主資本主義が強まるか、ステークホルダー資本主義が強まるか。もう一つは、日本国内において都市集中型社会が強まるか、分散型社会が強まるか、ということです。
2030年の社会・経営に関する4つのシナリオ
不確実性が低いことは全てのシナリオにおいて反映させながら、不確実性が高く、テーマに関するインパクトが特に大きいと考えた事柄を2軸に据えて、最終的に下記4つのシナリオを作成しました。未来シナリオそれぞれが、異なる社会の姿、そして経営の姿を映し出しています。
イラスト:岩谷 真里奈
なお、シナリオの理解を促進するため、それぞれのシナリオを動物になぞらえてネーミングしています。
左上のシナリオは「狼シナリオ=ビジネスサバンナで闘う狼の群れ」と名付けました。グローバルな競争社会の中で、強者が生き残っていく世界を表現しています。
□□□狼シナリオ概要□□□
都市部に人口も仕事も集中し、職住近接型の暮らしが目指すべき勝ち組のライフスタイル。企業もそこで働く人も厳しい競争環境の中、短期的な利益追求や人材としての社内外市場価値の向上にプレッシャーがかかる。アジアを舞台としたグローバルでの競争が激化し、業界内での大型M&Aや寡占が加速する。成果主義の導入が進み、格差は拡大、個人・企業・地域などあらゆる領域で格差・ヒエラルキー構造が顕在化。優秀な人材や先進的技術を取り込める一部のグローバル企業が勝ち組と評される。地方は衰退の一途をたどる。
右上のシナリオは「蟻シナリオ=女王にために働く蟻」。ピラミッド構造の上部に位置する都市や大企業が力を有し、そのために働く多くの地方在住者を表現しています。
□□□蟻シナリオ概要□□□
テクノロジーとフルリモート環境を駆使し、物価の安い地方に居住しながら都市の企業に勤務する人が増加。効率性や利益追求のため企業は低コストでの労働力を求め、副業やダブルワークなども含め生活水準を保とうとする個人がクラウドソーシング等でバーチャルにつながり猛烈に働く。労働力、お金、情報などは地方から都市へと流れ、地方居住者増加とは裏腹に地方経済は衰退する。消費者はEC、ロードサイドの大型&省人化店舗、シェアサービスを組み合わせて活用し、低価格・機能性重視の消費行動へ移行するため、地元商店ではなくチェーン店が生き残り、地元経済は低迷。
右下シナリオは「カルガモシナリオ=必要に応じて都心と地方を移動するカルガモ親子」と名付けました。
□□□カルガモシナリオ概要□□□
経済合理性に加え自然資本や社会資本といった多様な視点が意思決定に反映され、企業は短期的な業績よりも社員・地域・環境などを意識した中長期的な取り組みにより評価される。個人は仕事に意味・意義を見出し、ワークライフバランスは当たり前の概念となる。自然・コミュニティとのつながりを重視したライフスタイルが好まれ、都心でのコミュニティ型住宅、シェア農園などが流行。週末には家族や知人と田舎ライフを満喫する。人口減・少子高齢化を背景とした様々な社会課題に対しては、政府・企業・市民セクターが協働しながら取り組んでいる。
右下シナリオは「蝶々シナリオ=お花畑を乱舞する様々な蝶々たち」と名付けました。多様な地方に、様々な年代・価値観の人が集い自己表現をしながら、同時に調和している様子を表現しています。
□□□蝶々シナリオ概要□□□
地方各地に若者をはじめとした人々が移住し、リモート環境も使いながら都市の仕事や地域の資源やニーズに合った特色のあるスモールビジネスに従事。ストーリーと共感が魅力となり、消費者に支持されることで地域内経済循環が生まれ、徒歩で過ごせる魅力的な商店街や中心街が活性化。企業、個人ともに経済的成長や発展への関心は低下し、自身の価値観に沿った形で、地域密着型の暮らしの充実や地域課題の解決に積極的に取り組む。持続可能で豊かな多極分散型の地方が実現している。
4つのシナリオに対する適応・創造策
シナリオプランニングにおいては、基本的に4つのシナリオはどれも等しく起こりうる未来と考えます。
そうしたとき、例えば自社の戦略はどのシナリオが実現したとしても適応できるような柔軟性を備えているでしょうか。そうではないとしたら、どんな備えを構築すべきでしょうか。また一方で、変えられない未来に備えるだけではなく、多様なステークホルダーと力を合わせることで、望ましいシナリオの実現に向けて主体的に未来を創造するという行動をとることもできるでしょう。
アイディール・リーダーズは「人と社会を大切にする会社を増やします。」というパーパスを掲げています。今回描いた未来シナリオも踏まえ、どんな形でパーパスをより推進していくことができるのか、考え行動していくつもりです。
シナリオプランニングは不確実な時代に適した未来洞察手法と言えます。私たちがつくったシナリオは一例にすぎませんが、各社・各業界でもそれぞれに合わせてテーマでシナリオを考察し、適応・創造策を考えてみることをお薦めします。
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アイディール・リーダーズは株式会社岡村製作所様が運営するWEBマガジンWORK MILLにてシナリオ・プランニングを活用して日本のホワイトワーカーの2030年の働き方と働く場について未来洞察しました。未来洞察に正解は存在しませんが、予期しない未来に備える材料となるべく、単一の未来ではなく、複数の未来シナリオを今回、描き出しました。
2020年コロナ禍とそれにより引き起こされた様々な変化。原因は異なれど大きな変化の波は今後も必ずやおこるでしょう。このような変化に対応していくために私たちに求められていることは何でしょうか。
実際の2030年の働き方・働く場は、これら4つの世界のいずれかに近いかもしれないし、全然異なっているかもしれません。これらシナリオは、「未来予測の答えや正解」を示しているのではなく、「未来をどう創造するかの問い」といえます。
将来の変化の兆しに敏感になる、無意識のうちに変わらないと考えていた前提に気付く、起こって欲しくないと考えることを避けていたことに向き合う。このようなシナリオを描くプロセスを通して、予期しない未来への準備の第一歩を踏み出し、シナリオの世界を俯瞰することで具体的なアクションを考えていけるのではないでしょうか。
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