東急リバブル株式会社 ソリューション事業本部 部門の300名全員で存在意義を策定するプロジェクト

東急リバブル株式会社
ソリューション事業本部
部門の300名全員で存在意義を
策定するプロジェクト

東急リバブル株式会社ソリューション事業本部

東急リバブル株式会社ソリューション事業本部

https://www.livable.co.jp/solution/

東急リバブル株式会社は、東急不動産ホールディングスグループにおいて不動産仲介・販売・販売受託業 を手がける企業。その中でソリューション事業本部は2000年に設立され、法人向け不動産売却・購入サポートのほか、不動産M&Aサポートやアセットマネジメントなど、投資・事業用不動産向けサービスを広く提供している。他社に先駆けて不動産ソリューションを提供してきたプロフェッショナル集団である。

話し手
東急リバブル株式会社
取締役専務執行役員 ソリューション事業本部長 
小室 明義様
ソリューション事業本部 法人営業第一部
営業グループ(A) グループマネージャー 
馬込 浩二様
ソリューション事業本部 営業推進部 営業企画課長 
長谷川 雄一様
ソリューション事業本部 業務管理部 人材開発課長 
小山 悠様
ソリューション事業本部 業務管理部 業務管理課 係長 
青木 良様

※以下インタビュー記事内では敬称略で掲載させていただいております。
※この記事内の肩書き・役職は取材当時のものです。
聞き手
アイディール・リーダーズ株式会社

ご依頼の背景

東急リバブル ソリューション事業本部様では、高い専門性をもつ社員が大きな裁量のもとで成果を出すことで成長し続けてきましたが、組織の規模拡大とともに、社員の定着率低下など、複数の大きな課題を抱えていました。

そこで本部内でさまざまな改革に着手した後、ソリューション事業本部としての存在意義・共通のありたい姿・行動指針(パーパス・ビジョン・バリュー)を策定するプロジェクトを実施。本部の全社員が策定に関与するプロセスを踏んだことも功を奏し、組織風土調査の結果が好転したり、管理職層が現場へ施策を落とし込みやすくなったりするなどの成果が見られています。さらに今後は、階層別に共鳴・浸透策を行う計画も立てています。

今回は、本プロジェクトのオーナーである小室様、プロジェクトメンバーとして参画した青木様、小山様、馬込様、長谷川様に、取り組みの背景や内容、成果や気づきなどを伺いました。

小室様にお聞きします。ソリューション事業本部の存在意義を策定した背景にあった課題を教えていただけますか?

高い専門性のもと、個人の裁量で成長し続けてきた部門だったが、近年は社員の定着率が下がるなどの問題が起こっており、組織のあり方を見直すタイミングが訪れていた。

小室

3年ほど前、ソリューション事業本部の社員の定着率が芳しくないという課題が浮かび上がっていました。その要因のひとつに、働く意義を見出せていない社員が多かったことがあったのです。

小室

ソリューション事業本部は2000年に設立され、社員同士が競い合いながら成長してきた部門です。一人ひとりが高い専門性をもち、個人の裁量で営業成績をあげてきましたが、部門の規模が大きくなり、組織のあり方を転換するタイミングが来たのだと思います。そこで、本部内で風土や組織の改革に着手することになりました。

当時、部門としての存在意義を策定する必要性も感じていたものの、組織が混沌としている状況下で着手することは得策ではありません。まずは社員が感じている不満を一つずつ解消し、その後のフェーズで自分が何のために働いているのかを見つめ直すことで、組織のステージが一段上がるだろうと考えました。

そこで2年ほど前から、部門のさまざまな課題を検討する場として、主要メンバーによる「GM会」(グループマネージャー会)を定期的に開いています。トップダウンで私から施策を指示するのではなく、不満や不安に社員が自ら向き合い、改善策を考える場です。社員個人の願望だけでなく組織の視点も含めて課題を考え、難しさも感じながら解決策を実行してもらってきました。GM会において、私は基本的に提案を受ける立場に徹しました。

この取り組みを続けるうちに、離職する社員が減り、徐々に定着率が上がってきました。また、組織全体で、仕組みで利益をあげていこうというメッセージを私から発していたこともあり、皆で協力する風土が少しずつ醸成されていったように思います。

