全社員が組織をより良くする当事者意識をもつため
各部門でワークショップを行う
ファシリテーター育成
カルビー株式会社
カルビー株式会社
https://www.calbee.co.jp/
国内のスナック菓子市場でシェア50%超を誇る代表的メーカー。「ポテトチップス」や「じゃがりこ」などのスナックのほか、「フルグラ」をはじめとするシリアル食品においても市場を牽引する。「海外市場と新たな食領域を、成長の軸として確立する」という2030ビジョンを掲げ、国内コア事業のブランド強化と並行して、さらなる新市場および新領域の開拓を目指す。
ご依頼の背景
カルビー株式会社では、社内で実施しているメンバーシップサーベイ ※の結果をもとに、全社の本部長および部長層が組織課題について対話するワークショプを実施していました。この取り組みは有用だったものの、課長やメンバー層も巻き込んで、全員で組織づくりを考える状態にしていきたかったといいます。
※従業員1人ひとりがメンバーシップを発揮し、全員活躍ができる組織の実現に向けて、会社・職場・仕事に対する意識を明らかにする調査
そこで、国内各拠点の人事機能を担っているメンバー (以下、拠点人事)や、グループ会社の人事担当者もワークショップを行えるようにするためのファシリテーター育成を実施。プログラム参加者 がファシリテーションスキルを磨き、学んだことをもとに各現場でワークショップを開催するという取り組みです。
今回は、このプロジェクトを推進する流郷様と今泉様に、取り組みの背景や内容、成果や気づきなどを伺いました。
ファシリテーター育成を実施することになった背景を教えていただけますか?
全社員がメンバーシップサーベイの結果を自分事として受け止め、各本部が全員で組織をより良くしていこうとする組織づくりを目指した。
当社では2019年からの3年間、社内でメンバーシップサーベイを実施した後、本部長および部長層によるワークショップを行っていました。サーベイの結果をもとに、その背景や改善点を対話するというものです。
この活動を進化させるために、課長層以下のメンバーに対しても対話の場を設け、全員で組織づくりを考えていく状態にしたいと考えていました。ただ、当社は全国各地に多くの拠点があるので、本社人事が全国の拠点をまわってワークショップを行うのは負荷が高く、現実的ではありません。そこで、拠点人事がワークショップを行うファシリテーターとなるための育成に取り組もうと考えました。
多くの人事担当者がワークショップのファシリテーションをできるようになれば、全員で作るより良い組織の実現が早まります。かつ、この活動を通して、カルビーグループの人事としての一体感を醸成できるのではないかとも考えていました。
これまで社内で実施していたワークショップは、各本部を業務領域ごとに複数の塊にわけて開催していました。 そうなると、限られた時間の中でサーベイ結果の傾向や抱えている課題が異なる本部どうしが対話することになるため、本部固有の課題については現場任せにならざるを得なかったのです。
本部長・部長層が組織課題を考える際に、メンバー層までを巻き込むことは稀だと思います。もちろん、各本部の上位層はより良い組織づくりを真剣に考えているものの、メンバー層もメンバーシップサーベイに向き合い、何らかの行動をする機会をつくらないと、サーベイが自分事になりにくいだろうとも考えていました。
とはいえ、現場を巻き込むのは本社人事にとっても大きな負荷がかかることですよね。それでも取り組もうと決められたのには、どのような思いがあったのでしょうか。
組織を良くしていくカギを握るのは、本部長や部長層です。ただ、組織とは役職者だけでなく、メンバー全員でつくるものだと思うのです。それに、結果への大きな責任を負っている管理職層だけに組織の改革を任せるのは、あまりに負担が大きいだろうとも感じていました。そこで、拠点人事の力も借りて各現場でワークショップを行うことで管理職を支援し、メンバーの自発性も育めるだろうと考えました。
ファシリテーター育成を実施した感想をお聞かせください。
参加者が実践しやすいプログラムを、オーダーメイドで提案いただいた。各本部でワークショップを開催するにあたって、万全の準備ができたと思う。
我々のファシリテートで皆さんにワークショップを体験いただいてから、ファシリテーションのコツについてインプットするというプログラムを実施させていただきました。どのような感想をもたれましたか?
参加者の多くは、ファシリテーションの経験がありませんでした。この状況をふまえて、基礎から実践までが網羅されたプログラムを実施いただいたことが良かったと思います。
この分野は、座学で学んだだけで身につくものではありません。アイディール・リーダーズに提案いただいたプログラムは、ファシリテーションの基礎を学んだうえで、実践して理解を深め、さらに受け手側の体験もするという内容でした。ワークショップの参加者の気持ちもしっかり理解できると、実際のファシリテーションがしやすくなりますね。
また、参加者が各本部でワークショップを行うためのスクリプトや目安時間も資料として用意いただいたり、さらにはワークショップ前後で行うことも整理いただいたりして、万全の準備ができる内容に仕立てていただいたことに感謝しています。
私が印象的だったのは、参加者から質問が多く出たこと、それらの一つひとつに対してアイディール・リーダーズから丁寧に答えていただいたことです。個別の疑問を解消でき、これから現場でワークショップを行うにあたって安心感が得られたと思います。
参加者からは、自分自身がワークショップを行うにあたり、メンバーから意見がきちんと出るのか、あるいは予定時間内におさめられるのだろうか、といった戸惑いの声がありました。現場での実施前にこうした不安を解消できたことは、本社人事としても安堵しています。
ファシリテーター育成プログラムを実施した後、各本部でのワークショップはどのように行われていますか?
