パナソニックITS株式会社 パーパス刷新と自分ごと化ワークショップで、社員の熱量・主体性・挑戦心を最大化する

パーパス刷新と自分ごと化ワークショップで、
社員の熱量・主体性・挑戦心を最大化する

パナソニックITS株式会社

パナソニックITS株式会社

2000年4月設立。「人と社会をつなぐ」という経営スローガンのもと、カーライフの質の向上をコアに4つの重点領域を定めて多彩なモビリティサービスを展開。各領域でグローバル水準の最先端技術獲得や、商品開発力強化に取り組み、次世代モビリティサービスの研究・開発を推進。高品質の技術、そして、従業員平均年齢30歳代という若さが生み出す勢いとチャレンジ精神を武器に、お客様にとっての付加価値創造を目指す。

話し手
パナソニックITS株式会社開発センター技術1部 部長 寺本裕樹様
管理統括部人事部人事課 藤原健一郎様
聞き手
アイディール・リーダーズ株式会社

ご依頼の背景

パナソニックホールディングス株式会社のグループ会社として、「人と社会をつなぐ」という経営スローガンのもと、多彩なモビリティサービスを展開しているパナソニックITS株式会社。会社全体の雰囲気が上昇志向へと変わりつつある今、社員の熱量や自主性に応える形で、企業パーパスを策定されました。

パーパス策定に取り組んだ後、共鳴活動において「個人パーパスとのつながりを見出すワークショップ」を実施し、当該ワークショップを社内展開するための「ファシリテーターの育成」を実施しました。今回のインタビューでは、パーパス策定・共鳴活動の一連のプロセスの詳細や、取り組みを通して得られた気づきについてお話いただきました。

設立20年を迎えたタイミングで、新しいパーパスの策定に至った背景や経緯を教えてください。

会社をさらに元気にするための重要なエレメントとして、熱意溢れる社員を象徴するようなメッセージを改めて発信することに。

寺本

5年ほど前から「人」にフォーカスする経営に舵を切り、グループ会社からも注目される存在になってきました。そのような背景に合わせて、それ以前に策定された存在意義を見直すタイミングでは?という議論が生まれたのがきっかけです。経営陣にも、パーパスが会社にとって非常に重要なパーツであるという認識があったので、刷新に向けて動き出すことになりました。

井上

元々掲げていた存在意義があったにも関わらず、どのようなポイントでパーパスを策定するという結論に至ったのでしょうか。

寺本

旧版では、親会社であるパナソニックオートモーティブシステムズ社の競争優位性の源泉になるという主旨のパーパスになっていました。もちろん、それは間違っていないし今でも協力関係はあって当然ですが、我々も中核に食い込んでいく存在であるべきだという意見が多かったんです。親会社に貢献することのみを価値とするのではなく、互いに不可欠な存在として、高め合うのが理想。当社には、若くて勢いのある社員が増えてきているのだから、彼らにとって誇らしいと思えるメッセージを用意しようという話になりました。2022年運営方針発表を期限とし、プロジェクトをスタート。タスクフォースは40代の若手管理職を中心にメンバーを構成しました。

吉田

パーパスは長期的な未来を見据えて社会への提供価値を表すものなので、その未来を生きていく当事者にプロジェクトに入っていただいたということが、策定において鍵となったかもしれませんね。そのほかに、パーパスを策定するプロセスにおいてポイントだったと思う点はどのようなことがありましたか?

寺本

インプットに時間をかけたことです。実はタスクフォースメンバーも、当初はパーパスの本質理解が曖昧だったので、情報収集から始めました。夏の1ヶ月間を使って「パーパスとは?」「なぜ必要なのか?」「流行りの背景は?」など、基本的な情報を書籍やセミナーを通して頭に叩き込んだのを覚えています。その際に、丹羽さん著の『パーパス・マネジメントー社員の幸せを大切にする経営―』も参考になりましたし、アイディール・リーダーズ主催のセミナーにも参加しました。この情報収集期間があったからこそ、タスクフォースンバーの中で、パーパスに対する共通認識が仕上がったのだと思います。

