丸善薬品産業株式会社|130年の歴史からつながる現在と実現したい未来の姿から策定した「丸善薬品産業らしい」パーパス

130年の歴史からつながる現在と実現したい未来の姿から策定した「丸善薬品産業らしい」パーパス

丸善薬品産業株式会社

丸善薬品産業株式会社

https://www.maruzen-chem.co.jp/

1895年に創業した、化学工業薬品をはじめとする幅広い製品を扱う商社。卸売だけでなくコンサルティングや技術サポート、メーカーとタイアップしての新商品開発などの機能も有する「専門商社」 として価値を発揮する。

話し手
丸善薬品産業株式会社
取締役 松井 健太郎様
経営企画室 室長 山田 典昭様
経営管理本部 人事部 人事課 課長 松井 優樹様
経営企画室 近藤 久美子様
経営企画室 山田 萌恵様

※以下インタビュー記事内では敬称略で掲載させていただいております。
※この記事内の肩書き・役職は取材当時のものです。
聞き手
アイディール・リーダーズ株式会社

ご依頼の背景

丸善薬品産業様は、経営企画室を立ち上げ、次期経営計画を策定するにあたり、会社の存在意義であるパーパスの必要性を強く感じるようになっていました。そこで、アイディール・リーダーズと共同でパーパス策定プロジェクトを実施しました。

本プロジェクトは、社長と役員向けのエグゼクティブコーチングやパーパスに関する講演を行った後、各事業部の社員が参加するパーパス発散ワークショップおよび統合ワークショップを開催。全社員向けのアンケートや役員・事業部長との意見交換会も実施し、130年の歴史や社員に内在する思いに基づいたパーパスの策定と2045年のビジョンおよびビジョンイラストを作成しました。全社のパーパスお披露目会も終え、これから共鳴フェーズに入ろうとしています。

今回、本プロジェクトを企画・実施された皆様 に、取り組みの背景や内容、成果や気づきなどを伺いました。

新たにパーパスを策定したのは、どのような背景があったからでしょうか?

次の中期経営計画の策定を控え、パーパスの必要性を感じていた。6事業部が個々に動くのではなく、全社で進むべき方向性を明確にして組織の求心力を持たせたいという思いもあり、パーパス策定プロジェクトが始まった。

松井健

社長の柳原と、当社に経営企画室を設ける検討をしていたことがきっかけでした。経営企画のあり方を議論する中で、パーパスの必要性に話が及んだのです。これからの時代は、会社の存在意義がなければ若い世代から共感してもらえず、採用も困難になるのではないかという問題意識がありました。

松井健

ちょうどその頃、後に経営企画室長に就いた山田から「パーパスを作るべきではないか」と相談を持ちかけられたのです。社長や山田が同じ思いであることがわかり、パーパス策定プロジェクトが始動しました。

山田典

経営企画室が立ち上がり、次の中期経営計画策定が私のミッションとなりました。ただ、具体的な経営計画を考える前に、「当社はどうなっていきたいのか」を明らかにすることが必要だと思ったのです。

また、当時の社長の問題意識として、当社にある6事業部がそれぞれ動いており、会社としてのアイデンティティや求心力が薄れているということもありました。社員一人ひとりがやりがいをもって幸せに働けるよう、皆が進む方向がわかる「北極星」のような存在が必要ではないか、と考えていたのです。

社歴が長い私も同じ思いでしたし、中期経営計画の策定を控えた今こそ、全社のパーパスを作るべきタイミングだと考えました。

パーパス策定プロジェクトの外部パートナーとして、なぜアイディール・リーダーズを選んでいただいたのでしょうか?

自社が培った130年の歴史や、社員に内在する思いや行動原理を引き出してパーパスを作りたいという考えに最もフィットした提案内容だった。

山田典

パートナー企業の選定にあたっては、コンサルティングファームなど数社にお声がけしました。アイディール・リーダーズにも相談を持ちかけたのは、永井さん、後藤さんが書いた書籍『パーパス・ドリブンな組織のつくり方 発見・共鳴・実装で会社を変える』がきっかけです。

最終的にアイディール・リーダーズを選んだのは、社員の内面を引き出すアプローチを提案してくれたからです。130年の歴史がある当社に多く眠っているであろう暗黙知を引き出してパーパスを作りたかった我々にとって、最もフィットした提案内容でした。

当社には「私たちは誠実を旨とし堅実経営を目指します。」という社是があります。社員はこの社是に慣れ親しんでおり、仕事を通して「誠実、堅実とは何か」に向き合った経験が少なからずあるはずです。社員自身も言葉にしきれていない行動原理に着目すると当社らしいパーパスになるのではないかと思い、アイディール・リーダーズの力を借りることを決めました。

