東急建設株式会社「建てる」を超え、未来を生みだす

「建てる」を超え、未来を生みだす

東急建設株式会社

東急建設株式会社

https://www.tokyu-cnst.co.jp/

1946年の創業以来、暮らしに密着した幅広い事業を営む東急グループの一員として、
「生活者に安心で快適な生活環境を提供すること」をテーマとし、土木事業と建築事業
を中心に展開。社会課題の解決のため、不動産事業、国際事業等を加え、競争力拡大・
収益多様化に積極的に取り組む。存在理念(パーパス)は「私たちは安心で快適な生活
環境づくりを通じて一人ひとりの夢を実現します」。「脱炭素、廃棄物ゼロ、防災・減災」
を3つの提供価値とし、次世代に向けたサステナブルな社会の実現を目指し成長の歩み
を止めない建設業界のリーディングカンパニー。

話し手
東急建設株式会社代表取締役社長 寺田光宏様
経営戦略本部経営企画部長 小西雅和様
聞き手
アイディール・リーダーズ株式会社

ご依頼の背景

建設業界を牽引する立場として、お客様はもちろん、社会全体が抱える課題解決のために挑戦を続ける東急建設株式会社。10年ごとに議論の機会を設けビジョンを言語化するものの、策定のプロセスに参加していない人も多く、共感を欠き、徐々にその意味が薄まってしまっている状況を課題視されていました。「全従業員が同じ方向に向いて一枚岩となっている状態」を目指し、動き始めた2030年へ向けてのビジョン策定。意味を理解するだけでなく実践へと移していくために、「共感を生むビジョンづくり」の必要性を感じられていたタイミングで、アイディール・リーダーズにご依頼をいただきました。

この度は、代表取締役社長 寺田様と、2030年に向けたビジョン作りの中核を担われていた小西様にインタビューを実施させていただき、経緯や背景、ご感想についてお伺いいたしました。

ビジョン策定時の課題感やきっかけ、具体的な動きについて教えてください。

全従業員が同じ方向を目指せるように、「全員が共感し自分事として捉えられるビジョン」と「実現のための具体的な戦略」を同時並行で検討。

寺田

全従業員が同じ方向に向いている状態を作り上げたいという私たち経営陣の想いが、ビジョン策定のきっかけです。また、ビジョンは、進む先に迷った場合の判断軸にもなりますので、早急に全員の共通認識として策定する必要があるなと。社員一人ひとりが自分事化して考え、さらにその実現のために走り出せるように、ビジョンとセットで具体的な戦略も用意することが重要だと考えました。前ビジョン(ビジョン2020)策定時、弊社は不確実で大きな外部環境の変化に対応して、収益多様化を目指して新しい事業にも積極的に挑戦していくことを目標として掲げました。そこから10年経ったのですが、VISION2030―特に収益多様化については大きく前進できていないという認識でした。業績は右肩上がりだとしても、それは社会全体の経済が安定し景気が回復しつつある状態でのこと。実際は、それぞれが目の前の課題で忙しく、新たな課題に意識を向けなくなってしまっている状況があるのではないかと考えています。新たな挑戦に向き合う風潮を作るためにも、ビジョンとその実現のための戦略が我々には必要でした。

小西

寺田社長も申し上げている通り、今回こそは、「ビジョンを掲げて終わり」とならないようにしなければと思っていました。ビジョン2020策定以降を振り返ってみると、「どう実現するのかという戦略の部分が弱いことで、ビジョンの意味が年々希薄化にしていく感覚がありました。その反省を生かし、2030年に向けては、1人でも多くの共感を生み出すビジョンと戦略をセットで策定することにこだわりました。

ビジョン策定プロジェクトの進め方や、内容について教えてください。

会社の未来に熱い想いを持った幅広い年代層のメンバーが集結。
経営者から若手まで55名が一体となり、「共感」をキーワードに毎週のように意見を交わした6か月。

永井

そもそもアイディール・リーダーズにはどのような経緯でご依頼いただいたのか、当初の状況を改めて教えていただけますか。

小西

VISION2030の策定に向けて、本を読んだりセミナーに参加したりして片っ端から情報を集め、自分たちなりの答えを模索していましたが、なかなか腑に落ちるものがなく頭を抱えていました。そんな中、永井さんの本と出会い、思想に共感したのを覚えています。永井さんがたまたま個人的に参加していた経営塾の先輩だったことにもご縁を感じたため、こちらからご相談したのがお付き合いの始まりです。

