日本たばこ産業 人事部成長支援チーム 一人ひとりの"こうありたい"を見つけ育むためのきっかけをつくる

一人ひとりの"こうありたい"を
見つけ育むためのきっかけをつくる

日本たばこ産業株式会社

日本たばこ産業株式会社

https://www.jti.co.jp/

「ひとのときを、想う。JT」というコミュニケーションワードをテーマに、人の生活の「ひととき」に寄り添った商品・サービスを展開。国内シェアトップを走り続けているたばこ事業を強みに、医薬品や加工食品の製造・販売なども行う。たばこ産業のリーディングカンパニーとして、国内に限らずグローバルな視野を持ちながら、近年高まる健康志向のニーズに応える形で安定した成長を続ける。

話し手
日本たばこ産業株式会社
人事部 高田様
人事部 藤村様
聞き手
アイディール・リーダーズ株式会社

ご依頼の背景

様々な領域で先行きが見通しづらい環境にある昨今、日本たばこ産業株式会社では、たばこ事業のグローバル統合を見据え、従業員一人ひとりの思考・行動様式の変革が本格的に求められるタイミングを迎えています。人事部・成長支援チームでは、経営に資する人材の育成・輩出というチーム発足時からのミッションと、個々のWillを大切にしながら組織が個に合わせ、全従業員に向けた成長支援を行うというある種の矛盾関係を孕んだミッションが併存していました。結果として、「私たちは何のために働くのか」という命題に対して、メンバー間で捉え方の違いや混乱が生じていました。そこで、一人ひとりの不安や課題に個別対応する以外のクリティカルな一手を探されていたところ、まずは成長支援チームの使命やあり方を見つめ直す糸口として、「パーパス」という1つの定義をチーム内で策定することを決断され、アイディール・リーダーズにご相談いただきました。

この度は、プロジェクトの中心的存在である高田様、藤村様へのインタビューを通して、パーパス策定プロジェクトの背景やその後の変化についてお話しをお伺いしました。

まず初めに、プロジェクトをご依頼いただいた背景を教えていただけますか?

ジレンマを抱える中、働く目的を見失わないための”チームの軸”を求めた答えが「パーパス」だった。

高田

弊社では、2022年1月以降、会社の軸となるたばこ事業がグローバル統合するにあたり、社内でも本格的にワンチーム化へ動き始めました。グローバル化に伴い、これまであまり関わる機会のなかった方々とも連携する必要があり、働く環境に少なからず変化が生じることは明らかでした。だからこそ、コーポレートとして、社員の思考様式や行動様式を”プロジェクト型”に移行すること、つまり、課題やアジェンダを能動的に見つけ「仕事を自ら創ること」を支援していくことが求められました。また、弊社内の事情に限らず、社会全体の観点で考えても、今はVUCAの時代。今後は、マーケットの動きが中長期的に不透明になってくるので、外部変化に負けない、「自分たちのありたい姿」を確立する必要性を感じていました。この理想像が、先に掲げた「仕事を自ら創る」の軸となるはずなので、なおさらです。

吉田

会社の変革タイミングでは特に、「ありたい姿」や「存在意義」が様々な戦略や方向性の軸、また、働く個人にとっての拠り所となりえますよね。成長支援チーム内では、どのような課題感があったのでしょうか?

高田

成長支援チームが掲げるミッション間の矛盾に悩みを抱えていました。我々のミッションには、必然的に2つの相反する意味が共存しているためです。一方は、全従業員に向けて個々の存在意義を尊重しながら成長支援のきっかけを提供するという「個を起点」とする考え。他方は、経営に資する人材を育成・輩出するという「組織を起点」にした考え。この矛盾ゆえ、自分たちの働く目的に混乱する場面がチーム内で散見されました。チームメンバー全員の働き方に良い影響を与えられるクリティカルな一手がないかと考えていた時に、成長支援チームとしての「パーパス」の策定を進めるというアイデアに至り、これまでの関わりの中で信頼していて、パーパス策定の分野で知見をお持ちのアイディール・リーダーズさんに連絡させていただきました。

後藤

お話を伺った時点で、チームミッションに内在する矛盾、そしてチームメンバーが抱える違いや混乱がある状況に着目しました。今回、チームパーパス策定を進める上では、過去の成功事例などを紐解くポジティブな側面からのアプローチだけでなく、一人ひとりが抱えている悩みや違和感などネガティブな側面を扱うことも重要と考え、プロセスに組み込むことを決めました。

パーパス策定のプロセスでどのような気づきがありましたか?

