ワークポート 成長を遂げた現在の自社にふさわしいパーパス・バリューズ策定プロジェクト
株式会社ワークポート
株式会社ワークポート
https://www.workport.co.jp/corporate/
株式会社ワークポートは、2003年に設立され、東京と福岡に本社を構える転職エージェントです。全国47都道府県に拠点を持ち、対面での転職相談にこだわり、全国どこでも転職コンシェルジュと直接面談できる体制を整えています。これまでに83万人以上の転職支援実績を持ち、急速な事業成長を遂げています。従業員数は1000名を超え、多様な職種や業界に対応した人材紹介サービスを提供し、転職希望者や企業から高い評価を得ています。ワークポートは、転職支援を通じて人と企業をつなぎ、社会に貢献することを目指しています。
ご依頼の背景
ワークポート様は、全国47都道府県のすべてに拠点を設け、この10年で売上が3倍以上になるスピード感で事業を拡大してきました。業績の拡大だけに留まらず、これから社会にどんな価値を提供するのかを改めて考えるために、パーパスとバリューズを策定することになったのです。
本プロジェクトでは、自分達の社会的役割を定義するパーパスと行動指針を改定する形でバリューズを再策定しました。パーパスは執行役員以上の経営陣が、バリューズはミドル層が策定メンバーとなりワークショップを実施。ワークショップに参加しない社員へはアンケートを取るなど、全社を巻き込みながら丁寧に策定プロセスを進めていきました。
こうした取り組みを経て策定されたパーパスとバリューズは2024年7月に社内外に公表され、これから本格的に全社へ浸透するフェーズに入ります。
今回は、本プロジェクトのメンバーである藤巻様、小川様に、取り組みの背景や内容、成果や気づきなどを伺いました。
新たにパーパスやバリューズを策定することになった背景を教えていただけますか?
事業が成長し、お客様やサービスが多様化するにつれ、既存のビジョンや行動指針がフィットしない場面が増えていた。
当時私が担当していたコーポレートブランディングにおいて、ワークポートの存在を社会に発信していく際、核となるものを作りたいと感じていたのがパーパス・バリューズ策定のきっかけです。広報担当者からも「どのような価値観や理念のもとで経営している会社なのかをより明確にしてメディアに発信したい」という声が挙がっていました。
当時、私は小川とは別の部署にいたのですが、小川と同じようにパーパスの必要性を感じていました。そのきっかけは、経営幹部候補だった優秀な社員たちの退職でした。退職の理由を聞くと、転職先のビジョンに惹かれたという答えが返ってきたのです。
翻って、ワークポートの社内に目を向けると、我々はどこに向かっていくのかを一言で表せていないことに気づかされました。と同時に、パーパスやビジョンは人を強く惹きつけるものであることを痛感しました。
弊社はスピーディーに規模を拡大する戦略を掲げ、具体的な数値目標を追うことで戦略を実現してきました。一方、全国47都道府県すべてに拠点を構えるほど組織が大きくなり、サービスも多様になる中、一つの戦略だけでは組織を束ねきれないと感じるようにもなっていました。それを深く考えるきっかけとなったのが、社員の退職だったのです。
また、当時は設立20周年という節目で、社長が交代したタイミングでもありました。今後、弊社が世の中により高い価値を提供し、さらなる事業成長を実現し続けていくためには、会社の節目である今こそパーパスを策定すべきタイミングだと考えました 。私の問題意識を役員会に提言し、経営理念の再策定を行いたいと伝えました。パーパスやビジョン、バリューズを一貫性をもった形で作っていくべきだと提案したのです。
当初、役員陣からは、理念の再策定が業績にどのようなインパクトをもたらすのか、今やるべきか。などその有効性やタイミングに関する意見もありましたが、最終的には納得してもらえました。中でも、社長の林が「今やるべきだ」と強く賛同してくれたことによりプロジェクトが進み出しました。
事業や組織が急成長しているフェーズでパーパスを策定するプロジェクトは少なく、貴社の大きな特徴だと感じています。その時期の経営理念としては、どのようなものがあったのでしょうか?
ビジョンや行動指針がありました。しかしながら、それらが体系的に整理されていたとはいえず、ホームページに掲載して、採用の場面など限定的な用途で使われるだけに留まっていたように思います。
行動指針は弊社の強みだったのですが、近年は弱みにもなっていると感じていました。この行動指針は項目が多くあるがゆえに、具体性が高いものになっていました。わかりやすいという利点がある一方、社員一人ひとりが自ら行動指針の意味合いを考える余白がなくなっていたとも感じました。今後、さらにお客様やサービスの多様性が増してもフィットするよう、抽象度を上げた内容にしたいと考えました。
そこで今回のプロジェクトでは、パーパスを策定するとともに、行動指針を改定してバリューズを再策定することにしたのです。
パーパスとバリューズの策定にあたり、なぜアイディール・リーダーズにお声がけいただいたのでしょうか?