永井

そうでしたね。お話を伺う中で、VISION2030は、ビジョン2020とは違うやり方で検討するということになりました。

小西

はい。VISION2030は、これからの時代を担っていく若い世代の意見も取り入れながら検討したいという社長の強い意向もあり、経営陣だけでなく幅広いメンバーにプロジェクトに参画してもらい、様々な層の声を反映していきながら進めていきました。結果として、メンバーが55名と膨大な数になってしまったのですが、これだけの人を巻き込んだことで、本来の目的である「共感をもたらすビジョン作り」を達成することができました。①経営層、②ミドル層、③20代から30代前半の若手を中心としたチャレンジメンバーの三層に分かれて検討を進めつつ、それぞれの意見を吸い取る形で全ての層が納得できるビジョンが仕上がりました。全員で会社の未来を考える貴重な機会となりました。

永井

検討の過程で、プロのコピーライターの方にビジョンの文言の最終化を依頼するか、自分たちで言葉を決めるかどうかが議論になりましたね。

小西

そうですね。一番の懸念点は、我々の議論の内容からかけ離れた言葉になってしまうことでしたが、最終的にはプロの方にお願いして出来上がりには満足しています。プロジェクトのスタート時点から検討の場に同席していただくことによって、私たちらしさを存分に吸収したビジョンにしていただけました。

寺田

議論の中身が、一字一句に盛り込まれているので、お願いして正解だったと思っています。個人的にビジョンに反映していただきたかった「感動を提供したい」という想いが、文章の中で存分に輝いているのを初めて見たときは、感極まりました。いつ見ても感情が高ぶりますね。約5か月間、何十時間もかけて議論したみんなのアイデアが形になったのだと実感して、嬉しくなります。プロジェクトメンバーが多かったので、上手くまとまるのか不安ではあったのですが、結果的に満足度の高い成果物を生み出せてよかったです。

永井

私たちは、今回のように人数が多い場合は特に、「議論の落とし所を決めないこと」を意識してアプローチするようにしています。決めてしまうと、終着点を前提に議論が進んでしまうので、検討の意味があまりないんですよね。

小西

そうですね。毎回のワークショップでは、全員が自由に発言できる環境を実現できました。アイディール・リーダーズは、画一的な型を持たずに柔軟に対応してくれるので、とても助かりました。やや難しい内容でも、相談すれば必ずきっかけやヒントを用意してくれます。一方的に決めつけるわけではなく、我々に任せてくれたからこそ、心から信頼でき、本音で意見を交換できたのだと思います。参加者が納得するプロセスを重要視してくれるのもよかったですね。

永井

我々が何かを授けるのではなく、多様性にあふれた参加者それぞれの想いと知見を合わせて一緒に作っていくことを心掛けました。最初は3つのグループがそれぞれ検討を進めていましたが、最終的には、経営層から若手までの全員が一体となり議論していました。

寺田

そうですね。全員で意見交換できたのも、新たな発見があってよかったです。我々経営層の考えることと、若手の意見が噛み合っていくことに、驚きと嬉しさを感じました。興味深いことに、最終的にはメンバーみんなの考えが、3つの提供価値とした「脱炭素」「廃棄物ゼロ」「防災・減災」に近しいところに行き着いたんですよね。

小西

これだけ大人数が参加している中で、同じ想いを持つ人が多く、共感が生まれるというのは、当社の強みの一つです。

寺田

今回のように、我々一人ひとりの深いところにある想いを引き出し、潜在的な考え方を見つけて広げてくれるのがアイディール・リーダーズのやり方であり特徴ですよね。大規模プロジェクトだったので、まとめるのが大変だったとは思いますが、大所帯である分、全従業員の考えや想いを限りなく多く拾いきれたはずです。その結果、全社へ共感を広げるという目的の達成に近づけています。