内なる想いをぶつけ合うことで生まれる健全な対立と、
自ら積極的に関与し育てるという当事者意識こそが、プロセスを通して経験できた新しい発見。

高田

プロセスを通して初めて、チームメンバー一人ひとりが抱える課題感や想いに気付かされました。それはきっと私に限らず、参加者全員が感じていたことだと思います。成長支援チームは、「人の成長を後押しする」など、”美しい”表現でまとめられたミッションの元で働いています。また、一人が最初から最後まで一貫して仕事をやり通すスタイルが基本です。そういった背景から、普段の業務でチーム内のコミュニケーションはスムーズ。メンバー間で軋轢が生じることは稀だったので、今回のプロセスで議論が膨らみ、なかなか合意に至らない状況がとても新鮮でした。パーパスを表現する言葉の選び方一つをとっても、方針の違いや前提の違いがあらわれ、意見が飛び交う。大きな方向性は同じでも、思考や主張が微妙に違っていて、なかなか折り合いがつかない。自分ですら気づけていなかった心底にある想いやこだわりを仲間と共有し合うことができ、建設的な議論を進めることができました。

後藤

プロジェクトには時間的制約があるのはもちろんですが、「時間内にパーパスの言葉をつくる」ことを目的化するのではなく、しっかりと議論・対話を尽くすことを意図していました。ファシリテーションにおいても、「本当にこれでいいのか」という点を何度も確認しましたし、小グループ単位での対話の中で違和感が表出していれば、全体共有の時間で発言を促したりすることもありましたね。

高田

そうした場面が度々ありましたね。今回、パーパスに対して当事者意識を持つためには「つくる」プロセスへの関与が不可欠であるということに身を持って気づかされました。自らがノータッチの成果物は印象に残りづらいですが、今回のように熱い議論を交わし必死の思いで生み出したものには愛着が持てます。メンバー全員が成長支援チームのパーパスを自分のものとして成長させていけるポテンシャルは、全員でつくり上げたからこそ手に入るんですよね。この「自分たちでやる」感覚を忘れないように、今後あらゆる場面で活かしていきたいと思います

アイディール・リーダーズの支援には、
どのような特徴があると感じられましたか?

各自が気付いていない、言えていない本音や想いを、自然に展開させるファシリテーション技術こそが、アイディール・リーダーズの最大の武器。

高田

まずは熱い議論を引き出す雰囲気を自然に提供していただけることです。ワーディングチョイスで「決める」だけならすぐに完成したであろうパーパスですが、私たちは自分たち自身で生み出すことにこだわっていた。その想いを前提に、大小様々な観点から、問いや視点を投げかけながら、議論が活性化するようなファシリテートをしてくださいました。例えば、働く上で感じる残念な気持ち、悔しさ、違和感などに触れた出来事を振り返るワークでは、具体的なイメージを持てるように自らの体験談をありのままに話してくださいました。我々が「そういえば…」と記憶の引き出しからきっかけを見つけやすいように、様々な工夫が施されている印象を持ちました。

後藤

私たちが第1回のワークショップで感じたことは、皆さんがとても「大人」ということでした。自分の意見は一定伝えながらも、相手にも歩み寄り、話し合いがスタックしているように見えました。真の対話は各自の本当の声が出された先に築かれるため、第2回のワークショップでは、相手の意見に論理的にそうだと感じる部分があっても、「自分としてはこうしたい」というある種のエゴ、本音を話すことを提案させていただきました。

 

高田

はい。皆さんの投げかけがトリガーとなり、最終的にチーム全体としても、自分の意見や疑問、違和感などを本音でぶつけ合える環境に一変したと思います。私自身、普段のチーム内コミュニケーションで「違うと思います」と面と向かって言われることはほぼないのですが、パーパス策定のプロセスでは、率直な意見をぶつけてもらい嬉しかったです。参加者それぞれが、自身の積極性や根底にある想いに驚いているようでした。結果として、メンバー同士の距離感が縮まり、お互いのことをより一層信頼し合えるようになったのでチームビルディングの意味でも有意義な時間でした。本音で語り合える空気感で満たす自然なファシリテーション、それがアイディール・リーダーズの最大の魅力だと思います。

藤村

パーパスが策定されるまでの道のりはとても長いものでしたが、その中で個人の想いを乗せて議論するという時間にすごく価値があると感じました。我々の仕事には正解がなく、拠り所も分かりづらい状況の中でしたので。高田の発言と重なりますが、問いを通して気づかせてくれるアイディール・リーダーズのファシリテーションがあったからこそ、全員が信頼し合って素直な言葉や考えが飛び交うようになったのだと思います。改めて、経験したことのない尊い時間だったと感じています。

