三井物産株式会社 多様なプロの力を結集し、グループ内外の新たな価値を創造する

三井物産株式会社 多様なプロの力を結集し、グループ内外の新たな価値を創造する

三井物産株式会社 コーポレートディベロップメント本部

三井物産株式会社 コーポレートディベロップメント本部

話し手
三井物産株式会社コーポレートディベロップメント本部
不動産事業部第一事業室 室長 佐藤耕一様(タスクフォースリーダー)
商品市場部LME営業室 三谷瑠莉様(タスクフォースメンバー)
人事総務室 兼 戦略企画室 片山創詩様(事務局)
聞き手
アイディール・リーダーズ株式会社

ご依頼の背景

金融・不動産・物流といった三井物産株式会社の主軸の1つとなる産業において、それぞれのスペシャリストが集まった複合組織であるコーポレートディベロップメント本部(CD本部)。事業運営を通して自ら利益を出すことを求められながら、会社全体に対する機能貢献の役割も担っている特殊な立場にあります。多岐にわたる専門分野を抱えるがゆえ、本部としての一体感を醸成しづらい環境下で、1つの部門に集約された意味をパーパス策定のプロセスを通して再認識したいと動き出されたタイミングで、アイディール・リーダーズに「パーパス策定プログラム」のご依頼をいただきました。

どのような背景や経緯でCD本部としてのパーパス策定に動き出されたのでしょうか?期待していた効果についても併せて教えてください。

統合された組織における社員のエンゲージメント向上・コミュニケーション活性化を狙いパーパス策定を決断。会社理念に加えて本部独自の指針を持つという新しい挑戦へ。

片山

我々CD本部は、いくつかの部署が統合され、各分野のプロフェッショナルが集った特殊な組織であるがゆえに、歴史的に横の繋がりが薄く、本部としての一体感を醸成しにくい環境にありました。本部長自ら様々な本部員の声を聞く中で、改めて本部として目指す北極星を持つ必要があると感じ、本部長が以前セミナーでお話を聞いたことのあった丹羽さんにご相談させていただいた次第です。自分自身「パーパスとは何か」から始めたものの、皆さんからお話を聞く中で、本部共通のパーパスを持つことで、社員のエンゲージメント向上やコミュニケーション活性化に寄与できるのではと考えるようになり、策定に向けて本格的に動き始めました。丹羽さんにお声掛けして以降は、スピードも意識しながら、自力でできるところとアイディール・リーダーズにお願いするところとを分けて、効率的にプロジェクトを進めていきました。

吉田

会社全体ではなく、本部単位でオリジナルのパーパスを策定するという動きはまだ珍しいと捉えられがちですが、その点に関しては、当初どのような感想をお持ちでしたか?

片山

ビジネスが多岐に渡る総合商社という特性上、本部ごとにカラーが分かれているので、個人的にはそれぞれで座標を持つということ自体に違和感はなく、会社全体としてのMVVを前提とした上でなら問題ないと思っていました。ただ、周囲の反応は様々でした。事業部ごとのObjectiveは既に持っていたので、別枠・別単位で新しいパーパスを持つべきなのかと疑問に思う人も一定数いたのは事実です。

三谷

CD本部は複数の事業部が統合されてできた組織なので、話を初めて聞いた時は、共通したパーパスを見つけられるのか、うまく終着できるのかという不安が大きかったです。プロセスを踏むごとに、各事業部が根底で近い価値観を持っていることがわかり、1つの共通した指標を見つけることで、このCD本部が存在している本当の意味を理解できたので、参加できてよかったと思っています。

佐藤

私の場合、「パーパスって何?」が最初の感想でした。Objectiveには馴染みがありましたが、パーパスについては、当初イメージがぼんやりとしていた気がします。会社としてのMVVがある中で、本部としてのそれをどう棲み分けさせるのか、ゴールとして何がベストなのか見当もつきませんでしたし、複雑な組織の歴史や構成上、本部員全員が共感できるものに仕上げられるのかという不安が当初は大きかったです。一方で、コミュニケーションが増え横の繋がりが広がることで、各部間に潜在化していた溝が埋まっていくことに期待していました。

自力でさまざまなプロジェクトを実施していく推進力のある御社が、アイディール・リーダーズにパーパス策定をご依頼いただいたのはどのような理由からでしょうか? プロジェクトを通して感じられた弊社の特徴があればぜひ教えてください。

