昨今のビジネスシーンでは「エンゲージメント」という言葉が広く用いられています。エンゲージメントの意味は広義に渡るため、意味が混在してしまいよくわからないという方も多いでしょう。本記事では、ビジネスシーンにおけるエンゲージメントの概要に加え、導入のメリットや効果的な実施方法まで解説します。
エンゲージメントの基礎情報
エンゲージメントについて理解するために、まずは基礎的な概要と種類を理解する必要があります。ここでは、エンゲージメントの基礎知識について解説します。
エンゲージメントの概要・定義
エンゲージメントとは、両者の間に確固たる信頼関係が構築されていることを指します。踏み込んだ考え方として、「個人と組織が一体となり、双方の成長に貢献し合う関係」という意味でも用いられます。
エンゲージメントの考え方が必要になる背景
・若年層の職業観の変化
・終身雇用制度の崩壊
・少子化に伴う人手不足
企業は長期的観点から、人事制度や人材育成を考える必要性に迫られています。そのような背景もあり、エンゲージメントの考え方は広く重要視されるようになりました。
エンゲージメントの種類
エンゲージメントの考え方は、大きく分けて下記の2種類です。
エンゲージメントの種類
・従業員エンゲージメント
・顧客エンゲージメント
ここでは、各エンゲージメントの考え方について解説します。
従業員エンゲージメント
従業員エンゲージメントとは、企業と従業員との間での確固たる信頼関係を意味する言葉として用いられます。従業員エンゲージメントを向上させる主な要素としては以下の3点です。
従業員エンゲージメントを向上させる要素
・働きやすさ
・やりがい
・指針への共感
従業員エンゲージメントを向上させることは、長期的に企業へ貢献する従業員を創出し、早期離職の防止にもつながります。
顧客エンゲージメント
顧客エンゲージメントとは、企業とその顧客との親密度を指す言葉です。顧客エンゲージメントが向上することで、企業の売上に直結するとされています。
また、顧客エンゲージメントを意識することで、企業に対する改善要望などの率直な意見も顧客から直接得られます。顧客エンゲージメントは、さまざまな側面において企業の成長をもたらしてくれる要素となり得ます。
満足度との違い
従業員エンゲージメントとは、「企業の理念や目指すビジョンに理解や共感を示し、自発的に貢献する意思」を意味します。それに対し、従業員満足度とは「給与や福利厚生などの待遇面、業務内容や職場の人間関係など、この企業の従業員であることにどれだけ満足しているか」を指します。
似た言葉として「顧客満足度」がありますが、顧客満足度は「期待水準(顧客がサービスに期待している水準)」と「知覚水準(顧客のサービス利用時に得られた水準)」のバランスで決まります。似た言葉ではありますが目的としている指標が違うため、その意味は大きく異なります。
エンゲージメントの必要性
日本のエンゲージメントスコアは調査対象139か国中132位、『意欲的な従業員』の割合も世界平均が15%なのに対し、日本はわずか6%しかありません。終身雇用制、年功賃金制など日本に根強い雇用形態がもたらす「平等という不平等」がエンゲージメント低下につながっていると考えられます。
現代社会において、従業員が企業に求めるものは日々変化しています。そのため、今いる人材の離職率を下げないようにするために「定着率」を上げることが肝要とされています。
※参考:アイディール・リーダーズ「米国ギャラップ社「熱意あふれる社員」の割合調査」
エンゲージメントを向上させるメリット
エンゲージメントを向上させることは、企業にとってさまざまなメリットをもたらします。ここでは、エンゲージメントを向上させることで得られる3つのメリットを紹介します。
業績の向上
エンゲージメントを向上させると、企業の業績の向上につながります。
エンゲージメントが向上した従業員は、仕事への積極性が高まります。主体的に自己研鑽に励んでいくことは顧客満足度の向上につながるため、成果が出たことで、従業員のモチベーションもアップするという良好なサイクルが生まれます。
「従業員満足度」「顧客満足度」「業績の向上」「企業の利益」は、それぞれに深く関わりがあるため、まずは従業員のエンゲージメントを上げることに注力すると良いでしょう。
離職率の低下
エンゲージメントを向上させることで、離職率の低下につながります。
終身雇用制度が崩壊してからは、個人がより良い勤務条件で転職をするようになりました。そのため、企業の採用環境はますます厳しくなっています。
人材の流動化やワークモチベーションの多様化は、多くの企業が抱えている課題です。その中で従業員に働き続けてもらうためには、金銭面だけでない企業と従業員の関係性の構築が重要な要素になるでしょう。
人材確保
エンゲージメントを向上させることで、人材の確保につながります。
従業員エンゲージメントが向上することで、従業員の企業に対する愛着や忠誠心が生じます。その結果、従業員の中で企業に対する「愛着」や、信頼関係を維持できていると知人や身内に対して「自分の職場を紹介したい」と考えるようにもなります。
従業員エンゲージメントの向上は、リファラル採用の強化による人材確保にも強い効果をもたらします。
エンゲージメントの測定方法
エンゲージメントを高めるためには、従業員の現在のエンゲージメントスコアを調査することが必要です。ここでは、エンゲージメントの測定方法を紹介します。
