リゾートトラスト株式会社 創立50周年の節目における中期経営計画に向けて新たな未来像を描く、ビジョン・ロードマップ策定プロジェクト

創立50周年の節目における中期経営計画に向けて
新たな未来像を描く、
ビジョン・ロードマップ策定プロジェクト

リゾートトラストグループ

リゾートトラストグループ

https://www.resorttrust.co.jp/

エクシブ、ベイコート倶楽部、サンクチュアリコートなどの会員権事業を軸に、ホテル、ゴルフ、メディカル、シニアライフなど、「余暇と健康」にまたがる領域へと事業をひろげる総合企業グループ。2023年4月には創立50周年を迎え、長年にわたって顧客からの大きな信頼を得ている。「ご一緒します、いい人生 〜より豊かで、しあわせな時間(とき)を創造します〜 」というブランドアイデンティティを掲げ、お客様の一生涯を通じてお付き合いいただける企業グループを目指す。

話し手
リゾートトラスト株式会社 経営企画部 事業戦略課 主事 中野田様
リゾートトラスト株式会社 ザ・カハラ・ホテル&リゾート 横浜 総支配人 阿部泰年様
リゾートトラスト株式会社 会員制本部 営業企画室 運用推進課 課長 髙木淳寛様
株式会社アドバンスト・メディカル・ケア 運営事業部 法人営業部 部長代行 兼 経営管理部門 DX室 室長 矢田亜希子様
聞き手
アイディール・リーダーズ株式会社

ご依頼の背景

リゾートトラスト株式会社は2023年に創立50周年を迎え、時期を同じくして策定する中期経営計画は、これまでとは異なる新しいプロセスで内容を検討したいと考えていました。同社の主力事業である会員制リゾート事業をはじめ、各事業がさまざまな環境の変化を踏まえて、今後の方向性を検討する必要に迫られていたためです。また、コロナ禍でも事業を守り抜いてきた社員へ、グループの未来に対して希望をもってもらいたいとの思いもありました。

そこで、各本部から中核社員を選抜し、リゾートトラストグループのビジョン、および実現に向けたロードマップを策定するプロジェクトを4か月間にわたり実施。その後、ワークショップ参加者による自主的なプロジェクトが進行しています。

今回は、本ワークショップを企画した中野様、参加者の阿部様、髙木様、矢田様に、取り組みの背景や内容、成果や気づきなどを伺いました。

ビジョン・ロードマップ策定プロジェクトを実施することになった背景を教えていただけますか?

創立50周年での中期経営計画は未来を見据えたバックキャスティングで策定し、社員に自社に対する希望をもってもらうことを目指した。

中野

2023年、当社は創立50周年になったと同時に、新たな中期経営計画を策定するタイミングを迎えていました。この節目の年に策定する中期経営計画は、今までとは異なるプロセスで検討しようという話になったのです。そして、創立60周年を迎えるまでに、この50年間で築いてきた価値を守りつつ、課題については解決している状態を目指そうと考えました。

もうひとつの背景は、コロナ禍に入社した社員のケアです。当社の各事業は新型コロナウイルス感染症流行の影響を大きく受け、この数年は厳しい経営の舵取りが続きました。まだ先行き不透明であるものの、大変な時期を乗り越えてきた社員に、リゾートトラストに入社してよかったと思ってもらうための取り組みが必要だと感じていました。

また、「ご一緒します、いい人生」というブランドアイデンティティは以前からあったものの、それをどう体現すべきかについては深掘りできていなかったため、本部を超えた社員が集まり、グループのビジョンとロードマップを考えるワークショップを行うことにしたのです。

丹羽

中期経営計画の策定プロセスを、具体的にどう変えようと考えていらっしゃったのでしょうか。

中野

これまでは、グループの現状を踏まえて、その延長線上で経営計画を考えることが多かったように思います。今回はその逆で、10年後を見据えてありたい姿を考え、バックキャスティングでその実現方法を描くことにしました。

中期経営計画の内容そのものだけでなく、策定のプロセスも変えることで、「グループはこれから変わっていきそうだ」という期待や希望を社員に感じてほしいと思っていました。

どのような点を重視して、ビジョン・ロードマップ策定プロジェクトを行いましたか?