最終的に「モビリティ技術ですべての人を笑顔にする」というパーパスに集約されましたが、言語化する上でどのような議論があり、どのように終着させましたか。

個人のパーパスと会社のパーパスとの接点を見つける、つまりパーパスを「自分ごと化」しやすいように、一人ひとりがそれぞれの解釈で共感でき、やりがいに繋げられる表現に。

藤原

どういうベクトルで会社を引き上げていきたいか、会社が抱える課題は何なのか、社会のどんな部分とギャップがあるのかなど、情報を集めた上で言語化に入りました。チーム内では、アイデアが次々に飛び交っていましたが、どれも洗練され核心をついたものだったので、取捨選択には骨を折りました。最終的には、一人ひとりがそれぞれの解釈で共感できるような表現にまとめました。

吉田

それぞれの解釈で共感できると、自分ごと化しやすくなりパーパスの共鳴は広がりやすくなりますね。社員全員が「このパーパスには自分のことが含まれている」と感じられることは非常に重要です。価値提供の対象「誰に」の部分で、対象者の範囲が議論になることが多いですが、「すべての人を笑顔にする」と幅広い表現を選ばれたのもそのような意図からでしょうか?

藤原

そうです。私たちが提供している商品やサービスに直接関わる人だけでなく、社会全体への広がりを感じながら使命を全うすることこそ我々の価値である、さらにその「すべての人」は個々が考える「すべての人」であるべきだという考えで一致しました。例えば、私の中の「すべての人」には、室蘭で展開しているMaaS事業※で関わる地域の方々も含まれています。目の前のお客様だけでなく、本来なら全く関わりを持たなかったであろう特定のコミュニティの中で、日々の生活の支援ができていることが誇り、仕事のやりがいに繋がっています。こんな感じで、各個人が自分にとっての「すべての人」をイメージしながら仕事に向き合ってくれたらいいなという想いで、この言葉を選びました。

寺本

策定の過程に全社員が参加できなかった分、過去に実施した全社員アンケート結果を参考に、メッセージの方向性を調整していきました。そういう意味で、全員の意見が反映されたパーパスになっていると思います。個人的にも、「これからもいろいろ仕掛けていきたい」という心意気が伝わる表現に仕上がったことに満足しています。

※)室蘭MaaSプロジェクト 移動に困らない地域社会の創造を目指し、北海道室蘭市と包括連携協定を結び行っているMaaS(Mobility as a Service)事業化に向けた活動。

パーパス策定を自社内で対応できる主体性を持った御社が、共鳴のフェーズでアイディール・リーダーズにご依頼いただいたのはどういった理由からでしょうか。

「パーパスは、各個人が自分ごと化できて初めて機能する」という考え方に強く共感。最初に小規模で依頼したワークショップでは、期待を超えた前向きな反応が相次いだ。

寺本

策定のプロセスを丁寧に踏んできましたが、いざ社員一人ひとりが自分ごと化し愛着を持てるものにしていくための手法が当初はわかりませんでした。他社事例にも、私たちに当てはまるものはなかった。そこで、無料セミナーで知ったアイディール・リーダーズの共鳴活動のやり方を参考にしようと思いました。依頼に至った理由としては主に3点あります。
まずは、パーパスがコミュニティと共鳴するプロセスや根本的な考え方に共感したからです。一人ひとりがいかに自分ごと化できるかという面を重要視しているという点で、好印象でした。
2つ目は、パーパスを軸に会社をより良くしたいと奮闘している弊社に対して、真摯かつ誠実に向き合っていると強く感じたからです。本格的にご依頼する前に半年ほど相談を重ねましたが、どのコンサルタントの方も、専門性の高さと熱い想いの両者を備えており、パートナーとして信頼できました。
そして最後の決め手は、最初に小規模でご依頼してみたワークショップ参加者からの後押しですね。終了後のアンケートでは、前向きなコメントが相次ぎました。私だけじゃなく、いろいろな層の社員にとって満足度が高かったということがわかり、依頼に踏み切りました。

