ヤマハ発動機株式会社 デジタル戦略部 全社ビジョン・ミッションを我が部署らしいやり方で実現する

全社ビジョン・ミッションを
我が部署らしいやり方で実現する

ヤマハ発動機株式会社 デジタル戦略部

ヤマハ発動機株式会社 デジタル戦略部

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バイクやスクーター、マリン製品などの個人向け製品、産業用ロボットや無人システムなどの法人向け製品を提供するヤマハ発動機株式会社。「感動創造企業」を存在意義である企業目的に掲げ、世界中に感動と豊かな生活を提供するために事業を多角的に展開している。

話し手
ヤマハ発動機株式会社 デジタル戦略部 部長 
新庄正己様
聞き手
アイディール・リーダーズ株式会社

ご依頼の背景

今回ご依頼をいただいたのは、最新デジタル技術やデータなどを活用して全社的なDX推進、組織体制の拡充を担う「デジタル戦略部」。

部門内に「デジタルマーケティング」「データ分析」「コネクテッド(つながる推進)」の3つのグループがあり、それぞれが過去にグループのビジョン・ミッションを策定したものの、部全体・各グループ共通のものがありませんでした。このような状況で、「部全体が一丸になって進むべき方向を作らなければいけない」という課題を持ち、アイディール・リーダーズにご相談いただきました。

この度は、ヤマハ発動機IT本部 デジタル戦略部長の新庄正己様に、ビジョン・ミッション策定プログラムを実施された背景や感想、実施後の変化などをお伺いしました。

全社のビジョン・ミッションがあるのに対して、なぜ各グループでも策定しようと考えたのですか。

全社的なミッション・ビジョンはあるが意味の捉え方は部門によって多種多様。“デジタル戦略部ならでは”を表現できるビジョン・ミッションを各グループで策定。

新庄

我が社には「感動創造企業」という企業目的があります。世界中に新たな感動と豊かな生活を提供したいという想いから策定されました。しかし、「感動」の意味合いは非常に曖昧です。感動をどのように創造するのか、創造した感動をお客様にどのように届けるのかは、各部署によって解釈が異なると思っています。良い製品を作って感動を届ける部署もあれば、体験を作って届ける部署もありますが、「デジタル戦略部では何を以て感動を届けるのか」が明確でありませんでした。

また、「ART for Human Possibilities~人はもっと幸せになれる~」という2030年に向けた全社の長期ビジョンがあります。今後も価値観の多様化・社会や環境の複雑化が想定される世の中で、我々が培ってきた技術と感性を活かして「ヤマハ発動機らしいやり方で人間の可能性を拡げたい」という意味が込められています。しかし、この長期ビジョンに対しても「ヤマハ発動機ならではのやり方とは何か」と疑問がありました。

桜田

デジタル戦略部における「ヤマハ発動機ならでは感」が何なのかを考えるきっかけとなったのですね。

新庄

「デジタル戦略部は何を以て感動を届けるのか」「デジタル戦略部なりのやり方とは何か」をもっと具体化しなければいけないと思い、部門全体のビジョン・ミッション策定と、それに紐づく各グループのビジョン・ミッションの見直しをすることに決めました。

今回策定したデジタル戦略部のビジョン・ミッションについて、どのような感想をお持ちでしょうか。

策定の過程で前向きな意見を持つメンバーが多数いることを再認識でき、納得のいくものとなった。

デジタル戦略部と各グループのビジョン・ミッションをイラスト化<br />
(イラスト作成:関 美穂子)

デジタル戦略部と各グループのビジョン・ミッションをイラスト化
(イラスト作成:関 美穂子)

新庄

最終的に「Personalize KANDO at scale」をデジタル戦略部のビジョンとして掲げました。実はこの言葉、元々はデジタルマーケティンググループのビジョンだったのです。「何を以て感動を届けるのか」「我々なりのやり方は何か」を考えると、「Personalize KANDO at scale」を部全体のビジョンにした方が良いのではないかと議論になり、結果的にスライドさせたという形になりました。

桜田

元々メンバーが考えていたものが部のビジョンに昇華されたのですね。一部の人が描くビジョンではなく、メンバー全員でビジョンを描くことはとても重要なことです。このビジョンにはどういった意味が込められていますか?