完成したパーパスと、お二人の想いをお聞かせください。

メンバー一人ひとりが内に秘めた”本当の想い”を凝縮した、納得度の高いパーパスが完成。

吉田

成長支援チームの皆さんが、プロジェクト開始時から一貫して重視していたのが、納得度の高いパーパスの策定でした。私たちも、パーパス策定において重要なことは、策定メンバー自らがどれだけパーパスを信じられるかだと考えています。その意味で、パーパスについて「特定の言葉を選んだ理由」や「言葉の背景にある信念や人間観」、「パーパスに込められた各自の想いや願い」など語れる状態にあることは重要です。完成したパーパスについてのお二人の想いもお聞かせください。

藤村

紆余曲折を経て、「一人ひとりの”こうありたい”を見つけ育むためのきっかけをつくります」というパーパスに全員の想いを集約しました。私は、「きっかけ」という表現が我々の存在価値を体現していると思っています。まず他者を育成することはできません。あくまで自分が成長をしていきます。だからこそ、今のチーム名にも「成長支援」という言葉が使われています。さらに、私たち成長支援チームにできることは限られています。永続的に個人に伴走し続けて育成するのは非現実的ですが、「きっかけ」の提供を通して成長を支援する手段はいくらでもある。そのために我々が存在している。とても理にかなった表現で、「きっかけ」を提供することに、私たちの想いや使命感を全部のせられていると思います。今回策定したパーパスは、成長支援チームが立ち返る場所になると信じています。

高田

私が気に入っているのは、「こうありたい」というワーディングです。人の根源的価値を信じているし、ポテンシャルを解放するための使命を全うするという想いが込められている。自分たちのありたい姿や使命など、エモーショナルで抽象度の高い領域については、チーム全体としてはあまり議論してこなかったこともあり、それらを表現することに難しさもあったと思います。それでも検討の過程では一貫して、ロジカルさよりも、「自分の中に湧き上がる生々しいリアルな感覚」を追求しました。自分らしい言葉で、心の底にある本当の気持ちをメンバー間で共有することにより、結果として全員が腹落ちするパーパスを築き上げられたのだと思います。

パーパス策定後の変化について教えてください。

チームだけでなく個人の仕事の姿勢にも影響を与え続けている自分たちの”存在意義”。

高田

チームにおける変化を一番感じるのは、相談の質です。これまでは、資料の中身や企画の方向性など、オペレーションにおける指示を仰ぐような相談が大多数を占めていたのですが、最近では本質的なものが増えました。前提をひっくり返すことだってあります。自分たちのパーパスが念頭にあり、常に判断軸として機能しているおかげで、仕事をより一層自分事化して捉えられるようになったということだと思います。また、プロセスを通してチームの雰囲気が切り替わったからでしょうか。疑問や違和感をみんな自然と口に出すようになりました。プロジェクトの後に設定したラップアップでも、お互いの意見が激しく飛び交っていて、大変驚いたのを覚えています。

丹羽

チーム全体の雰囲気やメンバーとの関わり方に大きな変化がもたらされたのは、参加された全員が、「パーパス」、チームメンバー、自分自身に真剣に向き合った成果だと思います。お二人自身には、個人的に何か変化がありましたか?

高田

仕事への向き合い方や、働く上での自分のモチベーションに変化があり、「幸せ」という感情がもたらされました。メンバーや仕事への捉え方が変わったことで、チーム全体が共同体として、やるべきことに生き生きと取り組むことがいかに大切かを痛感しています。存在意義があってこそ芽生えるこの感覚だと思うので、プロジェクトの価値を実感しています。

藤村

「やるべきこと」の集積が自分たちの仕事ではないということを改めて実感しました。チームや個人のパーパスが明確になることで、観点が大きく変わり、仕事に対する姿勢が一層ポジティブになったと思います。「なぜやるのか」「なぜそうあるのか」を見直す日々です。納得できる軸と、ある程度のコミットメントを持って、目標に向かっていくことが働く上でのwell-beingにつながると信じています。

今後の展望や取り組みについて教えてください。

段階的なアップデートと運用に向けた仕組みづくりで、パーパス・ドリブンな組織を目指す。

高田

最低でも3ヶ月に1回、チームの存在価値や仕事の意味について、議論・精査する場を設けることにしました。今回策定したパーパスを北極星とし、段階に応じて定義をアップデートし続けていくべきだと思っています