徐々にワークショップが行われている。ワークショップでアクションプランを立てる前に、まずは目指す組織の姿をじっくり考えたいという部門も出てきた。
メンバーの日程が確保できた組織から実施しています。ファシリテーションをした感想を聞くと、最初は思うように進行できなかったとしても、場数を踏むと慣れてくるようですね。
また、メンバー自身がサーベイ結果をもとにアクションプランを立てるので、自然と自分事として受け止め、自発的に行動する様子も見られているようです。これはまさに我々が目指したい姿だったので、順調なスタートだと思っています。
そして、とある部門からは、ワークショップの時間が足りなかったという意見が挙がりました。これは、アクションプランを考える前に、「目指す組織の姿」をしっかり描きたいと考えたことによるものです。
この意見は、日常業務がかなり忙しい部門から出たものでした。全国にメンバーが点在しているうえに、目の前の業務に追われてしまい、組織について話す機会がないことを課題に思っていたとのことでした。
この部門のワークショップの準備にあたっては私も支援させてもらい、ワークシートの内容を雛形から少し変えるといった工夫をしました。そして、初回のワークショップでアクションプランの議論に至らなかったため、今後も継続して実施したいと考えているようです。組織づくりの対話が続いていく機運が生まれていて、素晴らしいと思っています。
これは嬉しい出来事でした。これからワークショップを行う本部もまだまだあるので、良い事例としてイントラネットで発信していきたいですね。拠点人事の方々が大いに勇気づけられると思います。
当社の社員は、素直かつ真摯に仕事に向き合うメンバーが多くいるがゆえに、新しい行動が起きにくい側面もありました。今回のような変化の兆しを大切にして全社に発信していくことで、各本部が自発的により良い組織になっていくことを目指したいです。
実践者の声は、説得力がありますね。それに、ワークショップを実施した方にとっても、体験談を発信することで達成感も得られると思います。
ところで、今回のようなファシリテーター育成の取り組みは、どのような企業で実施するとよいと思われますか。
人と組織をより良くしていくことに、本気で向き合おうとしている企業ではないでしょうか。逆に、ファシリテーター育成や組織開発が注目されているから当社でも取り組んでみよう、といった状態だとうまくいかないのかもしれません。
ファシリテーションは人と人との対話ですから、企画側に心が入っていないと、受け手である社員にも伝わってしまいますよね。
まさにそうですね。企業価値の向上を実践するのは、人と組織です。社員一人ひとりが強みを発揮して、それを組織が認め、成果を出していく。こうして企業は成長していくのだと考えています。全員が組織に向き合って成長していきたいと考える企業には、ファシリテーター育成は有用な取り組みだと思います。
今後、どのような取り組みを行っていきたいとお考えでしょうか。展望をお聞かせください。
全員が活躍し、全員でより良い組織づくりをしていきたい。さらに人的資本経営の一環として、心理的安全性の醸成やキャリア自律を育むための取り組みも進めていく。
次回のメンバーシップサーベイは10月に実施予定です。数字に一喜一憂しすぎることないよう留意していきたいと思います。人にまつわるサーベイは、さまざまな状況や施策が複合的に関係してスコアが出るものですし、スコアが低下したからといって組織の状態が悪くなっているとも限りません。あくまで、結果をもとに対話することが大切であるとの意識を全員でもち続けたいですね。
私としては、まずは各本部でのワークショップを支援することに注力したいと思います。そのうえで今後は、目指す組織像の実現に向けた定点観測として、メンバーシップサーベイを活用してもよいのではないかと考えています。サーベイをもとに組織を考える今回の取り組みとは、逆のプロセスですね。
いずれにせよ、メンバーが対話をして組織をより良くしていくことこそが目的であって、サーベイはその手段のひとつなのですよね。この取り組みが続いていくと、我々も嬉しく思います。
さらに、腰を据えて取り組むべきこととして、人的資本経営があります。その中でも、心理的安全性がある職場づくりと、キャリア自律キャリアを重視していきます。また、メンバーシップサーベイのスコアもKPIとして開示していく予定です。
心理的安全性の醸成については、昨年、管理職向けにワークショップを実施しました。今後はメンバー層への理解も促し、全社で向き合っていきたいと考えています。そしてキャリア自律を育む取り組みは、昨年から本格的に着手したところです。社員が主体的に自分のキャリアを歩む支援を強化していきます。
カルビーグループの人財戦略のキーワードは、「全員活躍のための組織・人づくり」です。この言葉を体現できている組織を目指し、今後もさまざまな施策を進めていきたいと思います。