パーパス・ドリブン・経営の実践に向けて
国内の企業事例を多数ご紹介
この本は、きれいに飾られた言葉でパーパスをつくるための本ではありません。また、パーパスを掲げて、それをいかにプロモーションに繋げるかを書いているわけでもありません。
本書は、パーパスドリブンな経営を実現する第一歩を踏み出すための本です。パーパスとはつまり存在意義のことです。会社の存在意義のままに経営を行うこと。これはいたってシンプルなことです。しかし、それができている企業はそう多くはありません。なぜ、こんなにも単純なことを多くの企業ができていないのでしょうか。
その原因の1つは、「パーパスを掲げること」が目標になっている企業が多いことです。「カッコイイ文言でパーパスをつくりたい」「パーパスをつくることで会社の認知度を上げたい」そんなご相談をいただくことも少なくありません。こうした思いが、完全に間違いとは言い切れません。しかし、とても残念に感じているのが「掲げただけで実装につなげるイメージを持てていない」ということです。
先ほどパーパスは、存在意義だと説明しましたが、それをさらに噛み砕くと、「自社らしさ」を生かし、「どう社会に貢献するか」をあらわした言葉がパーパスです。つまり、パーパスは実装することでソーシャルインパクトを起こす力があるものなのです。これを「お題目」だけで終わらせてしまうのは、あまりにもったいないことではないでしょうか。
筆者の願いは、企業で働いている一人ひとりが、もっと幸せに仕事に向き合えるようになってほしいということです。今の社会において、「仕事にやりがいを見出せない」「何のために働くのかわからない」といった不平不満を抱えている人は少なくありません。こうした思いは、「個人のパーパス」と「会社のパーパス」が合致していないことによって引き起こされます。
本文を読んでいる読者の方の中にも、個人のパーパスに目を向けたことがないという人もいるかもしれませんね。個人のパーパス、すなわち、「自分の存在意義」を急に問われても答えに窮してしまうかもしれません。しかし、個人のパーパスはこれからの社会を生きていく上で非常に重要なもの。そして、個人のパーパスが明確でなければ、会社のパーパスへの共鳴も起こり得ません。
当然のことながら、個人のパーパスと会社のパーパスが合致している人は、やりがいを持って生き生きと働くことができます。
混沌とした社会で、新たな価値観も登場し、これからどう道を歩んでいけばよいか迷う人も少なくないでしょう。こうした世界において、パーパスは会社の道しるべとなります。日本の企業には、まだまだ大きな可能性があります。どうすれば多くの企業が社会に価値を提供し続け、そこで働く一人ひとりが生き生きと力を発揮できるのか。本書がその問いについて考える一助となれば幸いです。