桜田

その後で、存在意義策定プロジェクトをスタートさせたのですね。

小室

そうですね。このタイミングで始めることに意味がありました。好転してきた組織風土を言語化し、社員が心から納得する存在意義を策定することが重要だからです。

「存在意義」というネーミングにもこだわりました。昨今はパーパスと呼ばれることが多いと思いますが、当本部の社員にとっては理解しにくいワードだと感じました。イメージしきれないままプロジェクトを進めても、社員はタスクが増えただけに感じてしまうなど、ネガティブな反応が生まれるリスクがあると考えたのです。

そして、これまでの改革と同様、本プロジェクトもGM会のメンバーにリードしてもらうことにしました。部門のさまざまな課題を解決し、次にどのような施策を行うか検討していたタイミングでもあったので、私からメンバーに「存在意義を作るのはどうだろうか」と声をかけたのです。プロジェクトメンバーも同意してくれたので、プロジェクトが始まったという経緯です。

後藤

小室専務の指示のもと、トップダウンでスタートしたわけではなかったのですね。

小室

存在意義はトップが決めて組織に落とし込んでも定着しません。社員一人ひとりがプロセスに関与し、考え抜いて、自分たちが作ったという事実が重要だと考えています。

桜田

東急リバブル様では全社の理念やビジョンも存在する中、ソリューション事業本部として独自の存在意義や共通の目指す姿、行動指針を策定されようとしたのはなぜでしょうか。

小室

本部の一体感が醸成されていない中、全社理念を浸透させても自分事になりにくいと考えたためです。自分が働いている環境に目を向け、存在意義を自ら考えることで、結果として全社理念やビジョンへの理解も深まるだろうと思っていました。

結果として、今回策定したソリューション事業本部の存在意義は全社理念と共通していると多くの社員が感じたのではないかと思います。全社の方向性、本部の方向性、そして自分が取るべき行動を体系立てて理解できたことには大きな意義がありました。

アイディール・リーダーズに存在意義策定を依頼した経緯や理由を教えてください。

負担が大きくとも、本部の全社員が存在意義策定に参画するプロセスを踏みたいという意向を汲み取ってもらった。

小室

他のプロジェクトでお付き合いがあり、当社をよく理解いただいていることもありますが、全員参加型で存在意義を策定するご提案をいただいたのが決め手でした。先ほどお伝えしたように、存在意義の文言以上に全員が関与するプロセスが大切だと考えていたためです。

小室

全社員の発言を汲み取り、プロジェクトメンバーが存在意義をまとめるプロセスは手間がかかることです。それでも、このやり方に伴走いただけるのはありがたいと思い、ご依頼しました。

後藤

我々が提案したプロセスは、おっしゃる通り時間がかかるものですし、通常業務と並行して実施するため、現場からの反発も予想されます。それでも、この方法で進めようという強い意思がおありだったのでしょうか。

小室

反発も、プロセスのひとつであると捉えていました。プロジェクトメンバーはネガティブな反応も想定して準備を進めてくれましたし、社員は不満を抱きながらもこの会社が好きですから、前向きな話を皆ですることを面白く感じてくれるだろうと予想していました。ワークショップでは、斜に構えた発言にならないようアイディール・リーダーズさんにコーディネートしていただいたこともあり、結果として前向きな議論ができました。

桜田

本部の社員300名が集まって実施したワークショップも、その後に20名ほどで実施した存在意義を統合するワークショップも、皆さんに主体的に参加していただきました。議論も盛り上がっていましたね。

小室

私としても、予想以上に議論が活発だったと感じました。皆が一堂に介して、部門全体のテーマを話し合う場を設けられたのは良かったと思っています。

策定した存在意義に対する感想と、今後の展望をお聞かせください。

策定プロセスを通して、社員一人ひとりが、自分の仕事がどのような社会貢献に繋がっているのかを考えられた。他本部から異動してきたメンバーや、 新たに入社したメンバーも多いため、今後丁寧に共鳴・浸透活動をしていきたい。

小室

プロジェクトメンバーが中心となって本部の全社員で意見を出し合った結果、「柔軟な発想とそれを叶える専門性で、情報と不動産をつなぎ、社会の豊かさに貢献する」という存在意義に決定しました。全社員が自分たちの仕事を真摯に見つめ直した成果として、すばらしい内容になったと思います。