全事業から意見を吸い上げるため、参加者の部門に偏りが出ないよう調整を重ねた。

丹羽

今回のビジョン・ロードマップ策定プロジェクトでは、参加者の皆さんとシナリオプランニングのセッションを行った後、ビジョンを考えるワークショップを行いました。その後に、事業ごとに実現に向けたロードマップを策定しましたね。

本プロジェクトのパートナーとして当社を選んでいただいた理由をお聞かせいただけますでしょうか。

中野

アイディール・リーダーズにお声がけしたのは、社員の幸福度やウェルビーイングも含めて企業のパーパスを考える重要性を謳っていたからです。丹羽さんが登壇されたセミナーでその考えに触れ、我々が今回のプロジェクトで目指したいことと共通していたため、ご相談しました。

丹羽

ありがとうございます。ワークショップを企画した中野さんとしては、どのような点にこだわりをもっていましたか。

中野

こだわったのは、ワークショップの参加者選定です。全本部からしっかり意見を吸い上げるために、参加者の所属部門に偏りが出ないように配慮しました。本部長からメンバーを推薦してもらった後、我々経営企画部からリクエストを出して再検討していただくなど、各本部と綿密に調整しました。

丹羽

全社ビジョンを考える際は、さまざまな部門や職種の社員を取り入れたほうが、その後の浸透度合いが変わってきますね。一部の経営層だけで決めたビジョンに比べ、理解や共感が進みやすいと思います。

参加者の皆さんから、プロジェクトに参加してのご感想をお聞かせください。

普段は交流をもちにくい他事業本部のメンバーと深い議論を重ね、視野が広がった。

阿部

まず、率直に「楽しかった」という感想です。現場で働くグループ社員は、本部を越えて交流することがほとんどありませんから、他部門の方々と意見交換ができたことが有意義でした。

高木

私も同感です。気兼ねなく意見を出し合えるワークショップの雰囲気をつくってくれたことにも感謝しています。

そして、プロジェクトが進むにつれ、自分の本部に何を持ち帰って伝えるべきかを考えるようにもなっていきましたね。他部門の意見で参考になりそうなことは、積極的に自部門に取り入れようと思いながら参加していました。また、私は過去の中期経営計画策定にも携わった経験があったので、過去の取り組みで踏襲すべき点と、今回のワークショップで行ったこととを頭の中で紐づけて、今後どのように活動していくべきかも考えていました。

矢田

私はリゾートトラストグループの中では歴史が浅い、メディカル事業を担当しています。今回のプロジェクトを通して他本部の理解を深め、グループが培ってきた文化や歴史を知ることもできました。

そして、未来を真剣に考える熱いマインドをもった素敵な仲間が多くいるのだなと感じ、私ももっとがんばろうという気持ちになりました。そして現場のメンバーにもこの温度感を伝えて、若いリーダーを育成していきたいと思いましたね。

本プロジェクトではどのようなビジョンとロードマップを策定しましたか?また、どう中期経営計画に反映したかもお聞かせください。

本プロジェクトのアウトプットが中期経営計画に多く盛り込まれた。新たな組織文化を目指す概念である「Smile Spiral⤴」の内容も掲載されている。

中野

まず全社としては「ご一緒します、いい人生」というブランドアイデンティティは踏襲し、お客様との信頼の輪をより強く、大きくしていくために事業間の連携を強化することなどを議論しました。

矢田

メディカル事業では、「ライフトラストカンパニー」になるというキーワードを掲げました。人生100年時代の健康長寿を支える価値を、我々が提供していきたいという思いを込めています。もう一点は、「パーソナルウェルビーイングへの貢献」です。お客様一人ひとりのスタイルに合った健康長寿に貢献していきたいというものです。

我々としては、一般の検診事業者ではなく、リゾートトラストグループだからこそ提供できる価値にこだわりたいと考えています。ホテル事業など、他部門と一緒に価値をつくっていくことも、まだまだできそうです。今後の展開に、私自身がワクワクしています。

阿部

ホテル&ゴルフ本部では、人が人の喜びを作っていくという意味を込めたブランド人材像として、「Your pleasure is our pleasure.(お客様の喜びは、私たちの歓びです)」という言葉を掲げました。

中野

今回の中期経営計画から、本社部門も目指す姿を掲載することになりました。本社は、ルーティンからクリエイティブの割合を増やすことを目指します。

そして新たに策定した中期経営計画には、行動規範や5か年の重点取り組み事項など、ワークショップで検討した内容がふんだんに盛り込まれています。

高木

具体的な未来を描くことは、当社にとって新たな取り組みだったと感じます。私が担当している会員制本部では、これまで中期的な目標を掲げることが多くありましたが、今回の中期経営計画は、遠い先を見据えて未来像を描きましたね。

