前田)
きっかけは、「D to C(Direct to Consumer)に挑戦したい」という私の想いでした。社内メンバーに相談したところ、賛同する声が多かったので、実際にやってみることにしました。EC市場が拡大しネット通販が当たり前になった影響も大きかったです。弊社は店舗や大手製薬メーカーなどに対するB to Bが基本だったのですが、この世界では、マーケティングの優先度が高くなるので、配合成分やその量に開発者側の本意ではない調整が入ることもよくあります。本当につくりたいものがつくれないというジレンマを抱えていた中で、D to Cは私や開発者にとって希望の光だと感じました。
後藤)
D to Cへの挑戦は、新たに策定した5つのビジョンに当てはめると、「生活者」「事業」に関わってくるでしょうか。
前田)
そうですね。【日本のセルフメディケーションを前進させる。】【医薬品にこだわらない幅広い商品をつくる。】を象徴する商品だと思います。ただ、D to Cの構想自体はビジョン2030が完成する前からあったので、ビジョンありきというわけではありません。むしろ、「予防」と「薬や生活習慣に関する知識の啓蒙」という目的を持ったD to Cが形になるとある程度わかっていたからこそ、具体的なイメージを持ってミッションを決めることができたのだと思っています。
後藤)
前田社長が温めてきた想いと今回策定したビジョンが、相乗効果を発揮しているということですね。ちなみに、D to Cに関心を持たれたのはどのタイミングだったのですか?
前田)
社長就任の前後で参加した勉強会です。海外ではこの業界で、D to Cが主流になりつつあるというのを耳にしまして。そこから少しずつ、工場や技術者を抱える我々こそが、お客様に直接製品をお届けすることに挑戦すべきだという想いが強くなっていきました。
前田)
まずは、【日本のセルフメディケーションを前進させる。】という生活者に向けたビジョンにそのまま接続されると思います。ブランド名からもわかるように、この商品は「治せるものはおうちで。」というコンセプトで開発しました。セルフケア、セルフメディケーションで健康な毎日を過ごすことを目的としています。この業界全体が課題意識として持っている公的医療への依存から脱却することを後押ししながら、「ドラッグストアでは本当に自分の症状に合ったモノを選びにくい」という悩みも独自のECサイトを持つことで解決したいと思っています。私たちがきっかけとなり、医薬品業界全体でD to Cの販売方法が当たり前となって、生活者にとってより良い市場が整うといいなと思います。