「自分たちの強みである自主性や推進力を活かしながら、部分的にプロの力を借りる」を実現できるベストパートナー。攻めと守りのバランスを熟知している安心感が決め手に。

片山

パーパス策定にあたり、本筋から逸れた表現になってしまったり、抽象度の高い内容になってしまったりすることを懸念していました。事務局としては、組織にとって基盤となる大切なものだからこそ、多少のコストと時間をかけてでも、プロの力を借りて丁寧につくりあげるべきだと考えていました。外部に依頼までする必要があるのか社内で議論はありましたが、パーパスの完成度とプロジェクトのプロセスを振り返ると、依頼して正解だったと個人的には思っています。アイディール・リーダーズを選んだのは、個別事情を理解してくれるパートナーに伴走して欲しかったからです。目的やゴール感、状況についての理解度が高く、プロジェクトの設計を都度フレキシブルに対応してもらえることに信頼を寄せていました。また、こちら側のオーダーに忖度しすぎなかったのも高評価でした。策定プロセスにおいて、本当に必要なものを省く設計にはしないし、逆にスリム化できるところには手入れをする。攻めと守りのバランスをよく理解されているので、安心して依頼できましたね。

吉田

そのようなご評価を頂けて大変嬉しいです。貴社に関しては、タスクフォース主体でプロジェクトを進める力を十分にお持ちだったので、私たちとしても伴走者としての役割がいつも以上に強かったと感じています。例えば、今回皆さんにお任せした幹部インタビューや部内ワークショップは、私たち主体でご依頼をいただくことも多くあります。ですが、そもそもこういったプロジェクトでは「社内に根付かせて行動を変える」ことがゴールなので、できる限り実施主体はお客様にお願いしたいと思っています。ですので、今回の皆さんのようにタスクフォースメンバーが中心になって推進される姿は、最終的なゴールに照らしても理想に近い形でした。

佐藤

道筋となる盤石な設計を用意していただいていたので、私たちにとっても非常に推進しやすかったです。明確なゴールがあれば、それに向かってプロアクティブに進んでいける熱量を当社社員はみんな持っています。今回はそのポテンシャルを十分に活かせたと感じています。そういった私たちらしさと、個人パーパス策定や部内ワークショップ、タスクフォース以外の社員に向けたアンケート調査といった私たちに合った設計が掛け合わさった結果、一人ひとりの意見を吸い上げてもらえているという意識を実感できたようで、今回のパーパスに腹落ちしている人は多い印象です。

三谷

プロジェクトを振り返ると、前段としてチームビルディング、マイパーパスの検討や共有などが設定されていたので、段階的にメンバー間の相互理解が深まり、当初不安視していた緊張感を持たずに本丸のパーパス策定のフェーズに移れたことが個人的にはありがたかったです。また、若手だけのチーム編成で行き詰まってしまった時、アイディール・リーダーズが投げかけてくださった「問い」が突破口となり、救われました。私たちの自主性を重んじて、困った時には手を差し伸べてくれる、ありがたい存在でした。

吉田

パーパスの検討に向けた議論の設計ももちろん大切ですが、相互理解が不十分なままでは効果的な議論ができません。今回のプロジェクトでは「本部の一体感醸成、横のつながり作り」も大切なテーマでしたので、外せないポイントとしてご提案させていただきました。

片山

推進力は私たちの強みの一つですが、自分たちだけで進めていたら大事なプロセスを省略してしまっていた可能性もあります。「お互いを知る」フェーズもその一例です。この前段こそが今回のプロジェクトの肝だったと思うので、提案していただけてよかったです。また、私自身は物事をテンポ良く決めていきたいタイプなので議論の区切りに迷うことがあったのですが、そのような場面で、「今日はここまで話し合えれば十分」と按配を教えていただけたのもありがたかったですね。

「多様なプロの力を結集し、グループ内外の新たな価値を創造する」というパーパスに込めた想い、気に入っている点、苦労したことについて教えてください。

自分たちらしい表現を求めて、多様なアイデアを寄せ集めた先にあった答えは、意外にも1つだった。

佐藤

「本部のパーパスをつくる」こと自体が、やはり易しくはありませんでした。全員が納得できるものにするために抽象度を上げれば上げるほど、私たちらしいものからは遠ざかってしまう。一方で、具体的にしすぎると一部の共感しか生まれない。最終的な落としどころの判断が難しかったですが、タスクフォースに様々な職種・バックグラウンドのメンバーが含まれていたことで、幅広い視点で意見交換ができ、バランスの良い表現に落ち着いたと思います。