松井優

私も同感です。自社の過去を振り返る際、課題を洗い出すのではなく社員の思いに着目する提案をいただいたのは、アイディール・リーダーズだけでした。

他社はパーパス策定の一般的なセオリーに則ったロジカルな提案が多かったのですが、アイディール・リーダーズは我々の思いや状況を深くヒアリングしたうえで、当社に最適なアプローチを示してくれました。パーパスに関する豊富な知見に基づきながら、柔軟なアレンジをしていただいたことに感謝しています。

丹羽

パーパスを策定する手法として、自社の成功体験や強みに基づいて考える「過去・現状型」と、どのような未来を実現したいかに目を向ける「未来型」があります。

積み重ねてきた歴史や社員の思いを大切にしたいというお話をふまえ、「過去・現状型」と「未来型」の両方を取り入れるアプローチをご提案させていただきました。

吉原

130年の歴史を若手社員にも知ってほしいし、未来を見据えて社員がワクワクするパーパスを作りたいという貴社の思いに合致していたアプローチだったと、ワークショップでの柳原社長の話をお聞きして改めて感じました。

柳原社長は、ベテランから若手に社員が入れ替わる中で、130年をかけて培ってきた丸善薬品産業の強みや良さを社員の皆でもう一度考え直したいという率直な思いを話してくださいましたね。

パーパスは、その会社に最適なアプローチで策定することで、社員の共鳴につながりやすくなるものです。今回、丸善薬品産業様にとって最適なご提案ができたことを、私たちも嬉しく思っています。

一連のパーパス策定プロジェクトへのご感想をお聞かせください。

事業部を超えて共通のテーマをディスカッションするのは貴重な経験となった。日常業務の範囲を超え、会社全体や社会の視点で考えるのは難しい側面もあったが、誰もが前向きにディスカッションしていた。

山田典

当社では、発散ワークショップのような事業部を超えて議論する場を設けるのは初めてでした。各事業部から70〜80名ほどの社員が集まり、丸2日間かけてディスカッションするというタフな経験だったものの、皆が充実感に満ちた表情だったことが印象に残っています。

近藤

私は、ワークショップの運営を担当しました。 初めは何を議論しているのか掴みきれず、発言を躊躇する人も多かったのですが、巧みなファシリテーションのおかげで徐々に発言しやすい雰囲気になっていきましたね。終盤になる頃には、人や組織に関する重要なテーマをディスカッションしていても、笑顔が多かったのが印象的でした。

丹羽

統合ワークショップの終盤は、グループごとではなく参加者全員で話し合って、パーパスを最終化させていきましたね。自然な形で、全員でオープンに思いを話せたのがよかったと思います。

松井優

社員は普段、自分の業務に集中しているので、最初のうちは担当事業や商材を中心とした発言が多くなりがちでしたが、議論を通じてどんどん視野が広がっていくことを感じました。

私自身は、「社会」をテーマにしたディスカッション が難しいと感じましたね。普段の業務よりも数段高い視点が求められました。

山田萌

発散ワークショップは楽しく取り組めるワークもありましたが、統合ワークショップに入ると難しいテーマのディスカッションが増えていったと思います。頭を使う場面が多いものの、何かが生まれそうだという期待が参加者に芽生え、「議論が楽しい」というフェーズに移行したことを感じました。これは、何かを乗り越えた後にしか到達できない楽しさなのだと思います。

森田

普段の業務範囲を超えて、「全社がどうあるべきか」「これから社会をどうしていきたいか」と急に問われると、難しいものがありますよね。ワークショップの議論だけでパーパスやビジョンを決めていいのだろうかという迷いもあったと思いますが、参加者の皆様は、全社員が共感できる形にすることも見据えて話し合っていたことが印象的でした。

中村

私も、参加者の皆様にはワークショップに真摯に向き合っていただいたと感じています。アウトプットが一旦できた後もブラッシュアップし続ける風景を目の当たりにして、「より良いパーパスを作りたい」という強い思いが伝わってきました。貴社の社風が策定プロセスやパーパスそのものに表れていたと思います。

完成したパーパスに対する感想をお聞かせください。

社員が意見を出し合ったからこそ、丸善薬品産業らしいパーパスができあがった。結果として、社史の内容や会社ロゴに込められた思いとの共通点もあり、自社らしさが時代を超えて受け継がれていることを実感できた。

松井健

策定したパーパスは、「誠実×人×化学の力で日本と世界の架け橋となり、今日と明日の暮らしを『丸』(まるっ)と『善』(よ)くします」というものです。多くの社員が意見を出し合うプロセスを経て、すばらしいパーパスができあがったと思っています。

ワークショップに参加した社員は、今後の自信にもつながったのではないでしょうか。「これからも自分の考えを発信していこう」という気持ちになってくれたら嬉しいですね。

山田典

発散ワークショップで、当社らしさや強みについて徹底的に議論したプロセスがあったからこそ、このような言葉が表出したのだと思います。

松井優

当社の過去と未来がバランスよく入っているパーパスだと感じました。結果として、100周年の社史に書かれていることや、当社のロゴに込められた意味合いと共通点があり、丸善薬品産業らしいパーパスになったと思っています。当社の良さは、時代を超えて受け継がれているのだと実感しました。