新庄

このビジョンを策定できたのはかなり意味のあることだと思っています。データ分析やコネクテッドなど、我々は技術的な側面が強い部署であるため、お客様に直接関係ない仕事と思っているメンバーがいてもおかしくありません。しかし、このビジョンを策定する過程で「我々のすべての仕事が 最終的にはお客様の感動に繋がる」「感動を我々の力で最大化したい」と考えるメンバーが多数いることを認識できました。

また、近年の先の見えない混沌とした状況の中でも進むべき方向を決めなければいけません。ミッションを策定するうえで、我々には「今の会社を支えていくこと」と「混沌とした状況でも新しいことに飛び込む」という2つの選択肢があり、個人的にはどちらを選ぶべきか悩んでいたところもありました。しかし、メンバーの意見は「両方やること」だったのです。このような認識合わせができたことで、メンバー全員がスッキリしたと思います。

メンバーがそれぞれの言葉で意見を出し、それを集約し、納得のいく形にできたのはアイディール・リーダーズのファシリテーションのおかげです。やっぱりトップダウンで決めたものとは違うなと感じました。

ビジョン・ミッションを策定する前、メンバーの皆様はどのような考えを持って仕事に取り組んでいましたか。

「今の会社を支える」「新しいことに飛び込む」両方の考えを持ったメンバーが集まった部署。どちらかではなく、それぞれの良さを活かしながら両方を追い求めることを目指す。

新庄

部署内では、「今の会社を支えていく」「新しいことに飛び込む」の両方の考えが見られました。一人で両方の考え方を持っている人や、今の会社を支えることに特化したい人、そもそも新しいことをやりたくてヤマハ発動機に入社した人などさまざまです。このような状況から、どちらかではなく、メンバーそれぞれの良さを活かしたうえで両方やろうと、皆が自発的に言ってくれました。

桜田

深化と探索を両立する「両利きの経営」をメンバーが自ら考えたという事でしょうか?

新庄

以前、今後の部署の方向性について考えていた時、「この部署は今の会社を支えることと、新しいことに飛び込むことと、両方やっていくこと無理だろう」と考え、それをメンバーに伝えるか迷っていました。
しかし、今回のプログラムの中でメンバーから「両方やる」という意見が出てきました。それが「未来の創造に飛び込み、現状の変革に飛び込むヤマハ発動機のファーストペンギン」というミッションです。「今の会社を支えていく」「新しいことに飛び込む」ことを文章にまとめられたので本当によかったです。「ファーストペンギン」は我々の部署にぴったりの言葉だと思っています。

ファーストペンギンの「最初に飛び込んでいく」という意味合いについて、どのような考えをお持ちですか。

デジタル戦略部には「新しいことを先頭を切ってやっていく」という強い意志を持つメンバーが多く在籍。この想いをビジョン・ミッションで具現化できた。

新庄

部署のメンバーに対して「あなたは今何番目のペンギンですか?」というアンケートを実施したことがあります。すると、約3割のメンバーから「すでにファーストペンギンだ」という回答を得られました。

桜田

「新しいことに先頭を切ってやっていく」という強い意志を持っているメンバーが他の部署よりも多いことを実感できました。このような思いを具現化したビジョン・ミッションができたのは、私だけでなくメンバーにとっても喜ばしいことだと思います。

そもそも、10人中10人がファーストペンギンである必要はありません。ファーストペンギンを支える人がいてのファーストペンギンですからね。メンバーにはそれぞれ役割があることも感じてもらえれば嬉しいです。