アンケート調査
エンゲージメント調査に最も多く用いられる方法はアンケート調査です。アンケートは実施に際してのハードルが低いこともあり、月1回から半年に1回程度の頻度で行われるケースが多いです。
少ないもので2問、多くても15問程度の質問に月1回程度から半年に1回といった頻度で回答すると良いでしょう。エンゲージメントのアンケート調査には、下記のような従業員エンゲージメントを測定するための3要素を盛り込む必要があります。
総合指標
総合指標は、今の企業を総合的に見てどのように感じているのか、どのように評価しているのかを理解するための設問です。設問内容としては、主に下記のような内容が考えられます。
総合指標の設問内容
・eNPS:友人や知人に対して自分が勤めている企業を勧める可能性があるか
・総合満足度:どのくらい満足しているのか
・継続意向:どれくらい長く付き合いたいと感じているのか
レベル指標
レベル指標は、どの程度の熱意を持っているのかを知るための設問です。設問内容としては、主に下記のような内容が考えられます。
レベル指標の設問内容
・熱意:仕事に対してやりがいを感じる
・没頭:熱心に仕事に取り組むことができる
・活力:仕事を楽しみ生き生きと働くことができる
・上位はUWES(ユトレヒト・ワーク・エンゲージメント尺度)という調査項目
・5段階程度で従業員に評価、回答してもらい、指標を測る
ドライバー指標
ドライバー指標とは最終的に従業員エンゲージメントを向上させる要因となるものを調査する設問です。設問内容としては、主に下記のような内容が考えられます。
ドライバー指標の設問内容
・組織ドライバー:人間関係や職場環境が影響する
・職務ドライバー:携わる職務のルーティン度や難易度などを測定
・個人ドライバー:個人的な資質がどのように影響を与えるか
アンケートの設問例
一般的にエンゲージメント調査で用いられているアンケート設問としては、主に以下のものが代表的な設問としてあげられます。
アンケートの設問例
・職場で自分が何を期待されているのかを知っている
・仕事をうまく行うために必要な材料や道具を与えられている
・職場で最も得意なことをする機会を毎日与えられている
・この7日間のうちに、良い仕事をしたと認められたり、褒められたりした
これに加え、アイディール・リーダーズが提供する「カサナリ」というアセスメントサービスでは以下の設問が用いられています。
「カサナリ」で提供している設問例
・あなたは自社で働くことを通じてどの程度幸せと感じていますか?
・あなたは、大切にしたい自分自身の価値観がどのくらい明確ですか?
・あなたは自社の経営理念を自分ごととして受け止めていますか?
・あなたは日々の仕事を通じて、自社のパーパスの実現につながる行動をとっていますか?
エンゲージメントを高める方法
現状のエンゲージメントスコアを調査した後は、実際にエンゲージメントを高める施策を行っていきましょう。ここでは、エンゲージメントを高める方法を紹介します。
ビジョンの発信
ジョンやミッションを従業員と共有することで、同じ目標に向かい一体感を持って仕事ができます。情報や考え方がオープンにされていなければ、不信感を持ちやすくなり、企業と従業員間の信頼関係であるエンゲージメントは低くなるでしょう。
社長や幹部がどのような考え方や経営理念を持っているのか、あるいはどのような視座で業務に当たっているかなどを従業員に伝え続ける必要があるでしょう。
※参考:パーパス・ドリブンな組織のつくり方 発見・共鳴・実装で会社を変える
環境づくり
分の成長を感じられず、キャリアの見通しがつかないような企業に対して愛着心を持つことは困難です。個々人が理想のキャリアを築けるよう、将来の仕事のステップアップについて明らかにしたり、スキルアップを促すような制度を作ることはエンゲージメントを向上させるためにも大切です。
「今の企業にいれば理想のキャリアを築ける」という信頼を持てれば、企業に対するエンゲージメントは自然と向上するでしょう。
コミュニケーションの活発化
司と部下の関係が悪いままでは、企業に貢献したいという気持ちを持つことはできません。そのため、円滑にコミュニケーションが取れていない企業では、労働環境にも悪影響を与えるためエンゲージメントは低下してしまいます。
積極的に声をかけたり、1on1ミーティングを行うなどしてオープンなコミュニケーションができる職場環境に整えると良いでしょう。
まとめ
エンゲージメントを高めることは、離職の防止やモチベーション向上だけでなく顧客満足度向上にもつながります。人材確保や人材育成の観点から見ても、エンゲージメント向上は企業に好影響をもたらすでしょう。
もしもエンゲージメント向上施策の検討にお困りの場合は、アイディール・リーダーズのパーパス・マネジメント・コンサルティングサービスをご検討ください。
パーパス・マネジメント・コンサルティングサービスは、人・組織・社会に対して具体的な変化をもたらすために、「発見・共鳴・実装」という3つのプロセスでプログラムを設計しています。
クライアント企業の真の存在意義の明確化と、その実現をサポートするコンサルティングサービスを提供しているため、エンゲージメントマネジメント施策にお悩みの場合はぜひご相談ください。
アイディール・リーダーズのパーパス・マネジメント・コンサルティング