ビジョン策定においてなぜ未来洞察が重要なのか? 〜シナリオプランニングの活用と実践〜

ビジョン策定においてなぜ未来洞察が重要なのか?
〜シナリオプランニングの活用と実践〜

 アイディール・リーダーズでは、ビジョンを策定することのみならず、ビジョンが多くの人の共感を生み出し、実現されていくことが重要だと考えています。そのためのアプローチとして、多くの関係者と共にビジョンをつくりだすという策定プロセスを提唱しています。しかし、このアプローチには難しさも存在します。例えば、策定に関わる関係者が日常業務という短期視点ではなく長期視点に立ち、部署に縛られず全社や社会などを視野に入れて検討を進める点です。

 その際に有効な手法が、シナリオプランニングと言われる未来洞察手法です。シナリオプランニングでは、幅広い外部環境情報に触れながら変化の構造を理解し、複数の起こりうる未来を構築していきます。

 以前、弊社のブログでシナリオプランニングの定義と一例を紹介しました。

 

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今回のブログでは、シナリオプランニングをビジョン策定に用いる利点や実施イメージ、アウトプットの活用方法などを紹介します。

多くの関係者が集いビジョン策定を進める難しさとは何か?

 実現するビジョン策定のための一つのアプローチは、多くの関係者をビジョン策定プロセスに巻き込むことです。例えば、経営陣、次世代リーダーやミドルマネジメントの方、場合によっては若手メンバーや全社員が集いビジョン策定を進める場合もあります。このアプローチの利点は、ビジョンが出来上がった段階で、ビジョンを深く理解し、また共感を持って全社に広めてくれるキーパーソンが存在している状態をつくれる点です。

 一方で、上記のアプローチには難しさも存在します。例えば、相対的に短期視点で、日々の業務や自部署のことにフォーカスして仕事を行っている方々が、全社視点に立ち10年先、20年先のことを考える難しさです。また、社内において各自が持っている情報の非対称性や、関心事項も異なり、ビジョンを描く前提としての共通認識が築けていないという難しさもあります。

ビジョン策定プロセスにシナリオプランニングを導入する利点とは?

 シナリオプランニングをビジョン策定に活用することで、総じてアウトプットするビジョンの質が高まり、関係者がより納得感を持ってビジョンに合意し、「なぜそのビジョンとしたのか?」の理由を語れる状態をつくることができます。

 シナリオプランニング活用の具体的利点の一点目は、未来に関するインプットをしっかりと行い、起こりうる未来への感度を高めた状態で自社や顧客、社会の理想の姿を探求することができる点です。ビジョン策定は、意識・無意識的にも特定の未来を前提において進められます。未来の前提とは例えば、技術の進歩や普及、人々の価値観の変化、環境に対する規制やルール、都市と地方の関係性など自社や自業界を取り巻く外部環境の状況です。一方で、VUCAワールドでは、未来は不確実性に満ちています。ビジョン策定者には、現時点で未来に対してどのような前提を持っているのかに自覚的になりながら、現状とは大きく異なる未来の可能性を複数想定し、そうした未来世界で、自社や顧客、社会がどうなって欲しいのかを検討していくことが求められます。

 利点の二点目は、ビジョン策定者の視座を上げ、共通認識を築ける点です。シナリオプランニングを通じて、未来に関する多量のインプットを行い、未来の外部環境を考えていくことで、ビジョン策定に関わる方々の視座が上がり、未来に関する共通認識が形成されます。結果として長期・全社視点で、共通の前提を持ってビジョン策定に臨むことが可能となります。

 三点目は、シナリオプランニングを通じて、時として関係者が共に望む未来の姿が浮かび上がってくる点です。起こりうる複数の未来を描く中で、自社として好ましい特定の未来が明らかになり、その未来をビジョンに据えながら積極的に実現していくことを意思決定することが考えられます。

シナリオプランニングを活用したビジョン策定の実施イメージは?

 一般的には、ビジョン策定メンバーが集い、1日〜2日程度をかけて、シナリオプランニングのワークショップを実施。未来洞察を行った後に、前回のブログで紹介したようなビジョン・ワークショップ*を行います。

 具体的なステップとしては、テーマ設定から始まります。例えば「2030年の人々の健康に関する姿」や、「2030年の地方での働き方の姿」といったイメージです。テーマ決定後、幅広いテーマで未来に関する多量のインプットを事前準備として実施いただきます。そのインプットをもとにワークショップ内で議論を行い、テーマに大きな影響を及ぼす事柄の特定や未来を大きく分かつ2軸の設定、起こりうる複数の未来の詳細化などを実施します。

シナリオのアウトプットをいかにビジョン策定に活かすのか?

 シナリオプランニングを通じて完成したシナリオ(=起こりうる未来のストーリー)を活用し、どのようにビジョンづくりにつなげることができるのでしょうか。

 シナリオの活用方法は複数存在します。一つ目は、複数のシナリオがどれも等しく起こりうると考え、ビジョンを考える方法です。シナリオプランニングでは、典型的に4つの異なるシナリオが生まれます。その4つのシナリオがどれも等しく起こり得るとしたら、各シナリオで描いた未来の中で顧客や社会はどんな状況に置かれ、何をペインやニーズとして持つのか、そして自分たちは顧客、社会に対して何を望み、何を提供していきたいのかを考えていきます。また、「どんな未来になったとしても自社が変わらずに望む未来とは何か?」といった問いを考えることも有効です。上記を通じて、ビジョンに据えたいと考える具体的な事柄が浮かび上がってくる可能性があります。

 二つ目は、複数のシナリオのうち、特定のシナリオをビジョンの核として採用する方法です。基本的にシナリオプランニングで扱うのは外部環境であり、特定のシナリオを自社が実現させることは難しいというスタンスに立ちます。一方で、多様なステークホルダーと連携し、自社が積極的にリーダーシップを発揮することで、望ましい未来へと現実を近づけることができると考えることもできます。後者のスタンスに立てば、シナリオプランニングを行いながら、自社が実現を望む特定のシナリオが見えてきた際には、それをビジョンの中心に置くことも可能です。例えば、生活者が都市に過度に集まるよりも地方に適度に分散しながら、多様な価値観が満たされていくような社会を自社のビジョンとして採用したいと策定メンバーで合意することがあり得ます。

担当者の一言

 シナリオプランニングは、単一の確からしい未来を前提に置くのではなく、起こりうる複数の未来を洞察していく点において、VUCAワールドに適した未来洞察手法と言えます。不確実性を前に思考停止に陥るのではなく、今のビジネス環境の“当たり前”に意識的になり、継続的に思考をアップデートすることを志向します。私たちは、往々にして不確実な未来を歓迎しませんが、一方でそうした未来をしっかりと見据えることで、自社にとっての機会や脅威を見出し、適切な対応をとることが可能になります。

 また、本ブログで紹介したように、シナリオプランニングはビジョン策定の前工程としても効果的です。多くの企業が望ましい未来としてのビジョンを描き、そのビジョンを創り出す。シナリオプランニングの活用が、より効果的なビジョン策定と実現を支援する一つとなれば幸いです。