仕事におけるPurpose – 第4回:Purpose Drivenな組織づくり②

仕事におけるPurpose – 第4回:Purpose Drivenな組織づくり②

前回は 、途上国の起業家を支援するマイクロファイナンスNPO「Kiva」の事例を交えて、PurposeDrivenな組織づくりのフレームワークとしてよく知られている3Dモデルについて紹介した。 (前回の記事はこちら)

今回はウェアラブル健康端末メーカーとして世界シェアNo.1のを誇るFitbit社の従業員にPurposeを意識させる取り組み事例を通じて、Purpose Drivenの組織づくりについてさらに探っていく。

Fitbit社は、2007年に設立され、ウェアラブルデバイス市場世界No.1の活動量計を販売する会社である。
to inspire and empower people to live a more active life,through products and experiencesthat fit seamlessly intoconsumer’s lives」3     (消費者の生活にシームレスにフィットする製品や体験を通じて、人々がよりアクティブな生活を送るためのひらめきと活力を与える)をPurposeとして掲げ、消費者が容易にアクティビティを記録できるスマートウォッチを提供してきた。

彼らは、人々が楽しく、笑顔になり、元気を感じることができれば、自分の健康目標を達成する可能性が高まると考えている。自社で提供しているプラットフォームのデータを分析したところ、友達と繋がっているユーザーは、いないユーザーに比べて平均11%多く歩くという結果が出ている。

このサービスは個人向けと同様に、企業向けにも展開されており、Fitbit商品を導入した企業「FitbitCare」と呼ばれるプラットフォームを用いることが可能である。このプラットフォームは、従業員の健康目標の達成を支援するものである。従業員にはトラッカー、モバイルアプリが搭載されたスマートウォッチが配布され、管理者にはダッシュボードとレポートツールが提供される。

ここで注目すべきは、Fitbit社はこのプラットフォームを顧客にサービスとして提供するだけではなく、自社にも導入している点である。これはFitbit社のPurposeである「人々がよりアクティブな生活を送るためのひらめきと活力を与える」を自社の従業員に対しても同様に体験価値を提供するために行われており、前回紹介したPurpose Drivenな組織づくりとして提唱される3Dモデルを体現していると言える。前回を振り返ると、Carlos Ray氏とMiquel Bastons氏は著書『Purpose-Driven Organizations』4で3Dモデルの要素①Knowledge(ナレッジ)、②Action(アクション)、③Motivation(モチべーション)をつなぐものとして、次の3つを提唱していた。

1) ナレッジとモチべーションをつなぐもの=Internalization(内在化)
Purposeを個々人に内在化させること。内在化しなければ、Purposeは存在しないのと同然である。

2) ナレッジとアクションをつなぐもの=Implementation(実現、遂行)
理解しているPurposeを実際のアクションとして遂行すること。Purposeを具体的なアクションによって表出する。

3) モチベーションとアクションをつなぐもの=Integration(統合)
Purposeを「習慣」に変化させること。個々人のモチベーションを調和させながら、日々のアクションに移して習慣化することが重要である。

 

Fitbit社の事例にこのモデルを適用させてみよう。

Internalization(内在化)

まず、 Fitbit社はPurposeである「人々がよりアクティブな生活を送るためのひらめきと活力を与える」を従業員に内在化させるよう、自社のサービスを従業員に提供し、従業員にポジティブな影響を与えている。

例えば、社内でランニングデスク、室内自転車の提供、ウォーキングミーティングの促進、ランチタイムのランニングの支援、海辺でのヨガ、ビーガンポテトやココナッツジュースなどの健康的なスナックや飲み物の提供など、Fitbit社はより健康的、かつアクティブな生活を社内に推奨している。このような施策を通して、Fitbit社の離職率は業界標準の半分となっている。Fitbit社の従業員はこのように話している。

「私たちは毎日仕事を楽しんでいて、本当にお客様の健康とウェルネスに良いインパクトを与えて、会社の成功を感じています。そんな充実した職場です。」

「私がFitbitで働いていることを知ると、人々は迷わず、私たちの製品が自分自身や家族、友人にどのような影響を与えたかの話をしてくれます。このようなポジティブな影響を日々与えてくれる製品に携われることを光栄に思っています。」5