今回のプロジェクトで発見したソリューション事業本部の「存在意義」

今回のプロジェクトで発見したソリューション事業本部の「存在意義」

小室

そのプロセスでは、日々の仕事がどのような社会貢献に繋がっているのかを考える難しさを実感しました。20名ほどで実施した統合ワークショップで、「社会の豊かさに貢献する」とは具体的にどのようなことなのか、イメージが湧かないという意見が出たのです。我々のビジネスは、日常業務だけを見れば不動産の売り手と買い手を繋いで収益をあげることですが、土地の情報を繋ぎ合わせて付加価値を提供し、活用されていない資産を動かしていく営みですから、社会に対する意義は大きなものがあります。

そして、我々は「ソリューション」という本部名の通り、不動産仲介に留まらず、専門性をもって柔軟に解決策を提案することを積み重ねてきた部門です。これまでと同様、これからもプロフェッショナルであり続け、多様な形で収益をあげていく意思も存在意義に込められました。

桜田

今後、どのように存在意義や共通のありたい姿、行動指針を共鳴・浸透させていきたいとお考えでしょうか。

小室

まずは目に触れる機会を増やすことが重要です。プロジェクトメンバーは、本部の施策一つひとつが存在意義とどのように紐づいているのかを発信してくれています。こうした小さな発信の積み重ねで、理解が進むと考えています。

また、新たに意識すべき点も出てきました。存在意義の策定以降に当本部へ異動、もしくは入社した社員が約60名もいるのです。これらの社員はワークショップを経験していませんし、業務への理解度もまだ十分ではないため、すぐに存在意義を自分事にするのは難しいと思います。今後、丁寧に共鳴・浸透プロセスを踏んでいく必要があると考えています。

続いて、プロジェクトメンバーの皆様にお伺いします。どのような点を重視して、存在意義策定プロジェクトを進めましたか?

本部の社員300名全員が、部門の未来を考えるプロセスを経験することを最優先した。また、社員が存在意義の内容を理解しやすいよう、平易な表現に落とし込むことを意識した。

青木

最も重視したのは、プロセスです。トップダウンではなくボトムアップで、全員が意見を出して策定することにこだわりました。本プロジェクトより前に始まっていたGM会も、ボトムアップで組織を改善するコンセプトを掲げていたので、それを継続した形です。

小山

存在意義や共通のありたい姿は、気取ったものではなく、誰もがわかりやすい平易な表現にしたいと考えていました。実は、過去にも同じように本部の存在意義を考える取り組みをしたものの、浸透しなかったという歴史があります。その反省点をふまえて、今回は形にこだわらず、全員が腹落ちする言葉にすることを心がけました。

桜田

馬込さんは営業部門の立場、 長谷川さんは営業部門を支援する立場でプロジェクトメンバーとして参加いただきました。本プロジェクトを振り返って、どのような感想をお持ちですか。

馬込

これまで着手してきた組織改革は、過去を振り返って課題を掲げ、解決策を実施するものでした。一方、本プロジェクトはワークショップを通して、全員で前向きに未来を考えられたことが良かったと思います。

長谷川

ワークショップでは、ソリューション事業本部に所属する約300名の社員が、年代の差を感じずに 議論できたことも有意義でした。若手社員は積極的に未来を考え、経験豊富な部長陣も自分の考えを押し付けることなく、過去の本部の歴史を説明してくれていました。加えて、やはり皆、ソリューション事業本部が好きなんだなとも感じましたね。

100名×3回のワークショップを実施し部門の全員がプロジェクトに参加した

100名×3回のワークショップを実施し部門の全員がプロジェクトに参加した

存在意義策定後、ソリューション事業本部のメンバーに変化があれば教えてください。

全社で実施したコンテストや風土調査で良い結果が見られており、社員一人ひとりが、存在意義を体現する行動がどのようなものかをイメージできつつある。

長谷川

風土改革が進んでいることが定量的に示されています。先日、各部門が全社のブランドに即して具体的にどのような行動をしているかを投稿するブランドtips(ティップス)コンテスト がありました。ソリューション事業本部は、行動指針に即して社員がどう行動をしたかを発信しようと呼びかけたところ、全社で投稿数が最も多い結果が得られたのです。さらには、優秀賞や特別賞を受賞した社員もいました。