近藤

私も、違和感がないというのが第一印象です。ロゴができた経緯はパーパス策定メンバーの大半はきちんと知らなかったはずですが、結果的に同じ思いに辿り着いていることに驚くとともに、納得する気持ちもありました。

吉原

社内向けのパーパスお披露目会の場でも、社員の皆様が「丸善らしい」という感想をあげていましたね。「策定メンバーが変わっても、10年前に作ったとしても、このパーパスができあがるのではないか」とおっしゃった方もいて、どの社員にとっても違和感のないものになったことを私も実感しました。

森田

こうした感想があがるのは、策定のプロセスで皆さんが真摯に議論したからではないでしょうか。異なる事業部の方々が、それぞれの観点から意見を出し尽くした結晶として完成したパーパスなのだと思います。

2045年のビジョンをイラスト化

パーパスを策定するプロセスで意識したことはありましたか?

ワークショップに参加していないメンバーも含めて全社員がパーパスに共感できるよう、プロジェクトの進捗を全社へ発信し続けた。折に触れてパーパスについて語ることで、腹落ちした役員や社員が増えつつあると感じる。

山田典

全社への浸透を見据え、ワークショップへ参加していない社員がいかにパーパスに意識を向けられるかが重要だと考えていました。

ワークショップ参加者は全社員の3割ほどなので、残り7割の社員に対してどうコミュニケーションを取っていくべきかは大切なポイントです。そこで、ワークショップの様子を動画や社内広報誌で全社共有するなど、パーパス策定プロジェクトの進捗を伝え続けていました。

松井健

パーパスに強い関心がないものの、否定的な気持ちもないニュートラルな社員に、いかに興味を持ってもらうかが鍵を握りますね。

私は経営陣や事業部長と話をするたびに、パーパスについても触れるようにしていました。飲み会の場でも欠かさず言っていたほどです。数か月にわたってこうした発言をし続けた結果、パーパスができあがった後の会議で「丸(まるっ)と善(よ)くしよう」という言葉が出てくることがあるので、パーパスに腹落ちした人が増えた感覚があります。策定している段階から進捗を伝え続けた効果ですね。

山田典

プロジェクトが進むにつれ、社長だけでなく役員からもパーパスの話題が出ることが増えましたね。経営会議や社内の新年会、入社式の挨拶など、折に触れて社員に発信してくれています。

山田萌

次期中期経営計画の2030年のありたい姿を議論している際も、パーパス策定の議論で出てきたワードが何度も出てきていました。パーパスを土台にして戦略を考える組織になりつつあることを感じています。

最後に、今後の取り組みや展望を教えてください。

今後実施する共鳴フェーズを通して社員がパーパスに腹落ちし、次の世代へ受け継がれていく組織にしていきたい。

松井健

これから共鳴フェーズに入るにあたり、まずはパーパスとリンクさせた次期中期経営計画を策定したいと考えています。

山田典

共鳴フェーズでは、社員一人ひとりが組織のパーパスと個人のパーパスのつながりを見出す施策を行うとともに、社内コミュニケーションのあり方も検討していく予定です。パーパスを体現している行動やビジネスとは具体的にどのようなものかを、社員がイメージできるようにする必要があります。象徴的な事例に対して共感してもらうことを通して、日常業務の中にパーパスが浸透していってほしいと考えています。

松井優

これまでは全社の取り組みを社内に発信する習慣がありませんでしたが、本プロジェクトはその過程を含めて、全社にオープンにしていました。これをきっかけに、さまざまな施策を社内に周知することで、社員が事業部を超えて全社を理解し、自分事にしていく文化が育まれるといいのではないかと思っています。

私自身は、対外的にフロントに立つ人事部として、当社のパーパスを最も体現している存在にならなければいけません。「このパーパスを掲げている会社で、パーパスに共感している人たちと一緒に働きたい」と思ってもらえる会社にしたいと考えています。

松井健

共鳴フェーズを通して、これからを担う若い世代がこのパーパスに共感し、さらに次の世代に語り、受け継がれていくことを目指したいです。

アイディール・リーダーズには、共鳴フェーズ以降もお力添えいただきたいと考えています。打ち合わせはもちろん、メールの文面からもコンサルタントの皆さん自身が生き生きとされていることが伝わってきて、こちらが元気付けられています。

山田萌

私も同じことを感じています。アイディール・リーダーズとプロジェクトをご一緒するようになってから、社内に発信する文面を意識するようになりました。社員同士のコミュニケーションが活性化するよう、明るく親しみやすい文章にするよう心がけています。

山田典

パーパス策定プロジェクトを通して、組織課題の相談を持ちかけられる心強いパートナーを得られたと思っています。現在は、共鳴フェーズの他に、別のプロジェクトも相談しているところです。これからも、パーパスを通して丸善らしさを永続的に体現できる組織づくりを一緒に進めていきたいと思います。

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