Implementation(実現、遂行)

2013年以来、Fitbit社の社内FLIP委員会(FLIP:「Fitbit lives itspassion」の略称)は毎週「Workout Wednesday(水曜日のワークアウト)」を主催している。「水曜日のワークアウト」では、従業員は午前8時半から午後5時半までの休憩時間にレッスンを受けることができる。(Fitbit社によると、水曜日にどれだけの従業員がトレーニングに参加したかは追跡しない)FLIP委員会は栄養、アクション、ストレス管理、職場カルチャーに注目したたさまざまな分科会で構成されており、多様なレッスンを従業員に提供している。Fitbit社の共同創業者であるJames ParkやEric Friedmanは毎週水曜日のレッスンのスケジュールを従業員に送り、従業員に参加を促している。

「私たちの仕事は忙しく、休みが必要なときもある」とHumanResources ManagerのTaryn Ching氏は述べている。6

Integration(統合)

また、従業員は自社が開発した「Fitbit Care」という健康管理プラットフォームで実際に製品を用いることで、自分のアクティビティデータを毎日アップし、Purposeを実際のアクションとして遂行している。そして、日常生活に浸透させ、Purposeが日々のアクションに移して習慣化することを可能にしている。このようにして、Fitbit社は、「消費者の生活にシームレスにフィットする製品や体験を通じて、人々がよりアクティブな生活を送るためのひらめきと活力を与える」というPurposeを様々な施策をして従業員に浸透させ、Purpose Drivenな組織づくりを実現しているのである。

 

今回もPurpose Drivenな組織づくりにおいて広く知られている3Dモデルとその事例を紹介した。
第3回で述べたように、3Dモデル以外もいくつかのモデルがあるため、他のモデルを効果的に活用しながらPurpose Drivenな組織づくりを心がける必要がある。

次回は、Purpose Drivenの組織をつくるステップとその事例を紹介し、Purpose Drivenの組織づくりについてさらに探っていく。

 

 

・参考文献:
1 Simon,M. (2019). Purpose At Work: How Fitbit’s Giveback Is Strengthening Its Business. Forbes.
https://www.forbes.com/sites/simonmainwaring/2019/02/12/purpose-at-work-how-fitbitsgiveback-is-strengthening-its-business/?sh=e4facfb58d26 (accessed on 2021-1-25)
2 Edelman. (2018). TWO THIRDS OF CONSUMERS WORLDWIDE NOW BUY ON BELIEFS.
https://www.edelman.com/news-awards/two-thirds-consumers-worldwide-now-buy-beliefs
(accessed on 2021-1-25)
3 https://www.fitbit.com/global/us/about-us (accessed on 2021-1-25)
4 Rey, C., Bastons, M., & Sotok, P. (2019). Purpose-driven Organizations: Management ideas for a better world. Palgrave Macmillan.
5 LinkedIn. (2016). Portraits of Purpose Companies. Fitbit.
https://business.linkedin.com/content/dam/me/business/en-us/talentsolutions/resources/pdfs/fitbit-purpose-case-study.pdf (accessed on 2021-1-29)
6 Alice,T. (2015). This is how Fitbit employees monitor each other’s health. QUARTZ.
https://qz.com/380634/this-is-how-fitbit-employees-monitor-each-others-health/
(accessed on 2021-1-25)
7 Robert E. Quinn., Anjan V. Thakor. (2018). Creating a Purpose-Driven Organization. Harvard Business Review.
https://hbr.org/2018/07/creating-a-purpose-driven-organization (accessed on 2021-1-25)
(日本語版:https://www.dhbr.net/articles/-/5730) (accessed on 2021-1-25)

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第5回では、テキサス州オースティンに本社を置くアメリカの多国籍スーパーマーケットチェーンであるホールフーズマーケットの事例を用いて、どのようにPurpose Drivenな組織づくりが行われていくのかをさらに探っていきます。

今回紹介するPurpose Drivenな組織をつくる8つのステップとホールフーズの取り組みについては以上の記事からご覧いただけます。

パーパス・ドリブンな組織づくり③はこちらから。

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