藤原

私もその参加者の一人です。元々、自分自身や会社を見つめ直すという活動は、無理にストーリーを筋立てる印象があったのですが、考えが180度変わりました。ワークショップを通して「働く人の生きがいを創る」という個人パーパスを持ってからは、これに沿って働く自分の姿を誇りに思えますし、ふとした時に立ち返る拠り所ができたという安心感があります。パーパスは、働く上でのネガティブな要因からの脱却、そしてポジティブな気持ちへの切り替えをサポートする材料として、有効に機能することを日々実感しています。自分自身を幼少期から客観的に振り返って言語化するというプロセス自体に意味がありましたし、会社パーパスとの共通項を見つけることが、「幸せに働く」に繋がるということを知れた貴重な機会でした。

働き方が良い方向へ変化したという声もある一方で、会社パーパスとの接続を見出してもらうプロセス自体を恣意的だと感じる方もいます。事務局として、そのあたりの手応えはどのように感じられましたか?

結果として、自分のパーパスと会社パーパス両方の理解があって意味があるというコメントが多く寄せられた。社員の関心の高さとの相乗効果を、今後も期待できると感じる。

寺本

会社パーパスとの共通点を見出すか否かに関わらず、自分自身のことを「個人のパーパス」という観点から多角的に見つめ直してほしいという意図が私たち事務局側にはありました。そして、先の藤原の発言からもわかるように、その想いが受講者側にも届いていた感触があります。実施後のアンケートからは、会社パーパスは本質を理解し自分ごと化することで初めて意味を成すと、ワークショップでの体験を通して実感できた人が多かったようです。各組織の課長に対して実施したファシリテーター育成のワークショップは、直前に発信したにもかかわらず100%の参加率でした。パーパスに向き合うことを軽んじているならば、忙しい中スケジュールを調整してまでワークショップに参加することはないと思うので、少なくとも弊社の課長たちは、パーパスについて高い意識と期待感を持っているのだと感じました。

吉田

確かに、多忙な管理職クラスの方は、このようなワークショップに前向きな方ばかりではありません。そんな中、御社の皆様の高い意識、期待感の背景にあるものについて、心当たりはありますか?

寺本

あくまで仮説ですが、パーパスが刷新され、「私たち」を主語とする能動的な指針へ生まれ変わったことが要因の一つかもしれません。新しいパーパスが共有され、会社自体への期待の高まりが参加率に影響している可能性は高いと思います。ちなみに、参加率だけでなく、事後アンケートの回収率も100%でした。記述形式での回答が多かったにもかかわらずこれだけの反応があったのは事務局としても驚いています。

今後、パーパスを含めた会社理念について、組織全体に対して実施していく予定の活動はありますか?

「ITS Farm」のように、個人や会社のパーパスに紐づいたアクションが次々に生まれるような仕組みづくりを。

寺本

風化させないことはもちろん、具体的なアクションを後押しする仕組みをつくっていきたいです。自社のパーパスに対する愛着をさらに拡大し、個々人の意識にも繋げていければと考えています。社員間での事例共有などを積極的に行い、パーパスを軸とした行動変化を波及させていくことが目先の目標です。行動の段階では、組織・チーム・個人ごとに取り組みの粒度も多様化すると思いますが、弊社では、「人と人との繋がりを増やし笑顔を生むこと」を主目的として、いくつか実施している仕掛けのひとつとして「ITS Farm(畑プロジェクト)」というものを実施しています。在宅ワークが主流となった今、必要最低限のコミュニケーションしか存在しなくなった社会に危機感を感じているからです。雑談や交流が始まる「畑」という新しい場を用意し、一人でも多くの人の組織に対する安心感や、仕事へのモチベーション維持に繋がればと思っています。拡大するにつれ文脈も多少変わってきていますが、このプロジェクトは、パーパスを行動に落とし込んだ事例になっていると自負しています。

井上

パーパス策定までのプロセスの質が高くても、共鳴、まして行動の段階までやり遂げられる会社は多くありません。冒頭でご紹介いただいた通り、社員の皆さんの熱意や自主性が反映されている証拠だと思います。今後も多種多様なアクションが生まれそうですね。