まず、外部パートナーと一緒にプロジェクトを進めたいと思ったのは、全社を巻き込んで意識を変えていくという難易度の高い取り組みにもかかわらず、社内にそのノウハウがなかったことがあります。
そこで、経営理念の再策定を支援いただけそうな企業をピックアップし、5社以上にお声がけしました。その中で、パートナーとしてアイディール・リーダーズを選んだのは、経営理念策定にまつわるノウハウがあることはもちろん、難易度が高いプロジェクトのため頓挫してしまうリスクもある中で最後まで寄り添っていただける安心感があったからです。
我々としては、パートナー企業とは密にコミュニケーションを取りながら、時には意見が食い違っても納得するまでディスカッションを重ね、妥協することなくプロジェクトを進めたいという希望がありました。そうした進め方を最も実現できそうだと感じたのが、アイディール・リーダーズでした。
どのようなことを重視して、パーパスやバリューズを策定しましたか?
全社員が自分事として捉えられるよう、全社員にアンケートを取ったり、プロジェクトの進捗状況を随時社内共有していた。
社員一人ひとりが自分事にできることを重視しました。そのためにワークショップをどう設計し、どのように全社員を巻き込んでいくかを強く意識していましたね。事務局メンバーにはワークショップ企画者ではない社員にも参画してもらい、現場に落とし込みやすいような体制を組みました。
というのは、弊社が成長を続けている最中にパーパスとバリューズを策定するため、社員が「なぜ、今の忙しい時期にわざわざパーパスを作るのか」という疑問を抱く懸念があったためです。
こうした懸念もあり、再策定する意味合いや策定プロセスを慎重に考えていたため、検討を始めてからプロジェクトを開始するまで1年半の時間を要しました。
パーパスやバリューズを策定するワークショップ参加者も慎重に検討しました。結果として、パーパスは執行役員以上の経営層が策定し、最後に取締役でまとめることになりました。バリューズは次世代の経営を担うミドルメンバーによって、パーパスに基づいて策定することにしたのです。
経営陣だけで決めるのではなく、全社員を巻き込むことを重視した結果、バリューズをミドル層で策定したり、パーパスについては全社員へアンケートを取って意見を吸い上げたりしましたね。
さらに、事務局の皆さまが中心となって、プロジェクトの活動を社内で頻繁に周知されていましたよね。具体的にどのような内容を、どんな意図で発信されていたのでしょうか。
全社員がワークショップに参加することは難しいので、プロジェクトの目的やワークショップの実施報告などを、動画にして社内へ共有していました。
こうした社内広報に力を入れていたのは、パーパスを策定するという不慣れな取り組みを長期にわたって行うので、どうしても熱量が徐々に下がってしまうだろうと思ったからです。それに、自分が関与していない場で作られたものに対しては、自分事にしにくいものです。全社員が何らかの形で関与したことを定期的に思い起こしてもらうよう、事務局メンバーが意識して情報発信をしていました。
弊社の社員は、社内の取り組みに対して積極的なメンバーが多くいます。アンケートの回答率はとても高く、企画側としてはとてもありがたく思いましたね。
会社の価値観が見えないことへ違和感を抱いていた社員も多くいたのかもしれません。ただ、それを言わずとも会社が成長している状態だったので、策定プロジェクトを始めるまでは意見を伝える機会を逸していたのだと感じさせられました。
策定したパーパスとバリューズに対して、どのような感想をお持ちでしょうか?
