三菱鉛筆株式会社海外営業部  地域ごとのニーズに合わせた価値提供をするためにチームリーダーの あるべき姿を考えるワークショップ

三菱鉛筆株式会社海外営業部 
地域ごとのニーズに合わせた価値提供
をするためにチームリーダーの
あるべき姿を考えるワークショップ

三菱鉛筆株式会社

三菱鉛筆株式会社

https://www.mpuni.co.jp/

「ジェットストリーム」や「クルトガ」を始め、多くの大ヒット商品を展開する1887年創業の老舗筆記具メーカー。2022年の海外売上高比率は50%を超え、日本国内だけでなくグローバルで強い支持を得ている。「世界一の表現革新カンパニー」というありたい姿/ビジョンを掲げ、あらゆる人々の個性と創造性を解き放つための存在であり続けることを目指す。

話し手
三菱鉛筆株式会社 
上席執行役員 海外営業部長 手島様


※以下インタビュー記事内では敬称略で掲載させていただいております。
※この記事内の肩書き・役職は取材当時のものです。
聞き手
アイディール・リーダーズ株式会社

ご依頼の背景

三菱鉛筆株式会社 海外営業部では、今後さらに海外事業を成長させていくにあたり、チームリーダー層が各担当地域の顧客ニーズを把握して戦略を立案し、体制を構築してマネジメントができる状態を目指していました。

これまでは現地の代理店による販売が中心だったため、本社は代理店の要望に沿った形で業務を進めることに注力してきたのです。

目指す姿を実現するにあたっては、まず、海外営業部のチームリーダーが自らの役割を再定義することが必要でした。そこで、チームリーダーの役割を改めて考えたうえで行動指針を立て、実行していくためのワークショップを3回にわたって実施。本ワークショップを企画した海外営業部長の手島様に、取り組みの背景や内容、成果や気づきなどを伺いました。

チームリーダーのあるべき姿を考えるワークショップを実施することになった背景を教えていただけますか?

これまでの海外事業展開におけるビジネスモデルが影響し、チームリーダーがマネジメントについて深く考える機会が限られていた。海外事業のさらなる成長に向けて、リーダー層が担当地域の戦略を立案し、実行体制を構築する役割を果たすことが必要だった。

手島

当社の海外事業は近年飛躍的に成長しています。ここからさらに成長するには、各地域を担当するチームリーダーがそれぞれのニーズに沿った戦略を立て、組織のマネジメントをしていく必要がありました。

当社に限らず日本の製造業における海外事業は、かつては高品質の製品を輸出し、海外現地の代理店を介して販売するビジネスモデルで成り立っていました。日本の競争力が落ちてきた90年代以降になると、多くの企業は自前で販売会社や拠点を立ち上げ、現地のお客様のニーズを汲み取り、次の商品開発や販売網の構築に生かしてきたのです。

一方、当社は近年になり自社の海外拠点からの販売が大半を占めるようになりましたが、代理店中心の販売の時代が長く続いたため、世界各地のお客様のニーズを詳しく把握する体制には至っていませんでした。そのため、仕事のスタイルも、トップからの指示のもと、現地の代理店の要望に沿って業務を行うことが習慣化していました。チームマネジメントとはどのようなことを行うべきなのかを考える機会も限られていたのです。

市場が違えばお客様のニーズも異なりますから、戦い方やリソース配分、組織体制も各地に最適化すべきです。こうした方針は現地の各拠点で考えることが理想ですが、代理店販売が主体だと、そもそもニーズを把握することにも限界が出てきます。

このままでは、いつか海外事業の成長は鈍化するでしょう。多様化するニーズに沿った価値を提供するために、日本の本社がほとんどの決定権をもつ体制ではなく、現地に権限を与え、本質的な意味で現地化を進めなければならないと考えました。

現地化を実現するには、日本の海外営業部のチームリーダー層が販売・マーケティングの専門知識を身につけるとともに、担当地域のプロになることが必要です。当社の海外営業部はアメリカ、欧州、中国など地域ごとにチームを分け、各地域の責任を担う体制を取っています。経営の最小単位である各地域のリーダーが、現地の拠点リーダーと議論して戦略を立案できることを目指したいと考えました。