永井

ありがとうございます。ところで、今回のプロジェクトメンバーはどのように選抜されたのでしょうか。

小西

今回は、メンバー選抜についても従来とは違ったやり方で行いました。部門の偏りなどは最低限の調整にとどめ、それぞれが持っている「熱さ想い」を基準に選定しました。まずは情熱に溢れているミドル層に声を掛け、選ばれた彼らにチャレンジメンバーを選んでもらいました。 55名のプロジェクトメンバーは、全員熱い想いを持った期待の星です。

ビジョン策定後の「共鳴共有・浸透活動」と、それに伴う従業員やステークホルダーの変化について教えてください。

共有・浸透活動は、ビジョンを自分事化して考えるための第一歩。
今後はビジョン実現のためにやるべき事に積極的に挑戦していきたい。

小西

共有・浸透活動の目的は、VISION2030を一方的なものではなく、一人ひとりの想いを波紋のように広げていくことで「多くの従業員の「共感」に繋げることにあります。何十時間も使って議論し創り上げた弊社の2030年に向けたビジョンを、全社員に理解し共感してもらい、最終的に実践に繋げてもらうことをゴールとしています。具体的には、まず役職者との対話を行うことから始めました。対話には、経営者は一人ずつ、PJメンバーは二人ペアで臨みました。役職者の方は4名から5名が同時に参加、時間は1時間です。対話は、あくまで共感を生み出すためのきっかけづくりの場と位置づけました。こちらからは、自分自身がビジョン策定にどうかかわったのか、どんな思いを込めているのかなどを話し、ビジョンを受け止めた役職者側の思いを聞きました。3か月間で一巡しましたが、役職者からは、ポジティブな反応が数多く聞かれました。役職者相手で緊張していた若手メンバーからも、有意義だったという声を聞いています。若手の意見を否定せずに受け入れる風土があるのも新たな発見でした。これには、経営者もPJメンバーも大きな手応えを感じているところです。今は経営陣が、月に2回程度の対話を実施しています。いずれは執行役員にもビジョンの背景や意味をしっかりと理解してもらった上で、対話メンバーになっていただきたいと思っています。今期中には全従業員との対話を一巡させる予定です。、またそれで終わりではなく、その後はこうした経営陣と従業員との対話を弊社の企業文化にすべく、継続していくつもりです

寺田

重要なポイントですが、「共感」は強制するものではない。だからこそ、ビジョンに対する感想は素直に言ってもらうようにお願いをしています。もちろん、心の底から共感できる人もいるだろうし、「ちょっと違うぞ」「これはおかしい」と思う人もいるでしょう。どのような内容であれ、ビジョンに対して感想を持つこと自体が、自分事として捉えている証拠なので、とてもいいこと。対話を通して、相互コミュニケーションをとりながらビジョンについて考える時間を持てる対話は、先に述べた「全従業員が同じ方向を向いている状態を作る」ために必須の活動です。

小西

具体例を挙げると、現場の人間は課題に向き合い解決の糸口を見出すことに日々従事しているので、やはり勢いがある印象がありますね。「それはダメ」「これならいい」など、積極的に考えを伝えてくれるので、さすがだなと思います。

永井

社内へは着々とビジョンの共感が広がってきていることが私たちもとても嬉しいです。社外のステークホルダーへの影響としては何か効果を実感されていますか?

小西

投資家・株主の方々に対しては、策定したビジョンをお伝えするだけでは不足していて、実際にそのビジョンを達成するためには「どうするのか」という部分をしっかりとご説明する必要があります。長期戦略の施策を実績としてアピールできるよう、引き続き頑張っていかねばなりません。先に述べた3つの提供価値についても、KPIは設定していますがこの達成は当然のこととして捉えられるはずです。

永井

株価は順調に上がっておられるので、結果が現れ始めているのかもしれませんね。そのほかIR活動などを通して何か実感されることはありますか?