これまで培ってきたワークポートらしさと、これから追い求めたい新たな価値観が融合したパーパスとバリューズができあがった。
「限りなく誠実に、極めて合理的に。人と企業をありたい未来へつなぐ。」というパーパスは、プロジェクト開始時に自分がイメージしていたものとは大きく違う内容でした。しかしながら、これはよいことだと思っています。多くの社員から紡ぎ出された言葉がパーパスというひとつの形になり、皆の思いがよく伝わってきました。
元々あったワークポートらしさと、新しい価値観が融合したパーパスになったと感じます。ワークショップでは、従来からの弊社らしさと新たな価値観のどちらを大切にするべきかという議論もあったのですが、最終的に双方が混ざり合った言葉ができあがりました。だからこそ、社員も違和感なく受け入れられると同時に、新しさによる期待感も醸成されたと思います。
バリューズも、これまで弊社が培ってきたものと新しい価値観が混ざり合っていますね。たとえば、「自分をアップデートし続ける」という項目は、会社としてオフィシャルに伝えていなかった新たな観点です。これまでの行動指針より抽象度が上がり、社員が自ら考えを巡らせることができるという点でも、とても良い内容にまとまったと思います。
パーパスには、自社のこれまでの歩みをもとに策定する「過去・現在型パーパス」と、これから自分たちが目指したいものを言葉にする「未来型パーパス」の大きく二種類があります。貴社のパーパスは、この両方を併せ持った内容になったと感じます。
私も同感です。規模が急拡大している、貴社の今のフェーズらしいパーパスですよね。ワークショップでも、フェーズの転換点にいる自社が社会的責任をどう考え、どう振る舞うべきかを議論する場面もあったことを覚えています。
ワークショップでは、全員が真剣に議論していたことが強く印象に残っています。と同時に、弊社がどのように社会と関わっていくべきかを考える良い機会になりました。我々が社会的意義を真正面から考える企業規模になったことを実感する経験でした。
プロセスを振り返ると、思いを言葉にして表す難しさを感じました。ワークショップで話が進まない局面でも、アイディール・リーダーズの皆さんから、社員の心の内を引き出す問いかけを多くしていただいたことに感謝しています。
パーパス・バリューズ策定後の組織の変化や、社内外から聞こえてきた声などはありますか?
社内説明会では、ポジティブな声が多く寄せられた。一方、新たなバリューズは抽象度を上げて策定したため、社員が自分事にできるレベルで浸透するには時間がかかると想定している。
パーパスを策定したことによる新たな動きとして、パーパスを起点にした自社のリブランディングが行われました。
その後、パーパスとリブランディングの社内説明会を開き、社員にアンケートを取ったところ、「これからが楽しみになった」「わかりやすいパーパスになった」というポジティブな声が多く寄せられました。一方、慣れ親しんできた行動指針がなくなったことが残念だという感想もありましたね。
行動指針は具体性がある内容なので、現場の管理職としては指示命令によってマネジメントしやすい側面があったと思います。新たなバリューズは各現場でその意味合いや行動すべきことを考える必要があるので、一人ひとりが自律していくと思います。浸透に時間はかかると思いますが、まずその土台ができたことは大きな収穫です。
今後の取り組みや、展望についてお聞かせください。
パーパスの存在を周知するための施策が進行中。これからは、ワークショップやアワードの実施などを通して、パーパスとバリューズの浸透策に着手していきたい。
すでに着手し始めているパーパスの浸透策として、社員証の裏面に記載したり、出勤ボタンを押した際にパーパス動画を流したり、全拠点のオフィスにポスターを掲示したりしています。まずは、パーパスの存在に多く触れてもらうという意図です。
また、パーパスやバリューズをテーマにした役員ブログの発信を開始しました。さらに今後は社長と対話するワークショップや、バリューズに紐づいたアワードの企画も進めたいと考えています。
また、社員一人ひとりに対してキャリアへの考えや会社に対する課題感を吸い上げるためのアンケートを実施する取り組みも行っています。このシートを通して多くの課題が挙がっており、パーパスを起点にどう解決していくかが目下の重点施策です。社内の課題を一つずつ解消し、社員の力を最大限に引き出すために制度を整えていくことを目指したいと思います。
最後に、一連のプロジェクトを通して、アイディール・リーダーズの支援にはどのような特徴があると感じられたか、お聞かせいただけますでしょうか。
当初期待していた、我々に寄り添っていただける点はプロジェクトの最後まで実感していました。ワークショップで議論がまとまらなかったり、意見が出てこなかった際にはその場でワークショップ内容を変更するなど臨機応変に対応いただいたと思っています。
困ったときには相談すれば大丈夫、という安心感が終始ありましたね。我々との打ち合わせでも、ワークショップにおいても、無理にゴールへ誘導することなく、参加者の思いや雰囲気を汲み取って最適解に導いていただいたことに感謝しています。
アイディール・リーダーズのパーパス策定支援は、社員の意見を吸い上げて組織を良くしていきたいという企業におすすめできると思います。ある程度の組織規模をもつ企業が、自分たちだけで社員の意見を統合してパーパスを作るのは難しいものがあるので、こうした外部パートナーと組んでプロジェクトを進めたほうがよいのではないでしょうか。
弊社のようにパーパスを策定したいという具体的な目的がなくとも、社員の一体感がなかったり、閉塞感があるなどの課題が出てきた段階でアイディール・リーダーズへご相談してもよいと考えます。
我々がそうだったように、施策を進めるプロセスによって組織の一体感が醸成され、社員一人ひとりが社会との接点を考えるという効果が得られると思います。