このように言葉にするのは簡単ですが、仕事のスタンスを変える大きな取り組みです。私の考えを伝えただけで、すぐに認識や行動が変わるものではありません。そこで、チームリーダー層を集め、ワークショップ形式で自らの役割からじっくり考えてもらうことにしたのです。

この取り組みのパートナーとしてアイディール・リーダーズにお声がけしたのは、私自身が2019年に当社に入ってから、エグゼクティブコーチングを受けており、信頼を寄せていたことが大きな理由です。私が海外営業の責任者に就き、当社の現状を踏まえてどうリーダーシップを発揮すべきか考えていた際、大いにお力添えいただきました。

当社の状況も深く理解いただいていますし、定型化されたソリューションをご提供いただくのではなく、オーダーメイドで解決策をご提供いただける点を心強く思い、今回の施策もご一緒いただくことにしました。

今回のワークショップを通して、どのようなことを感じられましたか?

3回のワークショップによって、新たに定義した役割に沿って具体的な行動に移すまでに至ることができた。また、チームリーダー同士の関係性が構築され、担当地域を超えて協力し合うようになった。

永井

ワークショップは2022年9月の第1回を皮切りに、合計で3回行いましたね。初回は、既存業務の延長線上ではなく新しいことを考える場なのでオフサイトで実施するのがいいだろう、ということで外部会場をご用意いただきました。

永井

第1回のワークショップでは、チームリーダーの役割定義を考えていただきました。冒頭で私から一般的なリーダーの役割について話をした後、チームリーダーの皆さんが自分たちの役割について意見交換をし、最終的に以下の6つに集約しました。

・体制構築・組織運営
・戦略策定
・人材育成
・モチベーション
・コミュニケーション
・決定事項の完遂

今後、海外営業部の組織が成長してチームリーダーが増えた際も前向きに受け入れやすいよう、6つの役割の行動指針を作るだけでなく、キャッチコピーをつけるといった工夫もしましたね。

手島

実行する際に、明るく楽しく取り組めるように配慮していただきました。その後、半年ほど実行期間を設け、振り返りをする予定だったのですが、思うように取り組みが進みませんでした。

永井

そこで第2回のワークショップを行いました。取り組みが進まない原因をチームリーダー同士、本音で話し合う場を設けたのですよね。

永井

この第2回は、実施して良かったと思います。行動指針は、作ったものを壁に貼って終わってしまうことも少なくありません。行動に移せなかったのはなぜなのか、どこに抵抗感があるのかといったことを話し合うことで、実行に移す壁を乗り越えるきっかけ作りができたのではないでしょうか。

手島

そうですね。行動してみたものの、思うように実践できないという声も出てきました。第2回のワークショップで明らかになったのが、一つひとつの実践項目に対して、誰がどう行動するのかまで落とし込めていなかったのが原因ではないかということです。

そこで、各チームリーダーには、各項目に対して具体的に何を行動するのかを「3W1H=いつ、誰が、何を、どうやるか?」の形で可視化してもらいました。

その後、3W1Hに沿って半年間実践してみると、新たな課題が浮き彫りになりました。それは、リーダーが実践できているものの、チームメンバーの受け止め方が見えていなかったことです。

そこでメンバーにヒアリングをしてフィードバックを集めたうえで、第3回のワークショップを行いました。人事査定などで用いる360度評価では正直な意見が出てこないこともありますが、今回は、リーダー本人に対してではなく、具体的に決めた3W1Hへのフィードバックだったので、率直な意見が多く集まりましたね。当社は90%以上の社員が新卒から在籍し続けているプロパー社員で、土台となる人間関係ができていたこともうまく作用したと思います。

メンバーからの意見を題材に話し合うことで、さらに多くの気づきや発見がありました。この3回のプロセスを踏めたことは、結果的に良かったと思います。

また、チームリーダー全員が同じ方向を目指して行動する機会は貴重なものでした。それまでは、地域ごとに担当が分かれていたこともあり、お互いの業務に関与し合うことは乏しかったのです。このワークショップを経て、チームリーダー同士の関係性が築かれ、意思疎通が図れるようになりました。