長谷川

行動指針をもとにした行動が起きており、それを会社に評価してもらったことを嬉しく思いますし、多くの社員が、具体的にどのように理念を体現すべきかをイメージできつつあると感じます。

また、全社で実施した組織風土調査においても、ソリューション事業本部では会社への共感度に改善が見られました。存在意義への理解が進んでいる表れだと捉えています。

馬込

管理職の立場としては、本部の施策を現場に落とし込みやすくなったと実感しています。部門からも、各施策と存在意義の関連性を発信していますので、現場のメンバーとしては納得感をもって施策を実行できるようになったと思います。

小山

人事評価については、存在意義や行動指針に紐づいた評価体系に変えようとしているところです。ソリューション事業本部は営業部門 なので、基本的には営業成績で評価するものの、そのプロセスや新たなチャレンジも評価する仕組み作りに着手しています。評価基準を明確にすることで、社員にとってはどのような努力をすれば評価されるのかがわかりやすくなると考えています。

今後、存在意義を共鳴・浸透させていくにあたり、どのような取り組みを行いきたいとお考えでしょうか。

共鳴・浸透策を実行するメンバーを増やし、階層別に目標を定めて小規模ワークショップなどの共鳴を実施していきたい。

青木

大きく2つの取り組みを考えています。ひとつは、存在意義を共鳴・浸透させる人材を増やすことです。現在のソリューション事業本部は450名ほどの社員がいるので、この4名のメンバーだけでは全員に共鳴を促すことは現実的に難しいものがあります。共鳴の輪を広げるにあたり、本プロジェクトの統合ワークショップに参加したメンバーや、若手層からもリーダー人材を選び、協力を仰ぎたいと考えています。

もうひとつは、階層別に共鳴・浸透策を実施することです。存在意義の共鳴といっても、マネージャー層は存在意義を体現する行動が期待される一方、若手社員はまず存在意義の理解が求められるなど、階層ごとに期待値が異なります。各階層の目標を定めたうえで、マネージャー層には存在意義を体現している事例を共有したり、階層ごとに共鳴・浸透させるためのワークショップを開いたりしたいと考えているところです。

小山

ワークショップは存在意義策定のように大規模なものではなく、30名ほどの小規模な形態で毎月実施し、新たに入ってもらう事務局メンバーに進行してもらう想定です。新たな事務局メンバーも運営に携わることで関心が高まるでしょうし、本部内でいつもワークショップが開かれていて身近な誰かが参加している状態をつくることで、日常業務に落とし込んでいきたいと考えています。

今年に入ってから異動もしくは入社し、存在意義策定のワークショップを経験していない社員も多くいるので、さまざまな施策を通して粘り強く共鳴・浸透活動を続けたいと思います。

アイディール・リーダーズの存在意義策定にはどのような特徴があると思いますか。

存在意義策定のプロセスを示したうえで、ソリューション事業本部に最適な提案をいただいた。ワークショップもお互いに相談しながら設計を進め、我々の希望を実現してくれた。

青木

我々がやりたいことを、最大限実現してくださいました。実は他社にもお声がけしたものの、ボトムアップで300名の意見を吸い上げて存在意義を策定したいという思いに賛同いただいたのは、アイディール・リーダーズだけだったのです。

ワークショップの進め方も決まりきったものではなく、一緒に相談しながら設計していただき、真の意味で伴走してもらったことに感謝しています。

小山

私としては、頭の整理をさせていただいたと感じています。存在意義を策定するにも何から着手すればいいのかが見えていなかったところ、考え方のフレームを示したうえで、ソリューション事業本部にとって最適な提案をいただきました。

馬込

我々のように、メンバーの入れ替わりが一定数ある組織にとっては、存在意義を策定し、組織の価値観を明文化しておくことは意味があることだと考えます。メンバーが変わっても存在意義は残りますから、成果を出し続ける組織になれると思うのです。

小山

今回のように全員参加型で存在意義を策定することは、従業員満足度が低いなど、ソフト面での課題を抱える組織で行うと有用だと思います。策定するプロセスでは、不平不満よりもポジティブな話題が多くなりますから、自社の良い点を見つけるきっかけになるのではないでしょうか。

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