三谷

最後の段階で3つの案に絞り検討したのですが、伝えたい本筋は同じでも、「てにをは」のレベルでの変化で意味が変わったり、ある語彙に対して解釈が人それぞれだったりと、細部における方向性を合致させるのに苦労しました。そのような苦労を乗り越えたことで、周囲からは、完成したパーパスへ共感の声が多く寄せられています。これは、各事業部で行ったワークショップやインタビューにて社員一人ひとりの個人パーパスをしっかりと汲み取り、反映したことの証明として受け止めています。事務局とタスクフォースメンバーだけで策定したものだったら、他の社員にとっては、蚊帳の外にいる感覚になってしまった可能性もあるので、全員にとって自分ごと化できるプロセスを踏んでよかったと心から思っています。

吉田

お二人が仰る通り、話し合いのプロセスでは苦労されている様子も見受けられましたが、それは内容が精緻な域に達していたゆえだと思います。考える力や思考の集中力が備わっているからこその発展的な壁にぶつかっていた印象です。

佐藤

建設的な議論は、一人ひとりが躊躇せず発した意見が積み重なることで成り立ちます。「臆せずに違和感を指摘・質問できる」当社社員の特徴が、パーパス策定のプロセスにおいて、ポジティブに作用していると感じる場面が多々ありました。

吉田

片山さんは、事務局側の視点で気づかれたことは何かありますか?

片山

いろいろな側面で多様性が大事と言われている昨今、今回のプロジェクトは、その真骨頂である「考え方の多様性」を体現できたいい例になったと感じています。当初は、多様性を重んじるがあまりアイデアが拡散してしまうのではと懸念していましたが、建設的な議論を経て、うまくすり合わせ、まとめることができました。今回策定したパーパスや完成に至るまでのプロセスは、一人ひとりが考えているアイデアを持ち寄ってできた成果物そして体験として、今後もいろいろな場面で参考になっていくと思います。

吉田

手早く結論に導くために、少数派を排除した設計になってしまうことも少なくない中、御社では、強みでもある多様性を前提としたプロセスを大事にされていましたね。そのため意見が拡散するのではという懸念もありましたが、意外にもタスクフォース内での議論の結果同じ方向性でほぼ合致したのが印象的でした。

佐藤

そうですね。そのため本部員の皆さんに広く意見を募るアンケートでは、我々タスクフォース内でまとまったパーパス案について表現のバリエーションを持たせることにしました。最終的に表現の細部にわたる意見まで吸い上げることができたので良かったと思っています。

丹羽

表現のバリエーションについて意思を問うたことでタスクフォース以外の皆さんを巻き込めたので、アンケートも効果的だったと思います。尖ったものも選べる中で、誠実でストレートな表現に票の大半が集まったのは、事業部の皆さんの考え方や体質が反映された結果ですね。

佐藤

プロのコピーライターにお願いすれば、もっと洗練されたものに仕上がったのかもしれませんが、今回は自分たちで全てのプロセスを踏んだことで、自分たちらしいパーパスを策定することができました。例えば、「新しい価値を創造する」という部分。「新たな変革を導く」などよりシャープな言葉で表現することもできましたが、様々な業務に携わる本部員全員が自分ごととして捉えられるように柔らかな複層的な意味を持つ表現を追求した結果、このような形になりました。全てのプロセスを自分たちでやり遂げたからこそ、全員が共感しやすい実直で真っ直ぐなパーパスを生み出せたのだと思っています。

今回のパーパス策定のプロセスを通して生まれた本部内での変化や、得た成果は何かありましたか?

ハイレベルな議論の積み重ねが、横の繋がりの強化に貢献。共通のパーパスをシェアする仲間として、一体感を持って働ける雰囲気に。

片山

まだ策定し終えたばかりの段階ですが、今後、大事なタイミングでメッセージを伝える時、新しいパーパスが柱となることで発信の内容や受け止め方に変化が現れてくると思います。また、副次的なゴールとして設定していた本部内の横の繋がりの強化が、日々の業務や一体感醸成に活きてきています。実際に、本部内で会話のきっかけになっている場面によく遭遇します。

三谷

私の中でも早速変化が起こっています。小さいことかもしれませんが、これまで接点がなかった本部内のメンバーと、策定のプロセスを通して気軽に挨拶できる関係性になりました。本部全体を見渡しても、風通しの良い環境に少しずつ変わってきていることを実感し、嬉しく思います。

吉田

共通体験・共通見解・共通言語を持つことで、コミュニティの一体感は広がっていくと言われています。CD本部の皆さんも、今回のプロジェクトで同じプロセスを踏んできた仲間として、より一層絆が深まっていくことが期待できますね。