永井

第3回のワークショップは、リーダー同士の「プチ相談会」のような雰囲気にもなっていましたね。お互い、実践するうえで悩んでいることを吐露し合っていたのが印象的でした。この関係性ができると、マネジメントの改善活動が進みますね。

チームリーダーのあるべき姿を策定し実践するプロセスにおいて、重視した点や手応えを感じていることなどを教えてください。

トップダウンで方針を示すのではなく、自ら考えるプロセスを大切にした。将来を見据えた行動指針にまで落とし込むことで前向きに取り組む意欲が醸成されるとともに、リーダーシップを学ぶ良い機会になった。

手島

重視したのは、チームリーダーが自ら考え、自らの言葉で表現して納得するプロセスです。一方的に学ぶような講義型の研修では、トップからの指示に従うというスタンスが残ってしまう懸念があったので、今回はワークショップ形式にこだわりました。

また、経営の最小単位はチームであり、私はそのための仕組みを整えるので、チームリーダーは担当地域のあるべき姿を描いてメンバーを引っ張ってほしいという期待を伝えました。チームリーダー一人ひとりに自らの役割を腹落ちしてもらうためにも、自ら考えるプロセスは欠かせませんでした。

永井

第1回のワークショップで定義した6つの役割も、手島様や私から提示したものではなく、チームリーダーの皆さんで話し合って決めていただきましたね。

手島

多くの意見を構造化して集約し、さらに役割間の関係性も整理しました。ありたい姿を全員で考えることで、多くの気づきが得られたと思います。

永井

また、現状を改善する内容ではなく、海外営業部のありたい姿に沿ってバックキャスティングで考えていただきました。過去ではなく将来に視点を向けたことも、前向きに考え、自分の言葉で表現していただけた一因だったと思います。

手島

この経験によって、自分はリーダーに向いていないと感じていたチームリーダーも、自分の役割や行動が具体化されたことで、これを実践していけばミッションを果たせるのではないかという自信が芽生えたようです。これはワークショップの副次的な効果でした。

永井

多くの企業では、マネージャーの役割や行動について学ばないうちにマネージャーに就くことになります。プレイヤーとして優秀ならマネジメントもできるはずだ、と思われがちなのですよね。この点については、私も大きな課題意識をもっています。

手島

リーダーになる人材は、確かにプレイヤーとして成果を出していますが、マネジメントの経験があるわけではありません。今回のワークショップで、リーダーシップやマネジメントそのものについて学べたのは良い機会になりました。

今後の展望をお聞かせください。

チームリーダーが主導して地域のニーズに最適化した戦略を立案し、各地域のお客様が求める価値を届けていきたい。

手島

まずは、各チームリーダーが海外の各拠点の状況に沿った戦略を立てられるようになることを目指したいと考えています。

ワークショップとは別の取り組みとして、海外営業部の会議体を見直し、チームリーダー会議を定例で開いて担当地域を超えて意見交換をしたり、地域ごとの販売・マーケティング会議には他のチームリーダーも参加できるようにしたりしました。

また、第3回のワークショップで行ったメンバーからのフィードバックについては、仕組み化して継続していかなければならないと考えています。海外営業部全体から意見を集め、チームリーダー全員で共有する場を定期的に設けることで、行動指針が定着していくと思うのです。こうして、海外営業部全体で知恵を出し合いながら成長していきたいですね。

これらの営みを継続して、各チームリーダーが戦略立案をして成果を創出するようになると、次はもう少し大きな組織をマネジメントしながら、次世代のチームリーダーを育成できるようになるでしょう。組織とは、こうして成長していくものだと思うのです。

さらに将来的には、お客様のニーズに合わせた商品企画までを現地で担い、より多くの価値をお届けできるようにしていきたいと考えています。現在、海外販売拠点は主にセールス、プロモーションを中心とした役割を果たしていますが、商品企画までも担えるようになることが理想です。お客様をより深く理解し、各地域に沿った戦略を実行していくことで、今後の海外事業のさらなる成長を目指したいと思います。

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