寺田

評価や反応を直接いただく場面はあまりないので明確にはわかりかねますが、現状投資家の方から一番注目されているのは資本投資政策の内容だと思います。株主視点で、安定的に高い水準の配当を出し続けていくという部分が評価されている認識です。

小西

価値創造推進室の増設、ベンチャー投資、人事制度改革、再生可能エネルギーによる電力供給(4月度以降)などについて、特に積極的に取り組んでいます。建設業界を代表する取り組みについては、これからPRしていく予定です。

永井

私も、ビジョンを実現するために、これまでにない新しい施策を矢継ぎ早に実装されている印象を持っています。

どのような組織にアイディールリーダーズのビジョンづくりをおすすめしたいですか?

本気でビジョン作りを考えている企業にはぜひオススメしたい。
エグゼクティブ・コーチングとセットで受講すれば、経営層の抜本的な意識改革にも。

小西

本気でビジョンについて検討するつもりの企業にはぜひオススメしたいです。また、ビジョン・パーパス・バリューなどの必要性に懐疑的だったり、会社全体を巻き込んだビジョン策定をしたいと考えていたりする経営陣・経営企画の方々にオススメです。特に、経営陣に対するエグゼクティブ・コーチングは、ビジョンのみならず「経営とは何か」「自分たちはリーダーとして会社のために何ができるのか」を多角的に考え直す機会になります。

寺田

それまでの自分の認知の枠組みを超えることで、自分ひとり・社内だけでは到底描けなかったビジョンを作るためのマインドセットが醸成されます。大きな外部環境の変化に対応するためにも、自分自身の認知・メンタルモデルを超えて、ワクワクするビジョンを作ることはとても重要です。多様なメンバーと時間をかけた甲斐があったと思えるビジョンができるのはとても嬉しいことなので、ぜひ多くの企業の方にも体験していただきたいです。

永井

経営層から若手層までの想いが詰まった、全社員にとって納得度の高い東急建設株式会社のビジョン。これからも対話を中心とした「共有・浸透活動」を通して社内外へと発信し続け、共感・腹落ちしてもらえるように、そして実際に実現していけるように、取り組みを続けていかれるとのことです。

東急建設株式会社のみなさま、ありがとうございました。

担当コンサルタント コメント
アイディール・リーダーズ株式会社 CEO 永井恒男

永井

今回の東急建設株式会社様のビジョン策定プログラムにおける特徴をご紹介します。

まずは、ビジョン作りだけでなく、この10年でそれをどう実現するかという戦略をセットで策定したことが大きなポイントです。我々の考えるビジョンは、「絵に描いた餅」ではなく、実現してこそ価値のあるもの。「どうなりたいか」を限りなく実現可能なものにするために、「何をすればいいか」を同時並行で明確にしました。

2つ目は、社長を含む経営陣、部長から管理職までのミドル層、20代を中心とした若手社員という3つの層に細分化しつつ、パラレルに議論を進めたこと。それぞれの層の人々が意見を交わし納得したものを要素としてビジョンに盛り込んでいるため、結果として幅広い世代の意見が反映されたものに仕上がっています。また、策定して終わりとならないよう、各階層のプロジェクト参画メンバーが主軸となり共感活動を推進しています。この取り組みが続いていけば、実践につながっていくはずです。

3つ目は、若手の参画メンバーが中心となり策定した「ムーンショット」。2050年にはどんな世界になっているか、どんなニーズが増えどんなビジネスが展開されているか…といった未来の様子を想像しながら、自分たちのあるべき姿や理想を整理し、2050年に現実していたい夢として言語化しました。未来を担う若手社員だけでの議論となりましたが、30年後の姿まで見据える機会を持てたというのは今回のハイライトの1つでしょう。

東急建設様は、「安心で快適な生活環境づくりを通じて一人ひとりの夢を実現します」という存在理念(パーパス)をお持ちで、全従業員がこの理念を自分事として捉えています。その実現のためのヒントやきっかけとして、今回のビジョン策定が実施されました。これは、パーパス経営の最たる例とも言えます。

これからも「共感活動」を続けていかれるとのことですので、東急建設の皆様が描いたビジョンが実現されるまで、引き続き応援させていただきます!

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