矢田

社員の声をここまで取り入れた中期経営計画は、これまでにはなかったと聞いております。今回、自分たちの意見が反映されている経営計画を見ると、私も嬉しく感じます。

溝渕

皆さんとプロジェクトをご一緒して、人や組織、働き方に関わる論点が多く出たことが印象的でした。ウェルビーイングや社員のキャリアについての議論もありましたね。そして、阿部さんからは組織文化についてご提言いただきました。

阿部

そうですね。「逆ピラミッド型」の組織を作っていこうという考えで、「Smile Spiral⤴ 〜全ては社員の笑顔から〜」と名づけました。この構想は、中期経営計画にも反映されています。

阿部

一般的な組織図は、経営層が上位にあり、その下に現場のメンバーが配置されて描かれます。ですが、我々のビジネスにおいて、お客様のもっとも近くにいるのは現場の社員です。

その社員が、社内にいる上司を気遣って仕事をしているようでは、良いサービスは提供できないでしょう。しかしながら、十分に権限委譲され、自ら動けるようになれば、EX(Employee Experience:社員体験)が高まり、お客様により良いサービスを提供するようになります。

こうした想いから、組織のピラミッド構造を上下逆にして、お客様に近い社員を上位に示し、マネジメントは社員を支える立場であることを示そうと考えました。このように、お客様を中心にすべての物事を考えることは、ホスピタリティ産業では特に重要だと私は考えています。

良いサービスを提供してもらったお客様は笑顔になり、その対価として料金をお支払いいただくでしょう。そうすれば、我々もまた笑顔になります。こうした感動のスパイラル(連鎖)を生み出す組織風土をつくろうとの思いを込めて、「Smile Spiral⤴」という名前にしました。

世の中のDX(デジタルトランスフォーメーション)が進んだとしても、リゾートトラストグループが展開している各事業は、人こそが価値を生み出すと考えています。テクノロジーの導入が進んでいるからこそ、今後生き残る会社とそうでない会社の分岐点は、「人」だと思うのです。

ワークショップ終了後の活動について教えてください。

参加者による「RTGみらいプロジェクト」が現在も進行中。具体的な活動内容を検討しており、すでに着手している活動もいくつか出てきている。

中野

プロジェクトの終盤、参加者から自発的に「今後もこの活動を続けよう」という話が挙がり、「RTGみらいプロジェクト」と名づけて継続しています。現段階では、今後の活動内容をプランニングしているところです。

高木

どのようなサービスを提供するのがリゾートトラストグループの「あるべき姿」なのかを深掘りして考え、それを事業化する場合の姿も議論しています。

中野

こうした自主的な活動につながっているのは、アイディール・リーダーズのおかげだと思っています。あらかじめ決めていたワークショップのスケジュールに固執することなく、参加者の意見を重視して進行していただきました。逆に、予定通りに進行していたら「RTGみらいプロジェクト」は発足していなかったように思います。

そして、すでに行われているビジョン浸透活動もいくつかあります。「Smile Spiral⤴」の内容をホームページに掲載しているほか、社内向けの創立50周年特設サイトも作成しました。社員にイメージをもってもらうためのムービーやイラストを作成したり、「ご一緒します、いい人生マップ」と題したものを作って各部門が目指す姿を考えやすくしたりする工夫を重ねています。

新入社員と各本部の管理職層約1,000人が集まった場でも、「Smile Spiral⤴」の考え方について、阿部さんから発表してもらったんです。多くの社員にとって、強く印象に残るプレゼンテーションをしてもらいました。

溝渕

こうやって会社の変革は進むのだなと、プロジェクト終了後の皆さんの活動からひしひしと感じます。

丹羽

我々とご一緒したプロジェクトを終えた後も、社内で活動が続いていることは本当に嬉しく思います。私も、会社はこういうところから変わっていくのだと実感しました。

阿部

50年にわたって築かれた強い文化があるグループなので、変革するにも相応のエネルギーが要ると思いますが、どんなに大きな変革も誰かが第一歩を踏み出せば進むんですよね。「RTGみらいプロジェクト」には、その変革ができるメンバーが集まっていると思いますし、多くの社員が集まる場で発表の時間をもらえたことで、浸透が軌道に乗ると感じています。

中野

今後は、各拠点のブランドアンバサダーの方々と協力体制を築くことも考えています。ブランドアンバサダーは、施設ごとにグループアイデンティティを体現し、浸透する役割を担っています。プロジェクトメンバーとブランドアンバサダーの役割分担を明確にして、各現場でのビジョン浸透活動を進めたいですね。

このように、プロジェクトメンバーのみならず、徐々に幅広い社員や役員の力も借りながら、ビジョン浸透、そして目指す姿に向けたロードマップを着実に進んでいけるようにしていきたいと思います。

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