寺本

確かに、社員のボルテージの高さは弊社の特徴の一つです。これからも各所で楽しく有意義な企画が次々と生まれると思います。会社のパーパスを自分ごと化し愛着を持つ人が増えれば行動の輪は広がっていくはずなので、このフェーズで支援ができるよう私にできることをやっていきたいです。

藤原

私は、社員が会社パーパスを自分ごと化するだけでなく、会社が個々人のパーパスを理解するための仕組みづくりをしたいです。それぞれの「何のために働いているのか」「どんな価値観を持っているのか」といった情報を会社側が把握しておくことで生産性向上や離職率低下施策も考えやすくなります。各個人の特性を活かした働き方や活動を後押ししやすくなるとも思っています。これから、実現するための具体的なアクションを検討していくつもりです。

御社では、パーパス策定から共鳴活動まで濃密に対応されてきましたが、このような姿勢ややり方をどのような企業におすすめしたいですか?

サービスや会社に歴史のある企業こそ、「何のために働くのか」に対するぶれない軸、安心して働ける環境を整える材料として、パーパスに真剣に向き合ってほしい。

寺本

老舗のように、不変的な製品やサービスを提供し続けていることを価値としている会社におすすめしたいです。主観ですが、そのような会社で働く人たちは、「何のために働くのか」「ずっとこの商品を作ってて良いんだっけ?」という部分で迷子になることがある気がします。かく言う私たちも、世の中の技術革新に追従しつつ、カーマルチメディアというコアの商材を長きにわたって展開しています。老舗と定義されてもおかしくありませんが、時代の流れに合わせて「この仕事は何のためにやっているのか」という目的をアップデートし続けることを意識しています。サービスや商品の多角化の必要を感じている企業は特に、会社のパーパスを見直すところから丁寧に対応してみるのが良いと思います。つい小手先の事業内容から手を加えようとしてしまいますが、会社としての存在意義を明確にした上でリスタートすることが経営の未来を明るくすると思います。軸がない、共有できていない等の場合は、その組織で働く人が振り回されてしまうリスクがあります。パーパスを説得の基盤にすることで、みんなが安心して仕事に向き合える環境を築けるのではないでしょうか。

藤原

人事など間接部門では、お客様の役に立ったという実感が感じにくい側面もあります。しかし、自分自身と会社パーパスに愛着を持てている今、仕事に対するモチベーションを高く維持でき、やりがいを感じながら働けています。私のように、エンドユーザーの感触を知れる機会が少ない人や組織にこそ、丁寧にパーパスに向き合うことで、意識の変化を実感してほしいです。

パナソニックITS株式会社のみなさま、ありがとうございました!

担当コンサルタント コメント

今回は、パーパス策定の前段階からご相談を頂き、定期的にコミュニケーションを取りながら共鳴部分でのご支援をさせていただきました。

本プロジェクトを通じ感じたパナソニックITSさまの素晴らしいところは、社員お一人お一人が変化を前向きに捉え、行動を変えていくことに躊躇が少ない組織であること。組織開発コンサルタントとして、このような組織づくりに欠かせない要素の分解は大変興味深いものでしたが、今回はその一因に「社員がワクワクするパーパス」があったのではという結論に至りました。

このワクワク感は、ワークショップの参加率や会全体を通じた活気にも強く表れていたと感じます。ワークショップの最後には、「部下の個人パーパスをいかに扱うのが良いのか」、「その際の注意点は?」等、実践を見据えたご質問を多数頂きました。ただでさえ忙しい管理職の方にファシリテーターとしての活動をお願いすることは難しいと考えられる企業様は少なくありません。そんな中での今回のワークショップは、パーパス刷新後、自社の主体性が上がっていくことへの期待と、管理職の方々の会社に対する信頼の厚さが表れた場であったと理解しております。

多くの組織が目指すべき姿を体現されている企業様であると感じており、今後もパーパス実現に貢献させていただくことができれば、これほど嬉しいことはありません。これからも、パナソニックITSさまの発展をお祈りいたします。

アイディール・リーダーズ株式会社 吉田梨真

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