佐藤

個人的には、思考の質・プロセスに徐々に変化が現れています。これまでは、足りない部分を必要なプロの力で「補う」という考え方が根付いていましたが、新しいパーパスの中で、『多様なプロの力を「結集」し』というフレーズが加わったことで、CD本部が持つ幅広い専門性を活かすことをアプローチの段階で意識するようになりました。つまり、多様なプロの力を結集することを常に念頭に置いて、能動的に行動を選択するようになってきていると感じています。

三谷

今回策定したパーパスは、本部内での指標としてだけでなく、個人目標レベルでも役立っていくと思います。上長との1on1でも、共通で認識している軸があることで、目線合わせがしやすくなると期待しています。

今回策定されたパーパスを活かして、今後取り組んでいく予定は何かありますか?

会社を牽引する存在として、社内外問わずインパクトを与えられるよう、個人・組織のパーパスへの感度を高め続けていきたい。

片山

組織として大切にしていきたいのは、個人の志や価値観なので、マイパーパスについてのワークショップはこれからも定期的に実施する予定です。異なる職種やジェネレーションなど、普段は接点のない組み合わせでお互いのパーパスについて語り合ってもらうといった工夫も凝らしながら、いつでも誰にでも参加してもらえる有意義なプログラムにできればと考えています。社内発信も積極的にしていきたいです。また、本部のパーパスを浸透させるために、オンライン会議用の背景やメールの署名、本部のオリジナルステッカーに入れ込む施策の実現に向けても、少しずつ動き出しています。全員にとって、パーパスを身近に感じられるよう、引き続きアイデアを練っていきたいと思います。

佐藤

今後はますます、普段の会話の中でパーパスが語られ、行動指針として根付いていくのだと思います。とはいえ内的または外的要因によって、いつかパーパスを変えるべき時が来るはずです。その見直しのタイミングを誰かが自ら気付き、先陣を切って改変に名乗り出るといった循環ができた時、それが新しい価値として我々の財産となるのだと思います。これからが楽しみです。

吉田

パーパスを日々目にして頭の片隅にある状態にしておけば、環境変化に伴うズレにも一早く気付けますよね。そのような意味でも、今御社で取り組もうと計画されていることは大変有効だと感じます。会社の要となっているCD本部が今回の取り組みを広げていくことで、会社全体にとってもいい影響を巻き起こせるのではないでしょうか。

片山

そうですね。我々のような変革を牽引していくべき立場の組織がパーパス・ドリブンな運営を推進していくことで、社内に限らず、取引会社様などにもインパクトがあると考えています。実際に問い合わせも来ていて、解決したい課題は組織ごとに異なるとはいえ、パーパス策定のニーズや興味・関心は、最近では特に高まっていると実感しています。

三井物産株式会社コーポレートディベロップメント本部のみなさま、お忙しい中ありがとうございました!

担当コンサルタントからのコメント

今回のプロジェクトで印象的だったのは、なんといっても参加者の皆様の推進力と思考の質の高さでした。そういった風土を最大限に発揮いただき、今回は理想的な形でプロジェクトを進められたと感じております。
私たちがコンサルタントとして日々意識しているのは、「間接介入」という考え方です。
コンサルタントがご支援できるのはお客様の日々の活動の中のほんの一部であり、我々のご支援が終了したあと、いかにお客様自身で取り組みを継続できるかが鍵です。そのため、プロジェクト設計においてもお客様社内でできることは可能な限りお任せし、我々が担当する範囲は必要最小限にとどめます。ワークショップ内でも考え方や進め方をお伝えしますが、「考える主体はあくまでもお客様」という間接的な役割に徹することで、我々の手を離れた後も組織内での再現性を持っていただくということを大切にしています

今回はこのような我々の意図にご共感いただき、ワークショップ参加者の皆様にはかなりのタスクをお願いすることになりました。その結果、「このパーパスの文言を見て、〇〇の職種の方も自分ごと化できるのか」「〇〇という文言を見て、××という意味だと捉えられては本末転倒では」といった、最終的な目的を見据えた議論が参加者の皆様から自然発生的に生まれていました。このような議論があったからこそ、思考の質への変化をもたらすきっかけになったのだと感じています。

今回のプロジェクトを通じ、三井物産CD本部の皆様からは、「自分たちの組織は、自分たちが良くしていくのだ」という、お一人お一人の組織に対する誇りや責任感、そして、本質を捉えて考え抜く力を肌で感じさせていただきました。
今後も「コーポレートディベロップメント」という非常に重要な役割を担われるCD本部の皆様のご発展を、心よりお祈りいたします。

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