藤村

セクションや部を超えて全社的にも徐々に伝播させていきたいです。点検や立ち返りの時間を設ける以外にも、パーパスの実現を力強く進めていけるような手段がないか検討していきます

高田

小さなことからでも、できることは進めていきたいと思っています。例えば、社内のプロジェクトで使うプロフィールシートのようなものに、自分を体現する個人のパーパスを書く欄を設けること。個々のパーパスを社内全体で当たり前に流通させたいと考えています。もう一つは、チーム並びに個人のパーパスを署名に入れ込み、自分を印象付けるための要素として押し出していくことです。

最後に、お二人の「パーパス」に対する考えをお聞かせください。

パーパスは、同じ目標に向かって歩むチームにとって欠かせない確固たる”軸”。
いつでも立ち返れる原点を持ったことを強みに、これからも前向きに使命を果たしていきたい。

高田

パーパスがあるからといって全ての課題が解決するわけではないですが、パーパスは、自分が働く意味を自分事化して考えるうえで有効なツールです。また、言葉の解釈は、個々人が納得する形で自由にしてもらえばいいと思っています。立ち返る場所があることによって、人や思考に依存せず、全員で同じ方向へと進んでいくことができる。例えば、やるべきことや新しい情報を吸収しようとしすぎて、物事の取捨選択が苦手な人事部でも、パーパスに従えば、本当にやるべきことだけが見えてくるわけです。もちろん私自身もチームのパーパスとの間に接合点を見つけていきたいと思っています。これからはグローバルな人材とも協働していくわけなので、私自身のパーパスを明確化し、個人としての存在意義や自分らしさを持って働くことが重要になってくるはずです。パーパスは、今後もいろんな場面で役に立ってくれると期待しています。

また、冒頭の課題に戻りますが、存在意義を見つめ直す中で、「会社の利益を上げるために我々が存在している」という考え方はやっぱり違うなと、今では自信を持って答えられます。卵と鶏の話ではあるのですが、まずは個人の成長から始まって、結果的に会社全体の成長につながっていく。チーム全体としても、この「ありかた」に、オーソライズが取れたので、大きく前進したと感じています。今後もパーパスに立ち返りながら、前向きに仕事に取り組んでいければと思います。

藤村

我々の仕事には正解がありません。だからこそ、拠り所となる存在意義を持ち、パーパスドリブンな組織の実現に向けて、何かアクションしなければとウズウズしていたタイミングだったので、今回のプロジェクトを通してモチベートされたので本当によかったです。パーパスを体現する人間として模範となれるよう、前進・成長を続けていきたいです。

吉田

「何をどうやるのか」以前に「なぜやるのか」がチーム内で健全に意識され、成長支援チームにも様々な変化が起こっていきそうですね。また、日本たばこ産業の成長支援チームでは、個人のパーパスを明確化する「マイパーパス探求プログラム」の取り組みもスタートする予定です。弊社が持つデータからも、個人パーパスの明確度と組織パーパスの共鳴度が高まるほど、仕事のパフォーマンスやエンゲージメント、個人の幸福度が高まるという傾向が見られます。これからの成長支援チームの進化が非常に楽しみです。

担当コンサルタントからのメッセージ

丹羽

「私たちのパーパスはこれです」と自信を持って言えるレベルで、全員の納得感を担保してパーパスを発見するというのは実はかなりチャレンジングなことですが、今回はそれを貫き通してパーパスの文言が完成しました。「個人が成長したいと思うタイミングを尊重したい」「上から目線の文言にはしたくない」など、対話の中で一人ひとりの想いやこだわりが数多く表現されてきました。そして、それらをすり合わせ、時には頭を抱えながらも、最終的には驚くほど自然に1つの言葉へと収斂されていきました。当初からパーパスの方向性としては全員が近しいことを考えていたとも言えますし、対話を通じて、言葉の奥にある前提や想いを共に探求することでチームの核が定まっていったプロセスであったとも感じています。今回、考え方や行動の変化が生まれているというのは、一人ひとりが妥協せず、チームの存在意義に真剣に向き合い続けたからに他なりません。組織の進化につながるようなパーパス発見を支援している私達として、これほど嬉しく、光栄なことはありません。さらに今後、成長支援チームの皆様は個人のパーパスの探求にも本格的に取り組まれます。個人のパーパスとチームのパーパスを高らかに共鳴させながら、日本たばこ産業社員の皆様が成長支援チームとともに成長されていくことを、私達も期待してやみません。

この度は、貴重な皆様のお取り組みにご一緒させていただきましたことを心より感謝申し上げます。