ビジョン・ミッション策定後、部内でどのような変化がありましたか。

マインド面の変化が徐々に現れている。ビジョン・ミッションを達成するためのロードマップ作成についての議論も進行中。

新庄

現状大きな変化はありません。ビジョン・ミッションを策定したことによる変化はこれからだと思っています。

しかし、「思っていたことが明文化された」「スッキリした」「モヤッとしていたことがクリアになった」というメンバーもいて、マインド面の変化は徐々に現れているのではないかと思います。また、ビジョン・ミッションを達成するためにどのようなロードマップを引くべきかという話し合いもできています。

ロードマップを作成する際、メンバーからどのような意見が出てきていますか。

ビジョン・ミッション策定後のマインドの変化によって、自分達を高めるためのロードマップ作成ができている。

新庄

データ分析グループの場合、これまでの仕事の多くの時間を社員教育・能力アップに充てていたため、無意識に教育係やコンサルのような感覚になっているメンバーもいました。 しかし、今回「BE THE TOP」というグループのビジョンを掲げ、「我々がデータサイエンティストのエースとして頑張っていくんだ」というマインドに変化しているのがわかりました。そして、「教育を頑張っていきましょう」ではなく、「どうやって自分達を高めていくか」というロードマップを作成できるようになっています。これはビジョン・ミッション策定後、マインド面でかなり大きな変化が現れていることを実感できますね。

一方で、ロードマップ作成が難しいのはデジタルマーケティンググループです。マーケティングは他の部署との関係性もあるため、自分達のロードマップが必ずしもその通りになるとは限りません。だからこそ長期的なロードマップを緻密に描くのではなく、ビジョン・ミッション、ゴールを明確にしたうえで、ロードマップとは言えないほど短期的な計画を書き出し、それを高速回転させるというやり方に切り替えることを検討しています。どんな道筋であっても、目に見える形で結果を出したいと強く思っています。

アイディール・リーダーズのビジョン・ミッション策定プログラムにはどのような特徴がありましたか。

アイディール・リーダーズはメンバーの議論を活性化させる引き出し役。

新庄

プログラム参加メンバーからは「アイディール・リーダーズの皆さんはあまり存在感がなかった」というコメントがありました。しかし、この意見はポジティブに捉えられると考えています。

桜田

ファシリテーターはあくまで裏方、ワークショップに参加されているみなさんが主役だと考えています。

新庄

部署によっては、ワークショップの問いに対して思考が止まり、時間内に終わらせるのがやっと、というところもあるでしょう。しかし、我々の部署には、理解力が高く、前向きな考えを持っているメンバーが集まっていたため、ワークショップ当日は意見が飛び交っていました。アイディール・リーダーズが目立たなかったのは、我々の議論が活性化していたからだとポジティブに捉えています。

また、我々もそうでしたが、ビジョン・ミッションの策定をするとき、どこに進んでいいか迷子になっている会社があると思います。しかし、アイディール・リーダーズとの事前打ち合わせによって思考が整理され、進むべき方向性を見出すことができました。

どのような組織にアイディール・リーダーズのビジョン・ミッション策定プログラムをおすすめしたいですか。

モチベーションがあるが進み方がわからない組織はビジョン・ミッションを策定するべき。また、会社と自分達の繋がりを見出せていない部署にもおすすめ。

新庄

モチベーションがあるのに進み方がわからないという組織におすすめです。これをオートバイに例えると、すごい性能を持ちながら、タイヤが空回りしている状態のような組織です。空回りしていたり、性能を発揮できていない組織があれば、アイディール・リーダーズのビジョン・ミッション策定プログラムをおすすめします。

また、全社だけでなく、部単位でビジョン・ミッションを策定することも有効的だと感じました。なぜなら全社的なビジョン・ミッションだけでは、会社と自分の繋がりを見出せないからです。自分が在籍する部のビジョン・ミッションを作るには、そもそも会社がどのようなビジョン・ミッションを掲げているのか、その中で自分達はどのような役割なのかを整理する必要があります。この整理ができて初めてビジョン・ミッションが機能すると考えています。このような整理ができていない部署にもアイディール・リーダーズのビジョン・ミッション策定プログラムがおすすめです。

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